113話 魔法が使いたい。
俺が竜の谷で何をしているかというと、修行だ。
……何故こうなった?
「竜の谷にいると、異世界に来たって気持ちがするね」
ちょっと前まで元の世界に戻れないと、泣きわめいていた人のセリフだとはとても思えない発言だ。
「見て見て、一条君。
あれも魔法だよね」
竜族のメイドラゴンさんが、キッチンで魔法で着火している。
魔法が使いたい。
俺達五人が共通して思っていた事。
「異世界に来たのに魔法が使えないなんて」
「本当に……」
俺の祝福【ネットショッピング】普通に買い物しているだけなので、特別な感覚が無い。
相楽さんの【オタク】も全く特別な感覚なんてないだろう。
稲葉さんの【合成】は、異世界に来たって感じだな。
「あら、一条。貴方魔法が使いたいの?」
フブキ様に俺達の会話が聞こえていた様だ。
「使えるなら使いたかったですよ。人族でも竜族程ではありませんが、みんな使ってますもん」
「貴方も練習すれば良いじゃない?」
「練習して使えるなら練習してますよ」
何言ってるの、この子?
って顔でフブキ様が俺を見ている。
シャルティア様が隣で、フブキ様の真似をしている。
「貴方達も練習すれば使えるわよ」
んっ?はっ?
「えっ?でも、勇者は魔法が使えないんじゃ?」
「そんなの誰が言ってたの?勇者も魔法は使えるわよ」
……なんだって。
そういえば、勇者は魔法が使えないなんて誰も言ってなかったな。
言って無かったけど……
「マイケルさんから、人族は生まれた時に一つ魔法が使える様になるって聞いた様な……」
「一条、貴方はたった数年生きた程度の商人の男と、数百年生きている竜王の妻の言っている事、どっちが正しいと思っているの?」
「おもってるのー?」
マイケルさんは間違っていたのか?
「マイケルの言ってるのは、属性の事なんでしょ?
無属性の魔法なら誰でも使えるわよ」
俺でも魔法が使えるのか。
素直に嬉しい。
「ヨォッッシャァー!!キタコレ!!」
「きたー!」
隣で相楽さんが咆哮している。
隣で弟子も可愛く咆哮をあげている。
「興味があるようね、魔法を教えてくれる教師役を探しておいてあげるわ。
この一月で使える様になるといいわね」
こうして俺達の魔法の特訓が始まった。