104話 エルフの恐怖。
「我々エルフは世界樹を見守り続けてきた。
誰が、どの種族が争いを起こそうと。
そして我々はこの世界の行く末を見守る種族だ。
我々は他の種族と関わりを持たない、それがエルフの掟だ」
エルフ族は、創造神達と竜神達の争いにも参加しなかった。
「それはどうしてですか?」
それも創造神の願いなのか?
「恐らく……怖れたのだ。
大罪に支配されるのを」
大罪?
「人族は『傲慢』、魔族は『嫉妬』、竜族は『憤怒』、妖精族は『強欲』、神獣族は『欲求』、魔物族は『暴食』、獣人は『怠惰』。
他の種族は大罪に侵され、道を踏み外した。
我々も大罪に侵されるのを恐怖しているのだ」
それで、エルフはただただ世界樹を守り続けているだけなのか。
「しかし私は……一族の掟を破ってでも伝えなければならなかった。
世界樹の現象を、そして終焉の日が近付いていることを」
そこまで世界樹は弱っているのか?
それで結局何故俺達がこの世界に呼ばれたんだ?
神人族の代わりって結局?
そう思っていると相楽さんがエルフの男に食ってかかる。
「それじゃあ、私達が無理矢理こっちの世界に連れて来られたのは、
貴方がそこの、ガマガエルに私たちを召喚するように言ったからなの!?」
感情的になっている。
でも、一国の王にガマガエルって面と向かって言っちゃたよ……
竜王様も微妙な顔をしている。
「それは違う……私がミネゴルド王国に来たのは以前から勇者召喚をやっていたからだ。
そして、それを止めに来たが、本当に一歩遅く……すでに君達新たな勇者召喚が行われてしまっていたんだ」
それが本当なら、結局あのガマガエルが悪いんじゃないか。
「エルフの……」
「デジータです。
エルフ族を追放された。
すでにエルフを名乗る事を禁じられた……ただの男です」
「そうか……デジータよ。お前がミネゴルドに進言したのが最近と言うなら、何故ミネゴルド王国は以前から勇者召喚を行っていたのだ?」
「それは……」
そうだ。
ミネゴルド王国はエルフ族の進言無しで、終焉の日が近付いているのを知っていたのか?
黙っていたミネゴルド王が口を開く。
「エルフが掟を破ったのは初めてでは無い。
過去に二度あった。
その一回が私の祖父ミュラー=ミネゴルドの代だ」
その時に、先代勇者のトーヤが召喚されたのか。