98話 竜族の友。
まさか、相楽さんと天野の祝福の相性がこんなに良いとは思わなかった。
なんだあれ?
人間辞めてしまってる力じゃん。
「今は無双ゲー、モードなの」
へぇー?
「相楽様、敵はあと、108騎です。
そのうちボスキャラは14騎です」
「わかった」
いや、全然わからん。
なんだ、『騎』って?
敵の数え方か?
ボスキャラ?
勇者のことか?
それにしても目の前は酷い事になってるな。
まるで地獄絵図だ。
ドワーフ達、やり過ぎだろ。
人間が血塗れで倒れている。
しかも数えきれないぐらいに。
元の世界で遭遇したら……いや、想像すら出来ない。
それでも今、大丈夫なのは、勇者補正がもしかして掛かっているのか?
多分そうだろう。
相楽さんも、天野も結構平気そうだ。
逆にスピカ女王は血の気が引いている。
大丈夫か?
俺はドワーフと相楽さんが敵を倒している間に、
他の竜族を回復させていく。
幸い死んでいる竜族は居なく、稲葉さん特製ポーションで直せた。
あとは目を覚ますのを待つのみだ。
俺が全ての竜族を治すと、戦場はほぼ決着がついていた。
俺達の勝利と言って良いだろう。
竜王様が目を覚ました様子だ。
「……一条無事のようだな」
そうだ、俺は竜王様に助けて貰ったんだった。
「竜王様、俺なんかの為に……」
「俺も焼きが回ったか」
竜王様が笑っている。
まだ穴が空いた腹に響いたのか顔を歪める。
「何て言うのは冗談だ。お前は竜族達の命の恩人だ。
一条、竜族を代表して感謝する」
いや、そんなに畏まれる程の事は……
「一条、お前はもう竜族の友だ。困った事があったら協力しよう」
困った事……うん。
間違いなく今だな。
「竜王様、戦場は制圧しましたけど、これからどうすれば良いですか?」
「任せろ」
頼もしい。
やはりただの高校生と、一国の王では全然違う。
頼りになる。
「ミネゴルド王よ。出てこい!
王と王で話がある」
地響きがするような声が響く。
鼓膜が破れたと思った。
竜王様、先に言っておいてくださいよ。
するとミネゴルド王が出てきた。