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この世界

土曜日も休みであってほしいです

―――――第一次世界大戦末期の1917年、連合国側の勝利が確信になりつつあった時、それに追い討ちをかけるかのように、イギリスがとある兵器を開発したわ。


それが、機甲騎士の前身である歩兵支援強化外骨格、『00モジュール』よ。


これは、身長が二メートルしかなく、機甲騎士と比べれば小人としか言いようがない程のモノだけど、その性能は高く、歩兵が主力であった当時の戦争では、対処できる兵器が無いほど強力だったわ。


装着者の体全体を覆うように装備された装甲板は、機関銃などものともせず、通常の人間では持ち運べない重火器を容易く持ち歩いて敵の塹壕内を殲滅する。


そんな当時最強と言わしめたその兵器は、塹壕戦という世の常識を塗り替えたわ。


そして世界は、新たな時代へ向かっていくわ。


1918年の第一次世界大戦終結後から、00モジュールはどんどん巨大化の一途を辿ることとなっわ。


そして1920年、世界初の機甲騎士がアメリカで製造されると、世界各国はこぞってこの兵器を輸入、独自の機甲騎士を開発し始めた。


そんな中で、当時軍縮条約を結んでいたはずのドイツ帝国が、1930年代に入ると、急にこれを破棄、機甲騎士の配備を含めた軍拡政策を開始したわ。


その後、ドイツ帝国、イタリア、日本帝国による三国同盟が結ばれて、あなたも知っているような歴史が1940年まで続いたわ。


……しかし、ここで日本帝国は大きな転換期を迎えるわ。


日本帝国では、当時の軍人政権が崩壊し、左翼派閥による説得から、昭和天皇が戦争の中止を命令。


それにともない、日本帝国は当時の占領地域を全て放棄、三国同盟も破棄してアメリカ側へとしてこれ以降戦っていくわ。


まあこの決断には数多くの反発が国内であったけど、『無駄な命と時間の浪費である』と天皇陛下から言われたら何も言い返せなかったそうよ。


……しかし、物事はそう簡単にはいかないわ。


1944年のイタリア降服後も、ドイツ帝国の野心の火は消えることなく、たった一国のみでヨーロッパを支配していたわ。


その理由は、ドイツ帝国が無人型の機甲騎士を開発したことにあるわ。


機甲騎士の無人化によって、ドイツ帝国は支配力、軍事力ともにより強力なモノとなり、更にソ連にも侵攻し、その戦力を着実に削っていたわ。


この事態の早期解決と、戦争を終わらせるために、アメリカ、イギリスなどの連合国軍はとある作戦を考案したわ。


それがノルマンディー上陸作戦よ。


日本帝国名称『の号作戦』と呼ばれたこの作戦は、連合国各国軍から上陸部隊を編成し、ドイツ帝国崩壊の糸口を作ろうとしたわ。


……しかし、作戦は失敗。


世界各国から集められた総勢15万人の兵士と1000機を越える機甲騎士は、たった10人の兵士と3機の機甲騎士を残して全滅したわ。


そんなノルマンディー上陸作戦の報復であろうか、1946年、ドイツ帝国が日本帝国に大規模上陸部隊による攻撃を行ったわ。


当時、自分たちのところまで飛び火することはなかろうと油断していた日本帝国の警備部隊は全滅、一時は横浜を占領されたわ。


……まあそれに関しては、その後のアメリカの軍事介入によって事なきをえたわ。


その事件から、日本帝国政府は自国の警備体制の見直しを行い、警備を強化したわ。


横浜を特別警戒ラインとして封鎖し、そこに軍の施設の建設や機甲騎士の配備、 砲撃部隊や上陸阻止部隊など、多岐にわたる部隊が編成、設置された。


さらにアメリカと日米安全保障条約を結び、更なる軍事力強化と、アメリカという巨大な後ろ楯の入手に成功したわ。


日本帝国内でそんなことをやってる間もドイツの侵攻は続き、ヨーロッパは全土が占領され、ソ連も戦線の維持で手一杯、他の国もドイツ帝国の上陸部隊による攻撃に悩まされ、世界は一部国家を除き、自国第一主義へと陥っていったわ。


そんな中日本帝国で考案、施行されたのが国民管理法案よ。


日本帝国国民全員の体にマイクロチップを埋め込み、それによる監視、管理と統治が行われるようになったわ。


この管理統治法案によって、共産主義者、危険思想家や法案反対者といった人々はこぞって逮捕、軍役刑と呼ばれる、軍での強制労働の刑罰が下されたわ。


……まあ国家総動員法が施行された今となっては、そんな刑罰はあってないようなものだけれどね。


要は何だかんだ理由をつけて、軍人を増やしたかっただけなのよ。


*****


「―――――と、まあ、そんな感じで特に変化もなくこの世界は今も続いているわ。」


篠崎は話しきった、とでも言うかのように、肩を下ろしながら、深く息を吐いた。


「……なるほど。大体は分かりました。」


「分かったならいいわ。……で、そんな中央集権の超管理国家である日本帝国に不幸にもやって来てしまったあなたは、正直言って大変よ。」


「……そうなんですか?」


「ええ。……国民管理法では、故意によるマイクロチップの摘出や血縁者による子供への埋め込みの拒否は禁じられ、違反者には厳罰が下される。……これが何を意味するか、分かるわよね?」


そこまで聞いて、悟ははっとした。


それはつまり、マイクロチップを埋め込んでいない自分は厳罰を受ける対象者であるということなのだ。


いくら別世界から飛ばされてきたものであったとしても、そんな言い訳が通じるのは目の前の篠崎程度しかいないであろう。


……つまり、今自分がもしここから出たりしたら、いつ捕まるかは時間の問題なのである。


「……どうやらその顔は理解した感じのようね。……つまり、今のあなたに必要なのは、マイクロチップを埋め込みこの国の国民として生きるか、あるいは―――――」


そこで篠崎は、人差し指を伸ばし、中指も続けて伸ばしながら―――――

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