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目覚め

一話で四千文字くらい書ける文章力が欲しいです。

語彙力身に付けなきゃ(使命感)

「…………き…………さい…………」


「…………おきな…………さい…………」


「―――――起きなさい!」


「―――――ッ!」


何処からともなく聞こえてきた声によって、悟の意識は完全に覚醒した。


その声に驚いて、悟は反射的に体を勢いよく起こした。

そしてその時、自分がベットの上に寝かされていたことを認識した。


辺りを見回してみると、部屋は白色で統一された病院の一室といった感じのモノであり、近くには先程自分を起こしたのであろう女性が、不機嫌そうな顔をしながら椅子に座っていた。


女性は藍色の長い髪を後ろでひとつに纏めており、髪と同じ色の目は、非常に鋭かった。


「……まったく。本来なら憲兵に身柄を拘束されてもおかしくない位の事をやった人間の癖に、軍病院で惰眠を貪るとはいいご身分ね。」


女性は開口一番に、いきなり皮肉を飛ばしてきた。


「あの……ここは……?」


「横須賀の軍病院よ。警備兵に拘束されていたあなたの身柄を引き取って、私がここに連れてきて、それの治療をさせたわ。」


そう言いながら女性は悟の顔辺りを指差してきた。


何かあるのかと思い顔の辺りをさわってみると、額に包帯が巻いてあった。


そしてそれを認識したときに、悟は自分が警備兵に拘束される直前に、後頭部を固い何かで殴られていたのを思い出した。


銃のストックや警棒の類いであろうか、そういったモノに殴られた感じであった。


「……思い出したかしら?……まあ、私もあなたに対して質問したいし、あなたも私に質問したいことがかなりあるかもしれないけれど……取り敢えず、私の名前は篠崎(しのさき)よ。よろしく。」


「……宮本悟です。」


悟は、篠崎が差し出してきた右手を握った。


「……本題に入る前になんだけど、あなた、お腹空いてたりする?……と言ってもまあ、私があなたに渡せるのはこれ位しかないけどね。」


そう言って篠崎が放り投げてきたのは、銀色の栄養ゼリーの入っていそうなパックに、『戦闘糧食Ⅲ型 補助食』とだけ書かれた物だった。


彼女の口ぶりから察するに、食べろということだろうと判断し、悟はキャップを開けて中に入っていたものを吸い上げた。


そしてその直後、中に入っていたゼリー状の物体の何とも言えない味に顔をしかめてしまった。


その反応が面白かったのか、篠崎は口に手を当てながら笑っていた。


「……どうかしら?日本帝国軍製の戦闘糧食の味は。」


「……今まで食べたものの中で一番酷い味でしたね。これを作った人に会ってみたいですよ。」


「酷い言われようね。……これでも、各種の栄養と活動に十分なエネルギー、それに精神安定効果まである優れた食べ物よ。」


「……その代わりに、味は酷いことになってますけどね。それじゃあ食べようとは思えませんよ。」


「……確かにそうね。……それで、落ち着いたかしら?」


「……ええ。落ち着きはしませんでしたが、これのお陰で目は覚めましたよ。」


そう言って、悟はまだ飲みかけの不味いゼリーを示した。


「……そう。それは良かったわ。……じゃあ、私の方から質問に入らさせてもらうわよ。」


「……分かりました。」


「率直に聞かせてもらうけれど……あなたは何者で、一体どこからどうやって来たの?」


「……名前はさっき言った通りで、一応学生です。……どこからというと、日本からとしか言えません。ここには朝家を出て歩いていたら来ていました。」


それを聞くと、彼女は考え込むように顎に手を当てた。

そして、足元に置いてあったバックからノートパソコンを取り出して、ベットの横にある机に置いた。


「……やはりそうなのね。……実は今日の朝、横浜戦区の一角で、異様な磁場の乱れと濃霧を観測したわ。……私たちはその現象の調査のため、すぐに観測機を出したわ。」


パソコンの画面には、磁場を計測したのであろうグラフと、霧が一面に映る航空写真が写し出されていた。


その霧というものには、悟も心当たりがあった。


自分が家を出てからここへと来るまでの間も、それと同じような濃い霧に包まれていたからである。


「……でも、霧は全く晴れる様子はなく、調査を中止しようとした……その時に、いきなり今まででどんな風にもびくともしなかった霧が、一瞬で消えてなくなったわ。」


それにも心当たりがあった。


その霧が晴れると、悟はこちらの世界へ来ていたのだ。


「……そして、その直後に横浜戦区で捕まった身元不明のあなた。……この状況から察するに、あなたはこの世界の住人ではなく、別世界から何らかの理由でやって来てしまった……ということでいいかしら?」


悟はその問いかけを肯定するように頷いた。


「そう。……じゃあ、あなたのいた世界は、どんな感じなのかしら?」


そう聞かれて、悟は自分の世界の事を話し始めた。


自分の住んでいる国は日本で、天皇は国家の象徴であり、行政は国会が行っていること。

その日本には軍隊というものが存在しないこと。

こちらの世界ほどロボットの開発技術が発達していないこと……など、様々な事を話し、篠崎はそれを興味深そうに聞いていた。


「……なるほどね。……軍隊の無い国家、天皇は国家の象徴である……か。作り話とは思えないわね。」


篠崎は面白そうにうんうんと頷いていた。


「……疑わないんですか?俺のこと。」


「……えっ?疑うわけないわよ。あれだけ原因不明の怪奇現象が起きてるんだもの。それくらい起きても不思議ではないわよ。」


「そんなもんですかね……」


絶対そんなこと無いだろ、と思いながら、悟は言った。


「そんなもんよ。……まあそれに、マイクロチップが埋め込まれていなかった時点で大体察しはついていたわ。」


「マイクロチップ……ですか?」


悟は篠崎が発した、マイクロチップという言葉に興味を惹かれた。


「……そうよ。マイクロチップ。……日本帝国の市民は、生まれたと同時に身元管理用のマイクロチップを体に埋め込まれるわ。」


「えっ……そうなんですか?」


悟は驚いたようにそう言った。


確かに自分の世界の方でも最近そう言ったものが話題となっていたが、まさかこっちでは使われているとは思ってもいなかったのだ。


「ええ。……まあその事も含め、今度は私がこの世界について話さなきやいけないわね。」


そう言い、篠崎は一度息を吐いて落ち着くと、ゆっくりと語りだした―――――

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