1-2 人の好意は受け取るべきか。
先日は、たかがペンダントで詰問されるという、散々な出来事にあった私です。
あの後、すぐにメイド達に何があったのかを伝えた。(ペンダントの話は詳細に語る事が出来ないため、そこはうやむやにした。)
とにかく、好意の欠片もクレア様は私に対して持っていないと主張すると、皆ため息をついて、つまんないと勝手なことを言われた。
疲れたが、誤解を解くことが出来たのは良かった。
それでも、その日はなんだかもやもやしたけれど、次の日になれば、すっかり私はなんとも思わなくなった。
しかし、それから約一週間ほど経った今日、クレア様がまたもやオーラル家に来ていた。
またか、と一瞬思ったが、今回はヘンリー様と会うためであり、私はほっとした。
ほっとした瞬間、私にまた会いに来たのではと警戒した自分が恥ずかしくなり、気を引き締める。
あの出来事はもう終わったのだから、もう私に話しかけることもないわ。何をほっとしたんだか。
そう考えていると、執事のローベルトから頼まれて、紅茶をヘンリー様とクレア様に運ぶ。
よりによって私か。
他にもメイドはいるが、ローベルトに直接言われたため、私が持って行く他ない。
先日の件ですっかり期待をされなくなった私は、他のメイドやサニーから注目されることなく、ひっそりと部屋へ向かう。
トントン。
ドアを軽く叩き、失礼しますと言ってから部屋へと入る。
お二人は話されているだろうと思っていたが、部屋に入ると、二人とも私を見てきたので、少し動揺する。
私を見てくるので困りながらも、きっちりと紅茶をテーブルに置いて、再度礼をした。
「アイ、ちょっと待ってくれ。」
さぁ、戻ろう。
そう思い、足を動かしかけた時に、ヘンリー様から声がかかった。
「はい。」
今までにないヘンリー様からのお声かけと、向かい側にいるクレア様の存在に、また嫌な予感がする。
「先日、クレアさんの手伝いをしてくれたそうだね。」
「いえ、お手伝いと言えるほどでもございません。」
ヘンリー様からの言葉に、メイドらしく謙遜すると、ヘンリー様が上機嫌に言った。
「さっき、クレアさんがその御礼として、君をブティックへ案内したいそうだ。滅多に行ける場所でもないから、良い経験になるだろう。急ではあるが、今から案内してくれるそうだから、準備をしなさい。」
「……。」
ヘンリー様の言葉に頭が真っ白になった。
返事をしなければいけないのに、内容を理解できない。
ブティック?案内?準備?
「本当に大事なものだったから、本当に助かった。事を大きくしたくないという勝手な我儘で一人で探させてしまったことに、申し訳なく思っているから、是非案内をさせてくれ。」
「クレアさんもこう言ってくれてることだし、普段着で行って来なさい。メイド服だと、あそこは浮いてしまうから。」
やばい。
行く流れになってきた。
「っいえ、私などが行って良い場所ではありませんので。お気持ちだけでもーーー」
咄嗟にお断りしようとしたが、クレア様の笑顔で拒否された。無言だが、行くだろうな?という妙に威圧的な笑顔である。どう考えても、断れる雰囲気ではない。
「……大変恐縮ですが、お願い致します。すぐに着替えて参ります。」
「是非、そうしてくれ。」
こうして私は、またもやクレア様と話す機会を持ってしまったのである。