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夢のような  作者: pipi
16/20

2-5 すっかり密偵らしくなってきました。




ナタリーが随分とお喋りなことを知ってから、私はどうしてもレイチェルとリリーが気掛かりで仕方なかった。


他のメイドも知ってる人は知ってるみたいだから、サニーに二股のことを話し、疑問を聞いてみた。



「なんで、レイチェルはリリーやマックスに怒ったり、浮気をされたって言わないのかしら?」


「うーん、単純に知らないかもしれないけど。もし気付いてたとしたら、愛じゃない?」


サニーの答えに、私は理解できなかった。



「愛?マックスに対しての?」


「そう、好きだから浮気されても別れたくないとか。マックスは最後には自分を選ぶっていう自信があるとか?」


「そう……。それに、リリーとレイチェルは、何故普通に話せるの?部屋だって同じで、変えたいとも言ってないわ。」


「そこは普通、女の闘いになりそうだけどね。女の闘いを水面下で行ってるか、特殊な友情が生まれたんじゃない?」


「私には理解できないわ。」


サニーは私の言葉にアハハと笑った。

私がレイチェルの立場だったら、マックスもリリーも許せないと思うんじゃないかしら。

それに、リリーの立場でも、同じ部屋で普通に仲良くなんて、出来ないと思う。



「愛は理屈じゃないのよ。たしかにマックスは浮気をしているし、リリーとレイチェルは複雑な関係になってる。それは事実だけど、論理的になれないのが感情だから。

もし知った上で黙ってるのであれば、レイチェルなりの理由があるのかもね。アイだって、分かるでしょ?ほら、クレア様のことを思い浮かべたらーーー」


「ーーー分からないわ、全く。」


「あー、もう、せっかくアイにも春がきたと思ってたのに。」



あの腹黒そうな笑みを浮かべたクレア様が思い浮かび、私は即答で否定した。


レイチェルとリリーの気持ちはよく分からない。私はため息をついた。


その時に、ふと思い付く。

レイチェルなりの理由?









私は倉庫を調べてみることにした。


此処には、書類関係や備品、道具が収納されている。

書類関係には、メイドの履歴書などもあるため、調べたら何か分かるかもしれないと思ったのだ。



ラフォード侯爵家に繋がる者がスパイ。


一人一人の履歴書を見ながら、私はラフォード侯爵家に繋がりがある人物はいないかを確認する。

前に働いていた者の書類も確認してみるが、該当者はいない。



「まぁ、書類に正直に書いている筈もないわよね…。」



私はそう納得し、ついでに書類の整頓をしてから、ファイルを戻した。

あと、調べたら良さそうなファイルは…。


そう思いながら、いくつもあるファイルを見ていると、足音が聞こえてくる。

私は慌てて準備をすると、扉が開く音がした。

扉へ視線を向けると、レイチェルとリリーの二人であった。


「あ、」


「っ!」


レイチェルとリリーも驚いているようで、動揺している。



「二人とも、どうしたの?」


「えっと…、倉庫の整頓でもしようと思って、アイはなぜここに?」


「私もそうよ。奇遇ね。」


私は先程慌てて準備した、もう前に辞めた使用人達の履歴書を見せた。



「見て。少し放っておくと、すぐに書類が乱雑になっているわ。」


二人に説明しながら、私は内心ヒヤヒヤしていた。

念のために、もし人が来た時のために倉庫にいる理由を考えておいて良かった。

変に怪しまれるのは良くない。



「私達も手伝うわ。」


「ありがとう。」


少し心配していたが、レイチェルとリリーはあまり気にしなかったようで、一緒に書類の整理をしてくれる。

調査は中止だ。二人がいる手前、調査は出来ない。



「じゃあ、二人に書類をお願いしていい?私は備品を確認しておきたいから。」


「分かったわ。」


レイチェルとリリーには、書類関係をお願いして、私は備品のチェックを始めた。



「ねぇ、アイ。書類って、どれを処分すればいいのかしら?」


「えっと、そうね。仕事の当番表とか、もう今はいない使用人に関しての書類はもういらないわ。前に行ったパーティーやお茶会についての書類はたまに見る時もあるから、そういうのは残しておいて。」


「分かったわ。」



倉庫はたまに整理整頓する必要があるが、少し薄暗い所だし、来る者は少ない。

こんなところにメイドが三人もいることに慣れない違和感を感じながら、整理を行った。


三人もいるため、少しすれば整理はある程度終わった。

少しはさっぱりとした倉庫を見渡す。



「ありがとう。二人がいたおかげで、すごく早く終われたわ。」


私はレイチェルとリリーにお礼を言った。


「私、もうそろそろ行かないと。悪いけど、書類は処分してもらえる。」


「任せて。」


私は二人にそう言って、先に戻ることにした。





ーーー倉庫に置いてきた盗聴器が、二人の会話をちゃんと録音していることを願って、私は倉庫から去ったのである。







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