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夢のような  作者: pipi
14/20

2-3 初めての報告と再び噂。




三人のスパイの容疑を無くすためには、マックスへの聞き込みが必要である。


バネッタは、本当に本を読んでいるのかだけを確認すれば分かる。

しかし、レイチェルとリリーに関しては、どうしてもマックスが鍵になってくるのだ。

本当に二股をしているのか。そして、二人に本当に会っているのか。


そのため、マックスへの聞き込みをしたかったのだが、そこまでいくと不自然になってしまう。

マックスと知り合い程度の私が聞きに行くのは、さすがに怪しく思われてしまう。

私はマックスへの接触を断念した。

この件については、ローランドからそれとなく聞いた方が良いだろう。


それに、私の嘘により「メイド部屋には幽霊が夜中に徘徊する」という噂が広まってしまい、住み込みのメイド達は、足音にとても敏感になってしまった。

誰かがトイレに行く足音が聞こえるだけで、扉をばっと開けて確認する程の徹底ぶりだ。

元はと言えば、私が悪いのだけれど……。


それにより、私も夜は迂闊に行動することは出来なくなったし、ベネットは勿論のこと、三角関係らしきレイチェルとリリーでさえも、夜に出歩くことがめっきりなくなった(という噂だ)。


まさかここまでの効果があるとは予想外だったけれど、私としては良い方向だと思う。

今の状態では、もしスパイがメイドの中にいる場合、夜に行動が出来にくくなった筈である。これで、少しはスパイ行為の妨害になれれば良いのだけれど。


監視については、あまり収穫はない。

私から見て不自然な人はいない。というより、幽霊の噂のせいで住み込みのメイドは夜になると、全員が緊張感がある。

そのため、何が不自然なのかという基準がよく分からないからである。

ラフォード侯爵家に繋がりがある人も、今のところは聞いたことがない。




そんな状態である今日、クレア様が屋敷へと来た。


私はちょうどレイティ奥様のお世話をしていたのだが、ローランドに呼ばれた。


「アイ、紅茶をヘンリー様とクレア様にお願い致します。」


「はい。」


「あら、そんなに手の空いてるメイドがいないの?」


レイティ奥様が不思議そうにローランドに聞いた。

たしかに、他にもメイドはいるはずなのに私に頼むというのは、些か不自然である。

ちょっとタイミングが悪い時に、クレア様は来てしまった。

少し冷や汗が出る。



「クレア様から指名がありまして。アイにやってほしいそうです。」


ローランドが上手く理由をつけてくれたのは良かったが、それはそれで困る。


「まぁ!」


レイティ奥様が急に笑顔になり、目を輝かせながら、ちょうど一緒にいたサニーと顔を見合わせる。



「そうよね、私の子供のために服をお願いする子だもの。」


「そうですわね~。」


「気になって仕方ないのね。」


「そのようですわね~。」


「……レイティ奥様、少し席を外させて頂きます。」



レイティ奥様とサニーの会話を私は聞こえないフリをして、部屋から出た。



「……ローランド、他の理由はなかったのですか。」


「それしか適当な理由が見当たらなかったもので。」







トントン。


「失礼致します。」


紅茶の準備をして部屋へ入ると、先日と同じように、ヘンリー様、クレア様、あとローランドも中にいた。



「さて、報告をしてくれ。」


紅茶を配った後に、クレア様から早速報告のことを言われたので、三人のメイドについてを話した。あと、マックスのこともだ。



「…ふむ。マックスはローランドに探ってもらう。本当に二人と会っているのかを知りたい。」


「承知致しました。」


話を聞いたクレア様もマックスが気になったようで、ローランドに指示を行う。



「それと、今度の報告はローランドへと頼む。私が此処に来すぎると怪しまれるかもしれない。しばらくは期間を空ける必要がある。」


「分かりました。」


それを聞いて、少し安心した。

先程のことで、毎回タイミングが悪い時に来られたらどうしようと思っていた。



「アイ、済まないね。巻き込んでしまって。」


ヘンリー様が申し訳なさそうに、私にそう言ってくれた。


「とんでもありません。ヘンリー様とレイティ奥様のためですから。」


ーーークレア様には色々と言いたい気持ちがあるが、ヘンリー様は別である。


嫌味の一つでも言いたい気持ちをぐっとこらえ、ヘンリー様に礼をしてから私は早々に退出した。











「ふふふふふ、アイ、あなた噂になっているわよ!」


「私が?」


次の日、サニーが鼻息荒く私に近寄った。



「クレア様って、アイのこと好きなんでしょ!?」


「何を言っているの?そんな訳ないじゃない!」


もう!とサニーが手でバンバンと背中を叩いてくる。痛い!


「昨日だって、わざわざアイが来るように指名してきたし!絶対にアイのこと気に入ったんだわ!これはチャンスよ、クレア様のお母様は平民らしいし、可能性はある!上手く行けば玉の輿にのれるじゃない!」


「ちょ、ちょっと…!」


興奮しているサニーを一度落ち着かせた。


「ただ、名前を覚えられただけ!だって、知らないメイドより知ってるメイドの方が気楽じゃない。それだけよ。好かれてなんてないわ。」



これじゃあ、もし次クレア様が来た時、気まずいじゃない。噂を無くしたいのに、来るたびに噂が広がりそう。

スパイが明らかにならない限り、間隔を空けるとは言え、ずっと私を指名してくるわ。



「言っておくけど、屋敷中この噂で持ちきりよ。」


「…え、屋敷中!?」


噂の広まりの早さに、つい声を荒げた。

屋敷中って、いつの間に?クレア様が来たのは昨日なのに。早すぎるわ……。


「あのアイにも遂に春がきたって。昨日アイがいなくなってから私とレイティ奥様で盛り上がってたら、広まってたみたい。」


「ちょっと、勘弁してよ……。」


これには深い理由があって、そんな甘酸っぱい話ではないのだ。

私が頭を抱えていると、サニーが貴方は結婚を諦めない方がいいわよ、とか言っているが、そんなことを聞いている余裕はない。

だから、メイドの子達がやけにきらきらした目で私を見てきたのね…。昨日の夜あたりから気になっていたことが解決した。



「だって、ブティックへ連れて行くし、屋敷に来たらアイを指名するのよ?好意がある以外、何があるっていうの?」


「……。」


ーーークレア様に脅されて、密偵させられてるのよ!好意どころか、悪意すら感じるわ!

とは言えず、また他の良い理由も思いつかず、結局私は黙るしかない。


本当の私の気持ちを理解してくれる人はおらず、その日から私は好奇心の目(一部からは嫉妬と恨み)で見られるようになってしまった。





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