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私の裸、見てくれる?

 寮は学校から歩いて十分ほどのところにあった。四階建ての大きな建物でテニスコートや運動場にトレーニングジム、図書館、極め付けには室内プールまで完備されていた。レストランでは高級料理からご当地B級グルメまでさまざまな料理が振る舞われる。しばらく、生徒会長に案内してもらった後、駆は受付で生徒手帳を見せる。


「はい、浪川駆さんですね。自室はエレベーター上がって四階の四百一号室です」


そして、駆たちはエレベーターに乗り込む。そこでしばらく黙っていた早川蘭が口を開き妹の現状を話し始める。


「うちの妹なんだが、元気で明るいいい子なんだけど寂しがりで一人が大嫌いなんだ。でも私や姉は仕事で忙しくてなかなか相手ができないから遊んでやってほしい。あと、一日一回頭を撫でて褒めてやってほしい。あの子は誉めて伸びる子だからな。それと寝る前には必ず本を読み聞かせてあげてくれ。好きな本は、王子様とお姫様が出てくる童話ならだいたい好きだ。寝るときは必ず添い寝してあげないと泣き出すからな。あと」


もうわかったよと言わんばかりに頭を抱えつつため息をつく。駆はそんなシスコン姉貴の話を聞いてるふりをしながら足早に自分の部屋に向かった。すると見えた。四百一号室の文字だ。漸く解放されたと部屋の前につくと生徒会長が一番大事な忠告と銘打って話してきた。


「彼女を絶対に外に出さないこと。これだけは絶対守れ。守らないと最悪あの子が死ぬ」


どういうことなのか、それを問おうとしたが彼女の言葉に遮られる。


「さあ、入って会ってきてやれ。彼女が待っている。私もすごくすごくすっごく会いたいのだが、この後すぐ生徒会の仕事だから戻らなくてはいけないからな」


「はい、わかりました。頑張ってください!!」


「お前に言われるまでもない!」


 駆け足で去っていく生徒会長を見送り、高級感あふれる木製の扉をノックする。


「浪川駆です。入って大丈夫ですか?」


「入っていいよ!!」


許しを得た駆は扉を開くと中を見渡す。勉強用と思われる机と椅子、高そうなフランスベット、もちろん風呂はトイレとは別になっている。そしてベットに潜っている少女が一人。近づくと布団を自ら引っぺがした。パンツ一枚の少女が目の前に現れる。


「うおおおおああああああ!!」


駆は目の前に広がる圧倒的な光景に今日二度目の尻もちをつく。そこに上から下着少女が伸し掛かってきた。


「いってえ!!」


「王子様、お帰りなさい。今日は私にする? それとも私にする? もしかして私?」


「君しかないじゃないか!! というかせめて服を着てくれ!!」


慌てふためく駆に彼女は悲しそうな目をしてつぶやいた。


「服? なんで? 男の子は女の子の裸が大好きだって学園長お姉ちゃんが言ってたよ。王子様はマニの裸嫌いなの?」


「いや、大好きだけど、てか学園長は何を教え込んでんだよ」


大きなため息をついた後、駆はしゃがんで少女に目線を合わせ言った。


「それは愛してる人の前だけで見せるものなんだ。愛情の証としてね。そんなに乱用したらだれにも信じてもらえなくなっちゃうよ」


「じゃあ、もっとお互いに知り合って愛し合ったら私の裸、見てくれる?」


「ああ、もちろん!! かわいい子の裸が嫌いな男なんかいねぇ!!」


 彼女はすぐに服を着替え漸くしっかり容姿を見る時間ができた。服は緑のドレスでスカートの部分にはフリルがついており恐らく材質はプラスチック繊維。とにかく可愛さを重視した服といったところか。髪は銀色のツインテール、ひまわりの髪留めが印象的だった。


「着替えてきたよ王子様!! どう? かわいい?」


「ああ、すごくかわいいぞ。どこかのお姫様みたいだ」


誉めてあげると彼女は自慢げに鼻を鳴らて言い放った。


「なら、私のことはマニ姫様ってよんで!! 私は駆王子って呼ぶから」


「なんだか恥ずかしいな」


なるほど。早川マニと言うのか。そんなことを考えつつ駆は顔を真っ赤にして頭を掻いた。そして駆は彼女の外出禁止令のことを思い出した。確かに性格はかなり変わってる。

というか、狂ってる。しかし、それだけで外に出してはいけないと言われるだろうか。


 そんなことをしてるうちに時は流れ約束の時間になった。駆は部屋を出て下のレストランに行こうと準備を始める。財布と生徒手帳を持って制服の襟を直し靴を履いて外に出ようとする。


「どこに行くの!? マニも連れてって!!」


マニに制服の裾を引っ張られる。駆を上目使いでじーっと見つめてくるマニ。駆は彼女にご飯を食べさせないわけにもいかないし外に出さないというのはホテルの外に出してはいけないということだろう。

そう考えて少し気取った感じで、ではご一緒しましょうマニ姫様、とマニに語り掛けた。マニは満面の笑みを駆に返すと駆の手を握ってきた。二人はエレベータに乗り食堂へと向かうのだった。

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