俺の友人が姫様が可愛くて死ねるとしつこいのでそろそろ冥界に行って欲しい
「うちの姫様が可愛すぎて死ねる」
そう俺の友人が宣った。
「いや、マジで。もうそこらの凡百の美少女なんてもう目じゃない」
「そうか」
とりあえず適当に相槌を打ってやる。
「この間なんかな!俺が綺麗な花……ええと、ほら、アレ、赤くて花びらの大きい……」
「ラフレシア?」
「そうそれ!ラフレシアを持っていったらな!ありがとうって言ってくれたんだ!」
うん。少なくともその花はラフレシアじゃないと思う。好きな女の子にラフレシア持っていくのは人間としてのセンスを感じないから。
「でさでさ。渡してあげたはいいんだけどその……ラフレシアには茎にトゲが生えててな、姫様それで怪我しちゃったんだよ……」
茎にトゲって……薔薇か。こいつにしては中々女心がわかっているじゃないか。
「それで俺もさ。少し。本当にすこ〜〜〜〜しだけ焦ったんだよ。いや、マジで。本当にもう爪の先の甘皮ぶんくらいな!焦ったんだよ」
ああ、物凄く焦ってめちゃくちゃアタフタしたのね。わかるよ。お前なんか小心者だもんな。焦ると一周まわって我とか言いだしちゃう子だもんな。
「で?」
「そしたらさ、姫様が『私は大丈夫ですから心配しないで下さい』って言うんだよ!もうね!心臓にキュンキュンきた!」
それってお前が目の前で見てるこっちが焦るくらい挙動不審になったからじゃね?前俺のお気に入りのワイン落として台無しにしたとき高速振動しながら土下座してたじゃん?
って言いたい。さすがにかわいそうだから言わないけど。
「ああ、姫様のあのまるで空に輝く星のような銀の髪!深い海のような蒼の瞳!まるで噴き出す血のような紅い唇!そして汚れを知らぬ新雪のような白の肌!マジ天使!」
あ、なんかどこかに魂がトリップしてる。
「で、わざわざそれを言いに来たのか?」
「ああ!」
「そうか」
「反応薄!泣くよ⁉︎」
「……」
いや。泣くよって言われても困るんだけど。
「……というか仕事の邪魔すんなよ。姫様愛でるだけで生きてられるお前と違って俺は食い扶持を稼がないとならねえんだよ」
「そんな、僕が何もしなくても生きていけるみたいに言わないで下さーい」
「いや実際お前何もしなくても生きていけるだろ」
だってーーーー
「骸骨魔導王じゃん」
「うん」
「涙は流れるわけないし、心臓は高鳴るわけないし、そもそも既に死んでるじゃん」
「そうだな」
「俺と違って肉体ないから飯もいらないし水もいらないし睡眠も必要ないし昂ぶる息子もいないじゃん。何もせずとも生きていけるじゃん」
「……ああ」
あ、今、一瞬間があった。
「というか姫様愛でるだけで生きてられる災害指定種の骸骨魔導王さんが俺みたいな一介の地方領主の家に遊びに来ないで下さい」
「いや、でも、ほら、お前とオレ従兄弟」
「生前はな?」
「死んでも従兄弟だよ⁉︎」
黙れ。毎回毎回骸骨モードのまま遊びに来やがって。しかも毎度領地を闇で包んで雷鳴轟かして現れるんじゃなえ。領民も最近は『あ、スケ(ルトンロード)さんだ』くらいに順応してるし。どうすんだよ緊張感が欠片もねえよ災害指定種。
「ほら、ケーキとっといてやったからそれ持って帰れ」
「お、気が効くなあ!流石アレン!俺の従兄弟だ!」
「冥界に」
「お供物⁉︎」
まあいいや。こいつがうろついてるおかげでうちは周りから攻められずに済んでるし。
「あ、あと頼まれてた縫いぐるみもできたからそれも持っていけよ?」
「おー、さんきゅーブラザー!」
そう言って災害指定種のスケルトンロードは魔王の娘のところへと帰って行った。
全く。ホント、あいつは変わらねえな。
「……領主様。嬉しそうですね」
「そうか?」
「はいとてもいい笑顔です」
そうか……
「なあ、侍従長」
「何でしょう?」
「俺、首なし騎士だから顔ないんだけど」
因みにデュラハンの彼はホントに頭がないので食べ物飲み物は食道にダイレクトアタックしています。聴覚や視覚?魔法的ななんかでどうにかしてるですよきっと(適当)。