9.ステータス考察
ふーっ
一気にいろいろ解決…したのか?
まぁいっか!
全部が全部解決したわけではないにしろ、緊急で困るような状態ではなくて胸を撫で下ろした。
この世界にきて、いや目が覚めてからどれくらいの時間が経っているのだろう。まだ1日は過ぎてないと思うが、時間の観念が薄くなっている気がする。
ヴェルフィアード曰く、私には寿命がなく、不老不死だそうだ。一応、攻撃されれば傷ついてHPは減るし、精霊を使役するのも、魔法を使うのもMPを消費する。だが、ステータスから考えれば、私が怪我を負ったりするのは、まずないと思う。
そんな目に見えて減るとは思えないHPやMPが極限まで低下したら、神殿の地下にある回復聖堂に強制転移されるようになっているそうだ。私が目覚めた時にいた部屋だ。
召喚の際にステータスが全て「限界突破」になった影響で、HPもMPも極限低下状態と同等だったから、回復するまで眠っていたわけだ。回復に1年もかかる限界突破って、数値で言うとどれだけなんだろうか…。
結局は私が死ぬことはない。唯一の方法、ヴェルフィアードに喰べられない限りは。
精霊の使役については、魔力コントロールが下手なままだとしても、神格の状態なら精霊4人を実体化して全開で使役することに問題はなく、「何せMP限界突破じゃ!」とヴェルフィアードが自慢気に話していた。それが可愛かったのは本人には内緒だ。
しかし、裏を返せば、鬼人の状態でも精霊を実体化させたかったら、魔力コントロールを身に付ける必要があるということだ。
基本的に食事でのエネルギー補給は不要で、この世界の魔力を循環させていれば不眠不休無飲食でも平気だそうだ。この世界で意識して何かを成すこともないが、馬車馬のごとく働けということなのか。それは穿った見方だろうけど。
趣味で食べたりしても問題ないのはありがたいと思った。これでも独り暮らしを8年していたから、それなりに料理もこなすし、何よりも美味しいものを食べるのが好きなのだ。キッチンもあるし、食材が手に入ったら何か作ろうと楽しみを増やすのも忘れない。
さて、どうしようかな?
まだグランたちは帰ってこないかなぁ?
探索の範囲を細かく指示しなかったことを悔やむ。
グランがいるから適当なところで切り上げて帰ってくるだろう、と彼の高い判断能力に期待して、もう一度ステータス画面を確認することにした。
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嵐山 雅
種族 : 神
職業 : 現人神
称号 : 世界の御柱
HP : EX(限界突破)
MP : EX(限界突破)
STR : EX(限界突破)
AGI : EX(限界突破)
VIT : EX(限界突破)
INT : EX(限界突破)
DEX : EX(限界突破)
LUK : EX(限界突破)
スキル :神の加護
古代精霊術
刀剣無双乱舞
魔眼 (解析・魅了・崩壊)
精神異常耐性 (EX)
魔法創造
言語習得
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アバターネームの「嵐山 雅」は、「雅」だけが本名と同じだ。男性アバターに「雅」とは女性名だが、和名がつけたくてそのまま使った。
名字はたまたまテレビで放送してた旅番組が「嵐山」だったとこからもらった。私のネーミングセンスは短絡的であったが、そのおかげで名付けられた二つ名が『嵐雅』だったのは、単純に格好いいと思えた。
しかし、ほんっとチートだなぁ
オール限界突破ってないわぁ…
そもそもゲーム内のステータスは、レベルが上がる度に付与されるポイントを6つの基本ステータスに割り振る。
ステータスポイントが貯まる度に、初期値1を増加させて99まで割り振れる。EX(限界突破)なんていうのはなかったし、ゲームでは全ステータスをカンストすることは不可能だった。
STRは腕力その他の力に相当するもので、武器もしくは素手の時の物理攻撃力に影響する。STRの値によって威力が大きく左右される。
AGIは素早さに相当する。これを上げると攻撃速度や回避率が上昇がする。
VITは体力に相当している。最大HPが上昇する他、HP回復アイテムの効能が高まったり、スタン・毒・猛毒に対する耐性がつく。また、僅かではあるがダメージ軽減の効果もある。
INTは賢さに相当しており、最大MPが上昇する。MPの回復速度、回復アイテムの効能、魔法攻撃力、魔法に対する防御力も上昇し、精神攻撃に対する耐性がついてくる。
DEXは器用さ、精密性に相当する。命中力が上がる他、これが高いほど武器の扱いに習熟していることになる。
LUKに相当するのは運の良さだ。クリティカルヒットや完全回避などの「偶然」の産物とされている発生確率が上昇する。
一般的には前衛職の剣士等はVITとSTRを、後衛職の魔術師はINTとVIT、弓使い等の遊撃職はAGIやDEXと多少のVITを上げて、パーティーの壊滅を防ぐのだ。
だが、私のソロ戦闘スタイルでは、AGI>DEX=STR>INTとしており、VITとLUKは初期値1のままだった。当然、魔物から高ダメージの攻撃を受けると一発で瀕死、最悪即死になる。
それにも拘らず、高回避率、高攻撃力、高速連撃と精霊使役で、蕀の道を行く鬼人族として廃人認定されていたのは自覚している。
だってだって!
鬼人で無双乱舞はロマンなんだっ!
6つの基本ステータスを元にして二次ステータス(HP、MP)が算出される。
HP (ヒットポイント)生命力を表す。ダメージを受けると減少し、0になるとアバターは倒れてセーブポイントで復活する。俗にいう死に戻りというやつだ。当然、この世界はゲームではないから、セーブポイントで復活などできない。
MP (マジックポイント)魔力を表しており、魔法を使用する際に消費する。これが0になってもアバターが倒れることはないが、魔法が使用不可能になる。精霊を使役する際にもこれを消費する。当然0になれば精霊の召喚ができず、召喚中だと強制送還される。
この二次ステータス、どちらも今の私には0になる心配はいらないと思う。地下の回復聖堂もお世話になることがない気がする。
何せ「限界突破」ですからぁ
む…、ステータス思い出す意味あったのか?
無駄な時間を過ごしたかもしれないことは横に置いといて、スキルについても確認してみる。こちらは初見のスキルが多い。
【神の加護】は、能力上昇や護りを私が恩恵を与えることができるようだ。相手が得られる恩恵は様々なようで、無闇に使うのはやめたほうが良さそうだと思う。
【古代精霊術】は精霊を使役するもので、ゲームの精霊術と同じもののようだ。「古代」と冠されているのが謎ではあるが気にしないことにした。
【刀剣無双乱舞】謂わずもがな、私のロマンスキルだ。多くは語るまい。
【魔眼 (解析・魅了・崩壊)】の解析と魅了はよいが、崩壊は使用を封印すべきだ。対象の精神を崩壊させるなんて、私の精神衛生上危険すぎて使えない。
【精神異常耐性 (EX)】は常時発動だった。感情の起伏はあるので、感情抑制とは違うのだろう。私の無表情《個性》の一助とならないのが残念だ。
【魔法創造】悲願のチートスキルだ。ゲームでは鬼人族の特性上、使いたくても使えなかった魔法を創造って使えるらしい。鬼人族はあらゆる武器の扱いに長けている反面、魔法が使えないという制限があった。魔法でも無双できるかと期待値が上がる。
【言語習得】これはゲームでは誰もがもってる基本スキル。ゲーム内に存在する様々な種族といってもNPCだが、それらと数回会話すると種族言語が習得できるという便利機能だ。
そういや、この世界って言葉が違うのかな?
今まで日本語で喋ってるけど通じないんじゃ…?
うあああぁ!
グランたちに人いたら連れてきてって言っちゃったよ!
あの子たちじゃ会話できないじゃん…
そんな自らの浅慮に落ち込みながら、古代精霊術で使用できる《念話》で呼びかけた。
(誰か聞こえる?)
(はい、主様。聞こえております)
グランが応答すると思っていたら、少し間があってアリアから返事があった。
(いま話しても大丈夫?)
(申し訳ございません、少々、お待ちいただけますか?)
(ん、わかった)
返事に間が生じている。もしかして戦闘中だったのだろうかと心配になりながら、アリアからの念話を待った。無理しないように言い聞かせたから大丈夫だとは思うが、少しの時間が長く感じる。
次に聞こえてきたのはグランの声だった。
(お待たせいたしました、主)
(戦闘中だった?大丈夫?)
(捕獲いたしましたので、大丈夫でございます)
捕獲!?何を!?
まさか話通じないからって人捕まえたの…?
(…誰か人に会ったの?)
(いえ、申し訳ございません。人族と思わしき者には未だ遭遇しておりません)
あ、違うのね
よかったー…
(そんな簡単には会えないと思うからいいよ。そろそろ帰ってこれるかな?いろいろ解って、ウラハの再召喚ができそうなんだけど…)
(ほんとですか!?マスター!すぐ戻ります!!)
ファングの割り込み念話に思わず苦笑する。
グランに怒られるファングを想像しながら、慌てずに帰っておいでと念話を終了させた。
お読みいただき、ありがとうございます。