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THE NEWWORLD  作者: cyan
5/33

5.4人目の精霊はどこ?

「ねぇ、ウラハはどこにいるの?」


一番気になっていたことを訊いた。

ゲーム内では私はNPC精霊をグラン、ファング、アリア、ウラハの4人を使役していた。

その内3人は目の前に実在している。

なぜウラハだけがいないのか。

私の問いに項垂れる3人は力なく首を振る。


「我らがこの場所で意識を持った時には、すでにウラハはおりませんでした。主にもウラハの行方はおわかりになりませんか?」


今度は私が首を横に振る番だった。

ウラハとの契約が切れてしまっているのだろうか。

だが私は契約破棄した覚えがない。

精霊側からの契約破棄も一定条件下でできるが、可能性としては低いと思いたい。


精霊との契約は簡単なクエストでできる。

大抵はランダムで示されるアイテムを渡したり、対戦して強さを示したりするだけだ。

地属性グランは提示された書物を渡す。

火属性ファングは対戦して勝利する。

水属性アリアも提示された宝石を渡す。

風属性ウラハはちょっと笑えたクエストで、鬼ごっこで遊んであげればよかった。


契約だけなら容易いのだが、0〜5まである親密度パラメータを上げないと戦闘時やクエスト攻略時の相談・協力をしてもらえない。

親密度を上げるのは時間がかかるのだ。

精霊を召喚した状態で、一緒に行動する時間によってパラメータが上がるが、親密度(ゼロ)だと追従して歩いてくれない。

どっちが主人なのかって言いたくなるくらい、あっちこっち勝手に動くNPCを追いかけるのだ。

だいたい丸1日頑張ったら親密度が1になって追従するようになる。ここまでは普通の忍耐でできるが、この先で挫折するプレイヤーが増える。

精霊の様々な要望に応えていかなければならないのだ。

要望自体は契約クエストと同じようなもので、アイテムを渡したり、一緒に魔物討伐したりというものだ。

親密度が上がる度に渡すアイテムがレアなものになっていき、討伐対象の魔物も難易度が上がるから、普通は途中で親密度あげを止めてしまう。


パーティープレイをするプレイヤーにとっては、戦闘補助も必要ないので、追従して歩いてくれればペット代わりにすることが多い。

見た目のグラフィックを自分好みにカスタマイズできることもあって、親密度を1だけ上げて連れ歩くのを楽しむプレイヤーがほとんどだ。

しかし、クエスト攻略条件でパーティーが必要な場合以外はソロプレイヤーだった私には、NPC精霊の補助は必要不可欠だった。

もちろんグラフィックも好みの美形に変えて、親密度をMAXまで上げていたから愛着もある。4人の親密度を上げきるのに、ゲーム歴8年のうち約2年も費やしたのだから。


そんなNPC精霊からの契約破棄条件は、親密度が(ゼロ)の時に離れていくのを放置した場合だけだ。

だからウラハからの契約破棄はないと思いたい。

ないとは思いたいが、変な状況になっているだけに、絶対とは言い切れない。


「私がウラハに契約破棄されてる可能性あるかな?」


「それはございません」


あっさり否定してくれたグランが神様に見えた。ありがたいけど、どうしてきっぱり言い切れるのだろうか。

むーっと唸る私にグランは言う。


「いくら主が暫く眠りにつかれた状態だったとはいえ、忠誠を誓った我らが主から離れることはございません。ステータス画面でウラハの状態はどうなっておりますか?」



ん?

今さらっと大事なこと言ったよね?

眠りについてた?暫くってどんくらい?

それよりもステータス画面だと!?



マウスもキーボードもないのに、どうやってステータス画面を確認できるというのか。

答えは簡単だった。頭でステータス、ステータスと考えていたら目の前にディスプレイがあるみたいにでてきた。

ゲームでよく見るあの画面が愉快なことになっていた。




=======================


嵐山あらしやま みやび


種族 : 神

職業 : 現人神

称号 : 世界の御柱


HP : EX(限界突破)

MP : EX(限界突破)


STR : EX(限界突破)

AGI : EX(限界突破)

VIT : EX(限界突破)

INT : EX(限界突破)

DEX : EX(限界突破)

LUK : EX(限界突破)


スキル :神の加護

     古代精霊術

     刀剣無双乱舞

     魔眼 (解析・魅了・崩壊)

     精神異常耐性 (EX)

     魔法創造

     言語習得

    

=======================




なにこれっ!?

全ステータスがEX(限界突破)って!

種族が神?現人神って職業なの??

原型が残ってるのって名前だけじゃん…



こんな出鱈目チートなステータスは見たことも聞いたこともない。レベル表示が消えているのは、限界突破でレベルが意味をなさなくなったからなのか。それくらいしか頭が働かない私は、ステータス画面を見たまま呆然としていた。

いや、全ステータス限界突破ってどこかで見たような気がする。

このステータスが正しいのであれば、ちょっとやそっとじゃ私は死なないと確信した。


それよりも精霊のステータスだ。

スキルの精霊術から使役精霊の状態が確認できたのだが、古代精霊術に変わってるようだ。

意識を【古代精霊術】に向けると、使役精霊リストがでてきたので、ステータスを表示させる。



=======================


グラン《地属性》

(召喚中・ヴェルフィアードの森・神殿)


親密度 : 5

ランク : C


HP : 10896 / 9960(+996)

MP : 6182 / 5620(+562)


スキル :地属性魔法

     獣化

     時間管理


=======================

=======================


ファング《火属性》

(召喚中・ヴェルフィアードの森・神殿)


親密度 : 5

ランク : A


HP : 8811 / 8010(+801)

MP : 4125 / 3750(+375)


スキル :火属性魔法

     獣化

     剣


=======================

=======================


アリア《水属性》

(召喚中・ヴェルフィアードの森・神殿)


親密度 : 5

ランク : D


HP : 2695 / 2450(+245)

MP : 9086 / 8260(+826)


スキル :水属性魔法

     獣化

     支援魔法強化


=======================

=======================


ウラハ《風属性》

(召喚中・■■■■■■)


親密度 : 5

ランク : B


HP : 6193 / 5630(+563)

MP : 5731 / 5210(+521)


スキル :風属性魔法

     獣化

     短剣


=======================



グランたちのステータスが、1ランクずつ上がっており、HP/MPとも1割ずつ補正値がついているのには驚いた。

精霊のステータスにはプレイヤーのように細かいステータスはなく、単純にランクで攻撃力の強さを示す。ランクはプレイヤーでいえばレベルのようなものだが、最高値がAで順に下がって最低値がEの5段階ある。実践で有効なのはC以上とされ、使役したときから変動しないものだった。

低いよりは良いので、ひと先ず考えないことにした。


「契約は切れてない。しかも召喚中になってるけど、居場所が文字化け?ここは"ヴェルフィアードの森"、で神殿?ヴェルフィアード…ヴェルフィアード…どこかで聞いたな…」


「ヴェルフィアードとは、主が眠りにつかれる前に討伐された黒竜のことでございますか?」


ぽむっと私は手を打った。

そうだ、成功報酬の刀剣『黒竜の神魂かもす』が欲しくて、黒竜ヴェルフィアード討伐をしたのだった。

黒竜を倒したところの記憶はある。

そのあと流れていた報酬ログの内容が気にかかったが、今はウラハのことが先だと頭の隅に追いやった。


「ウラハは召喚されているはずだけど、居場所が文字化けしててわからない。バグってありえると思う?」


「モジバケ、バグ、なるものが解らぬ無知な我をお赦しください。どのようなものかお教えいただけませんでしょうか?」



文字化け、バグがわからない?

ステータスは解るのに?

ゲーム内の知識じゃないから?



「アリアとファングも聞いたことない?」


「はい、この2人も存じません」


グランが代わりに返答してきた。

個々で意思を持っているなら、ちゃんと自分で話してもらわないと情報が抜け落ちたり、偏ったりしそうな気がする。


「うーん、グランが代表して話してくれるのは意見がまとまっていいんだけど、今は些細なことも情報として必要だと思うんだよね。それぞれが感覚的にとらえてることも大事だからね。だから、アリアとファングも自分の言葉で話してくれる?」


「「かしこまりました」」


アリアとファングがきれいに揃った返事をした。

グランの気に障ったりしなかったかと、ちらりと覗き見れば目が合ってしまった。気不味くなるかと思ったら、にこりと笑われて、小さく頭を下げてきた。

よく解らないが大丈夫なようだ。


「そういえば、みんなはステータス画面って見れるの?」


揃って「いいえ」と頭を振る。

私のステータスはおろか、自分のステータスも見たりできないらしい。ついでに、なぜステータスという言葉を知っているのかと問えば、「理由等なく当然に持ちうる知識」と答えがあった。

ゲームでの知識に基因しているものなのだろうか。


「ふむ。私にはみんなのステータスが文字で表示されて見えるんだけど、文字化けってのは、その文字が正しく表示されないんだよね。どっかで変になっちゃってる感じ」


イメージがわかないのだろう、考え込む3人に「文字化けとバグは気にしなくていい」と言った。

しかし、これだとウラハがどこに居るかわからない。

ゲーム中ではフィールド移動中にバグって、ステータス画面上は同一マップに居るのに、精霊がロードされない時がある。

そういう時は、送還➡召喚でリロードされる。

一度送還して再召喚してみよう、と私は立ち上がってグランたちから少し距離をとる。


「主?」


「ちょっと試してみるから」


【古代精霊術】の使い方は自然と頭に浮かんでくる。

両腕を体の真横に床と平行に伸ばして、手のひらを外側に向ける。右側に送還魔方陣、左側に召喚魔方陣を展開させる。

本来ならば、これでウラハが再召喚されるはずだが、魔方陣は緑色の光を淡く示しただけで消失してしまった。



むー?

失敗とは違うようなー?

術が無効化されてるっぽい?



まじまじと両手を見て、さっきの術の手応えに悩む。

最悪、別次元のどこかという可能性もあるかもしれない。

もう一度試そうとしたら、ファングが正面に立っていた。頭半分くらい背が高い彼をちょっと見上げる。


「マスター、再召喚の儀を俺で試してみてください」



あ。マスター呼びなのね

一人称「俺」なんだぁ

はい、どうでもいいですね!



「んー。それやって、ファングまでどっか行っちゃわないって保証ないからなぁ」


「大丈夫です。俺は何があってもマスターの下に還ってきます!」


にかっと笑顔で言われて、両手をぐっと握られる。

この「ボクを信じてっ」わんこ攻撃に負けた。微妙な脱力感に襲われつつ、了承の意味を込めてファングの両肩をぽんぽんと叩く。


1歩後ろに下がって、さっきと同様に左右に魔方陣を展開する。魔方陣は赤い色の光を淡く示しただけで、今度も消失してしまった。術の結果は変わらずだったが、ファングが無事なことに胸を撫で下ろす。


「マスター、今の再召喚の儀ですが…」


「うん。無効化されてるみたいな反応だったけど、ファングはどんな感じがした?」


「はい、送還術の干渉はあったので従おうとしたら、体が術を吸収してしまったようです。魔力をいただいた時と感じが似ていました」


「…そう」


ログアウトしてやり直しができない以上、他に方法が思いつかない。

顎に手を当てて、黒竜ヴェルフィアード討伐後の報酬ログが気になったことを思い出す。どこからでもいいから手掛かりがほしい。

私は記憶から引っ張りだしたログの検討に取り掛かることにした。

お読みいただき、ありがとうございます。

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