愚者は二度躍る
クラスに友達がいない私にオカルト研究部の誘いを掛けたこの男は、目を、キラキラという効果音がつきそうな程輝かせていた。
「お願い!籍を入れるだけでもいいから、入ってくんない?」
なんだ。友達がいない私なら籠絡するのはたやすいと思って勧誘したのか、と訝しんだ。
「………どうして俺を誘おうと思ったの?」
値踏みするような目を向け私は師走に踏み込んだ。イエス、ノーで答えられない質問をオープンクエスチョンと言って、回答側に負担がかかる質問だ。更に答えに気を使わなくてはならない場合などは相当神経をすり減らすことだろう。
「俺は一番入ってくれたら面白そうな奴を最後に勧誘しようと決めてたんだ」
「………面白いと思った?」
予想外の答えが返ってきて、ついつい会話を繋げてしまった。思えば、この時から私はヤツの手玉に取られていたのかもしれない。
「主人公の親友役はなるべく友達が少ない方が今後の展開的に良くなるからだ」
先ほどより親しみを込めたトーンで師走はこう切り返した。
………こいつは馬鹿か。しかし、私は自分と思考回路の似ているこの男に興味を抱いた。無論はじめに断りを入れさせて貰うが、男に友情以上のものを求めるつもりはない。こう注釈するのも、のちに我々が2人で行動しすぎてあらぬ噂が流されたからだ。全くもって不愉快である。
「…はぁ。じゃあお前のほかには何人くらい入るの?」
「今のところ奇しくも俺一人だな。四捨五入するとゼロ人だ」
「ということは俺が入ってもゼロ人に変わりは無いと言うことだな」
「そうなるな」
「よし、乗った」
桃源郷に憧れていた私も孤独には少々応えたのである。逃げ場の一つや二つ作って何が悪いか。開き直って何が悪いか。それにしても、二度にも渡って私がオカルト研究部を創ることになるとは。これは運命の悪戯か。はたまた、神の気まぐれか。それに師走が、かつてオカルト研究部を作った私自身を彷彿とさせたというのも承諾した一つの理由だが、何より久々に 面白そうな奴に出会えたのが嬉しかった。
私の思想にも妥協することなく着いてこれるだけの精神力が彼にはあるように思えた。しかし、それが社会に出て役に立ったのかと聞かれると未だ答えを出せずにいる。
「よし、ありがとう。では、部長は俺で良いとして、副部長を任せて良いな?」
「何が『任せて良いな』だ。必然的にそうなるんだろ」
「ははっ、そう言うなよ。じゃあ、取り敢えずこの部活申請願届に署名してくれ」
何はともあれ、こうして私のオカルト研究部副部長としての活動が始まるのであった。
主人公の泉川統は普通に喋る時、一人称は俺ですが、モノローグ内ですと私になります。