Mな彼の心情
彼sideのお話です。
きっと俺は初めて会った時から彼女の事が好きだったんだ。
この気持ちが恋だと知ったのは物心がついた時だが、両親から聞くところによると最初から彼女の事を気に入っていたらしい。
彼女に会うと片時も彼女の傍から離れず、引き離そうとすると泣き喚いて大変だったとか。
俺はそんなこと覚えていない、だって2歳の頃の事だ。
でも、両親や彼女の両親が言うのだから本当の事だろう。
つまり、俺は『恋』を知る前から彼女に恋をしていたわけだ、今では恋しているというより彼女を愛しているけれども。
彼女が聞いたら、ものすごく嫌な顔をされそうだ。
彼女が放つ蔑んだ言葉や的確なポイントをついた蹴り・拳は俺に至高の喜びを与えてくれる。
その嫌悪に満ちた表情を向けられるのも最高に気持ちが良い。
俺は確かにMだが、誰でも良いと言うわけではない。
彼女に限定して虐げられたいだけだ。彼女はそこを誤解している。
もしも、彼女もMだというのなら俺は進んでSになる。
彼女の望むまま、言葉で攻めて縛って。
俺自身の欲望(マゾヒズム的な)を抑えつけ、苦痛を与え彼女を悦ばせる。
性的嗜好とは反対の事を身体で実行する。
・・・なんか、それも逆にM心をくすぐっていいかも。
今度、彼女に頼んでみようかな。
俺のこの想いは何年経っても色褪せることなく、むしろ時が経てば経つほど積もっていく。
彼女には何度も気持ちを伝えているが、少しも伝わっていない。
けど、そんな所も愛しくて仕方がない。
ただ、いつまでも待つだけじゃ、他の誰かに盗られてしまうから―――。
「外堀を埋めて行こうと思うんだ。」
「何なの、唐突に。」
「俺は本気だから、覚悟していてねトウカ。」
「・・・・?」
(よく分からんけど、悪寒がする・・・。)