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"心"を探す旅

 リディル達が旅に出るという情報は、その日のうちに、たちまち街全体に広まった。リディルが街を出ることに喜びを見せる声や、今後の街の心配をする声、あらゆる意見が飛び交った。


「…いいのですか? 言われっぱなしで…」


 ハーティアの屋敷では、リディルが旅支度を整えていた。そんな彼女に、一人のメイドが声をかける。


「いつものことで慣れてるわ…あなたが気にしなくてもいいのよ、キイラ」

「しかし…」


 キイラと呼ばれたメイドは、旅に必要な荷物をまとめながら、腑に落ちない様子でリディルを見つめた。キイラは、ハーティアの屋敷に今いる召使いたちの中でも一番長く仕え、姉妹が生まれた時からずっと二人を見てきたため、どうしても街の住民からの批判に耐えられなかった。


「…心配してくれてるのね…」

「えっ…」

「こんな私のために…」

「…リディル様は、お優しい方ですよ。 ずっと、ラテュル様とお二人を見てきた私だからわかります」

「…ありがとう、キイラ」


 静かな会話の中、リディルはやはり笑わなかった。キイラに対して感謝しているのは見てとれるが、その表情には、はっきりと表れなかった。ふと、その時、部屋の扉が軽くノックされ、外から呼ぶ声が聞こえた。


「リディル」

「! ラテュルね、入って」

「荷物はまとまった?」


 そう言って部屋に入ってきたのは、リディルの一つ上の姉・ラテュルだった。彼女は、表情が表に出ない妹とは反対に、とても自然で柔らかい笑みが印象的な女性だった。


「キイラが手伝ってくれたから…ラテュルの方も終わった?」

「えぇ、もちろんよ。あっ、キイラさん、ありがとうございます。明日からしばらくの間、留守にしてしまいますが…」

「いえ、私は大丈夫です。私たちメイドは、お二人とご主人様、奥様が無事にお戻りになることを祈って待つくらいしかできませんから…お戻りになるまで、いつまでもお待ちしておりますよ」

「ありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです」


 三人の和やかな時間は、あっという間に過ぎていった。明日から、二人の姉妹の長い旅が始まる──…


心を失くした娘の、"心"とは何か、探し求める旅へ…

生まれ育った故郷に、しばらくの別れを告げる…


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