表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/32

6腹黒ネネ

 当初の目的を達成し、二人を救出した一行は、白浜を後にして、一路ネネの私設ラボに向かった。

 途中トラックの窓から悠々と空を泳ぐ、宇宙エイが見えた。

 朝は心が騒めいて、ゆっくり見ることも出来なかった。

 トラック乗っている全員が、今はその雄姿に見惚れる。


「綺麗ね、ウィリアム。」

 バイオレットが、隣のウィリアムに、話かけた。

「ああ、そうだな。」

 ウィリアムは、宇宙エイではなく、バイオレットを見ていた。

 そこは二人の世界だ。


 ネネとミワは、後方にいる大人二人に溜息をつくと、すぐに、自動調理器にデザートのケーキを入れて、解凍した。

 飲み物は、紅茶にミルクをたっぷり入れた、ロイヤルミルクティーだ。

 二人は、飲み物とケーキを食べながら、次回の競技用ライダーのフォルムについて話し合いを始めた。


 俊介と伸は、大学の授業で、どの講義を中心に受講しようかと、二人で相談している。

 ビルは、行きと同じように、救出劇で疲労困憊し、シートをリクライニングして、すでに夢の中だ。


 逆に、海に浸かって、車内に入れなかったジャックは、熱い日差しが照り返す中、軍用ライダーで、ひたすら走っていた。

『くそっ、あつい。まだ私設ラボに着かないのか?』

 そして、心の中は、文句でいっぱいだった。


 数時間後、ジャックが日干しになる前に、なんとか一行は、私設ラボにたどり着いた。

 ネネはカードを操作して、1Fの入り口を開けると、そのままトラックと軍用ライダーを車庫に入れる。

「あっちぃー。」

 ジャックが汗だくで、軍用ライダーから降りる。

 そして、中に入ろうとして、ネネに止められた。

「ちょっと、待って。」

「????」

「その塩分いっぱいの状態で、精密機器がいっぱいの部屋に、入らないで。」

 ネネはそう言うと、カードを操作して、矢印を表示する。

「まず、シャワーを浴びて。」

 ジャックは肩を竦めると、おとなしく矢印に乗って、シャワーを浴びるべく、移動していった。

 ネネは次に、バイオレットを抱きかかえているウィリアムを見た。

「出来れば、バイオレットを休ませて、あげたいんだ。」

「部屋は同じで構わない?今、使える部屋が・・。」

「ああ、同じで大丈夫だ。」

 ウィリアムは、ネネが言い終えるのを待たずに、むしろ喜んで答えた。

 隣でバイオレットが恥ずかしそうに、抱きかかえられている。

 ネネは、二人の前に、青い矢印を出す。

「食事の時は、ドアの前で点滅している矢印を踏めば、食堂に・・・。」

 ネネの説明が終わらないうちに、ウィリアムが遮った。

「分かった。」

 ウィリアムは答えると、バイオレットを抱いたまま、矢印の上に立った。

 矢印が音もなく動いて、二人を運ぶ。


 伸と俊介、ビルの三人は、いつのまにか、車から降りていた。

「俺達は、もう家に帰るよ。」

 ネネは頷くと、赤い矢印を表示した。

 三人は、それに乗って、出口に向かった。


「ミワはどうする。」

「うーん。今更、実家に帰るのもなんだし、泊っていっても、かまわない。」

「大丈夫よ。じゃ、さっきケーキ食べたことだし、トレーニングルームにでも行こうか?」

「助かる。ちょっと体動かしてから、食事にしたかったんだ。」

 二人はトレーニングルームに向かった。

 ナミはジョギングマシーンのスイッチを入れて、軽く走り始めた。

 ネネは椅子に座ると、ペダルを踏み始める。

「ねえ、ナミ。」

「何、ネネ。」

 ミワは軽く走りながら、顔をネネに向けた。

「ジャックと、なにがあったの?」

 あまりに急所を突いた質問に、ミワは思わず、こけそうになった。

「なに、急に・・・。」

 ミワの態度に違和感を感じながら、ネネはそのまま質問を続けた。

「なんで、そんなにあわてるの?ただ単に、ジャックを海に、突き落とした理由を、知りたかっただけよ。」

「ああ、そっちのこと。」

 ミワはホッとした。

『ネネが、バルコニーでの出来事を知るわけないのに、何慌ててるんだろ私。』

「でっ。」

 ネネがせっついて来た。

「簡単よ。胸が小さいって、馬鹿にされたから、ちょっと頭来て、海に突き落としただけ。」

「へぇー、ジャックって、やっぱり噂通り、巨乳好きなんだ。」

「見たいね。」

 なんでか、頭にきたミワは、つっけんどんに同意する。

「いいこと聞いたわ。それじゃ、やっぱり噂は本当かも。」

 ネネはペダルを踏むのを止めると、器具が置いてある脇のコンソールに行くと、電源を入れた。

 すぐに電源が入り、何かのスクリーンが立ち上げる。

「どうしたの、ネネ。」

 走りながら、ミワがネネの立ち上げた画面を見た。

「ねえ、ミワ。今年、卒業したユニバのチアリーダーの名前知ってる?」

「えっ、チア・・。」

 ミワは走るのを止めて、マシーンを降りると、タオルをとって、汗を拭く。

「確かリンダ・マクナリーで、トムのお姉さんだったと思うけど。」

「フーン。なるほど。」

 ネネは、黒い笑みを浮かべた。

『げっ、この笑顔。ネネが何か、悪いことを思いついた時のもの。ジャック、一体、ネネに何やったの。』

 ミワが呆気にとられて見ていると、スクリーンが、次々に変わり、最後に、濃厚な男女のSEXシーンが映し出された。

「なにこれ???」

 あまりのどぎつさに、思わずのけぞる。

 その時、なんでかジャックが、ドアを開けて、中に入ってきた。

 すぐに画面に気がついて、怒鳴りはじめる。

「お前たち、なんでこんなもん、見てるんだ。今すぐ消せ!!!」

「でも、これ個人のフォルダだし。」

 ネネがすかさず、答える。

「なんだと、個人のフォルダだと。」

 なんでか、ジャックが、烈火のごとく怒っている。

 不思議に思って、よーく見ると、なんと、このどぎついポルノもどきの男は、ジャックだった。

「ええーーうそーー。」

 ミワは思わず声を上げていた。


 ジャックが真っ赤になって、ネネに懇願している。

「頼むから、消してくれ。」

「どっちを消せばいいのかしら。今写っているスクリーンから、それとも、この画像を持っている相手のフォルダから?」

「おい、相手のフォルダから、これを消せるのか?」

「ええ、出来るわ。ただし、私の要求を飲んでくれるなら。」

 ネネが意地悪く笑う。

「どんなことだ?」

『すごい。わたしだったら、なんでも聞くから消してって、土下座するのに、ジャックは、一応、ネネの要求を確かめるんだ。』


「今回の婚約話をジャック側から、断って欲しいの。」

『へっ、婚約って、ネネとジャックは婚約してるの!!!』

 ミワの胸がちくっと痛んだ。

『なんでそんなことで、ショックをうけるのよ、私。』


 ミワが自分の気持ちに焦っていると、ジャックが即座にネネの要求に返答した。

「そんなことで、いいのか?」

 意外に簡単な要求に、ジャックが驚いている。

「ええ、婚約(・・)だけを断ってほしいの。共同研究はそのままでね。」

「なるほど、そういうことか。」

 ジャックは、納得して頷いた。

「双方が平等に、研究できるように、少しだけ、そっちに情報を流そう。これでどうだ。」

 ネネはニヤリとすると、キーをクリックした。

 画面の映像が虫くい穴になり、消えていく。

「まだ、情報を流してないのに、いいのか消して?」

「まだコピーの1部が、ここのメモリーにあるわ。ジャックからの情報を確認次第、これも消す。

 ちなみに今ので、リンダ・マクナリーが持ってた、全部の情報が虫くいでなくなったわよ。」

「なんで全部消したんだ?」

「1部を消すより、簡単だからよ。それに1部だけだと、いかにもって感じでしょ。

 全部壊れたなら、人間仕方ないって思うものよ。」

「わかった。だがさすがに、情報は平等になるまでしか、流せん。」

「わかってるわ。後でまた、必要になれば、請求する。」

「怖いなぁー、そりゃ。」

 ジャックはそう言うと、了承だと頷いた。

「ナミ。」


 ネネがナミを見た。

「私は今、とっても空腹で、それ以外、何も知らない。」

 ミワは暗に、今聞いたことは、何も言わないと示唆した。

 ネネはニッコリ笑うと、

「じゃ、食堂に行こうか。」

 三人はネネの出した矢印に乗って、食堂に向かった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ