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5宇宙エイ

 上階にある機材運搬用トラックに、競技用ライダーを積むと、寝ぼけ眼で合流したビルを乗せ、一路一行は、東海岸にある白浜を目指した。


 ビルは朝が弱いらしく、後ろの座席に座ると、すぐに眠ってしまった。

 俊介と伸も、走り出してから、もう一度、ライダーの固定を確認すると、

「ネネ、俺達も少し寝るわ。」

 の一言を残して、後部座席に行き、シートをリクライニングすると、寝てしまう。

 ネネとミワは、前の座席を前後にすると、温めてあったトレーを、簡易テーブルの上に出し、食事を始めた。

 朝なので、香ばしい焼きたてのパンとふんわり焼き上がった卵だ。

 何度も言うようだが、インスタントとは思えない味だ。

 焼きたてで、とてもおいしい。

「ねえ、ミワ。そろそろ、教えて欲しいんだけど。どうやって、推進機関も使わずに、外宇宙に行く気なの。」

 ネネの疑問も、もっともだ。

 だが、ミワはネネの質問に、質問でかえした。

「ねえ、ネネ。なんで宇宙エイは、推進機関がないのに、この国の海岸に、姿を現せると思う。」

「なに、ここまで来て、私をけむにまこうとしてない?」

 ネネがムッとしている。

「そうじゃなくて。専門家の推測が、自然に出来た、次元の穴を感知してるんじゃないかっていう説、知ってるでしょ。」

「たんなる推測なら、私も情報端末で見て、知っているわ。でも今まで、誰もそれを、証明出来なかったのよ。」

 ネネは半信半疑で、ミワの説明を聞いている。

「まさか、ミワはその次元の穴が、東海岸の白浜にあるとか、言うんじゃないでしょうね。」

 ミワは、黙ってうなずいた。

「ちょっと、待ってちょうだい。じゃ、何で今まで、だれも見つけられなかったの。」

 ミワは、ネネの当然の質問に、真顔で答えた。

「センサーで見つけようとしてたからよ。」

「ハッ、何言ってるの、次元の穴をセンサーじゃなくて、何で見つけられるっていうの。」

 ネネの呆れかえった顔に、ミワはまじめな顔で答えた。

「風船で。」

「ふうせんって・・。」

 ネネは絶句してる。

「昔、流行った、宇宙風船って、覚えてる?」

 ミワの質問に、ネネは呆れながらも答える。

「ええ、もちろん、覚えてるわ。

 宇宙に飛ばしても、数十分は、膨らんだままでいる風船って、有名だった。

 今は環境対策で作られなくなったけど、小さいときは、良く飛ばしたわ。

 それを追尾型映像機で追って、宇宙まで飛んで行くのを、よく見たのを、憶えてる。」

 ネネはハッとした。

「偶然なんだ。

 たまたま、小さい時、私の手を離れて、飛んで行った風船が、宇宙エイの体に引っかかって、そのまま次元の穴を通って、外宇宙に出たの。」

「なんで、今まで、そのことを言わなかった・・・。」

 ネネは、ミワが言わなかった意味に気がついた。

 それが知られれば、推進機関を使わずに、外宇宙に出られるのだ。

 あっという間に、その次元は、外宇宙用のステーション用に開発されてしまう。

 ちなみに、ネネの父親が開発する、推進機関の一部が必要なくなる、かもしれない。

「ネネが、心配するほど、大きな穴じゃないと思うし、次元の穴も、常時、開いてるわけじゃない。」

「どうして、そう断定できるの?」

「宇宙エイの、飛来時期が、一定じゃないから。」

「そう言えば、毎年来るわけじゃないわね。」

「うん、数百年に一回の時もある。」

『なるほど、定時で開いていなければ、ステーションとしては、成り立たない。』

「わかったわ。」

 ネネは、それ以上、ミワに質問しなかった。

 そして、食事を終えると、

「動いていないのに、食べてすぐ寝るのは、ダイエット上、良くないけど、疲れたから、少し休むわ。ミワは、どうする。」

 ネネは、シートを倒しながら、声をかけてくれた。

「私は、朝までネネのお蔭で爆睡出来たから、大丈夫だよ。」

「そう、じゃ、おやすみ。」

 ネネはそう言うと、シートを水平にすると、バイザーを降ろし、寝たようだ。

 ミワはそのまま、窓外の景色を眺める。

 太陽が昇ってきて、周りを明るく照らす。

 バイオレットとジャックの公開処刑の日時が、刻々と近づいていた。

 一時間後、無事に車は、白浜に到着した。

 仮眠をとって、大分元気になった、俊介と伸が、降ろした競技用ライダーの微調整をしている。

 その後、なぜかネネが、もう一台、別のライダーを降ろした。

「ネネ、それは?」

 ネネはニヤリと笑うと、

「軍に納入予定の軍用ライダー。まだ武器は装備してないけど、馬力なら競技用の約3倍はあるわ。」

 遅れて到着した、ウィリアムに向け、ネネが話す。

「さすが、大塚のご令嬢は、話がわかる。」

「もちろん、これは大塚からの貸しですから。無料じゃありません。」

「成功した暁には、軍に正規採用されるように、働きかけろですか。」

 ネネはウィリアムの問いに、ニッコリ笑って、何も言わなかった。

 ミワは、ネネの怖さをここに見た。

『さすが、一流と言われる大塚の令嬢。 ここで何も言わないで、相手にもっと動けって、無言の重圧かけるなんて、すごい。』

 ウィリアムは引き攣った顔で、うなずいた。

「成功した暁には、誠心誠意の対応をとらせて、いただきます。」

 ウィリアムはそう言うと、軍用ライダーにまたがった。

「なあ、ミワ。お義兄さんが来て、軍用ライダーがある以上、俺も俺のライダーも必要なのか?」

「大丈夫。もうビルは、突入組に参加、確約済みだから。」

 ネネが断定する。

「おい、なんでそうなる。」

 ビルが不服だと抗議した。

「不服なら、改造費を支払って、ちょうだい。」

 ネネが真顔で答えた。

「なっ、勝手に改造したのに、なんでそうなる。」

 ビルが不満タラタラに愚痴ろうとすると、ネネはポケットから出した見積明細をカード上に出して見せた。

 一瞬無言になり、その画面をじっと凝視した。

 ビルは、次の瞬間には観念した声で、

「一緒に行かせて、いただきます。」

 と丁寧に答えていた。

 もうどうにでもなれという心境のビルは、さっきから何やら、ごそごそとやっている、ミワに声をかけた。

「ミワ。どうやって、突入箇所を割り出すんだ。」

 ミワは、持って来たリュックから、風船を出すと、ふくらませて、極小タイプの位置情報機器を取り付けると、それを同じく、カバンから出した銃に装填する。

「おい、ミワ。」

 二度ほどの声掛けにも、ミワは、返事をしない。

 ミワは、銃を構えながら、遊泳しているエイの群れを見ている。

『いた、伴侶獲得から落ちこぼれた雄だ。』

 ミワはそのエイに狙いを定めると、銃の引き金をひいた。

 短銃から発射された、風船は真っ直ぐに、ミワが狙ったエイの尾に引っ付いた。

 一瞬、尾を気にした、そぶりを見せたが、すぐにその辺りを遊泳後、いきなり消えた。

 ミワは、カードを見て送られてきた、送信記録から突入地点を3台のライダーに送った。

「この地点から突入する。」

 ビルはあまりに古典的な、突入地点割り出しに、両手を上げた。

「了解。」

 ビルは自分の競技用ライダーにまたがった。

 直ぐに、宇宙用のヘルメットをかぶり、スーツの首元を確認する。

 ミワ、ウィリアムも同じようにヘルメットをかぶり、スーツの首元を確認した。

 ライダー点検を終えた、俊介と伸、ネネが三人のヘルメットとスーツの首元をもう一度確認する。

 確認し終えた三人が、それぞれゴーサインを出した。

 浮上しようとしたところで、ネネから通信が届いた。

『使わないと思うけど、ライダー横の収納ホルダーに念の為、軍用のライフルを、入れておいたから。』

 ネネはそうメッセージを入れると、三台のライダーから離れた。

 親指を立てて、幸運を祈ってくれる。

 ミワは頷くと、突入地点に向かった。

『突入。』

『『了解。』』

 二人からヘルメットを通して、返事が来た。

 ミワはそれを聞いたと同時に、その地点に、ライダーを突っ込んだ。

 一瞬ふわっとすると、次の瞬間には、風の流れのようなものに乗っていた。

 景色が見える訳ではないのに、流されていくような感覚が続く。

 もしかして、失敗したのではと、不安を感じた頃、フワッとした浮遊感に、外宇宙に出たことを確信した。

『うそだろ。本当に外宇宙に着いたのか。』

 ビルが、ミワの真後ろで喚いている。

『どうやら、間に合いそうだ。』

 ウィリアムが軍用ライダーに取り付けられた、情報端末を使って、公開処刑地点を割り出したようだ。

『ここから、真っ直ぐだ。』

 幸いなことに、岩がある流星群に、放り投げるようだ。

 豪華客船から出す以上、人間に何も着せずに、放り出せば、人工知能が拒否反応を起こす。

 とはいえ、助けたいわけじゃないから、たいして酸素もない状態で、放り出すだろう。

 だから、投げられたと、同時に救出しないと、酸素がなくなり、救出が間に合わなくなる。

『ビル。』

 ミワがビルに話しかけた。

『わかってる。俺がその岩場から二人を救出している間、ライフルで援護する。』

『待て、射撃なら俺が。』

 ウィリアムが、軍用ライフルで、援護しようとしているビルを、心配して、名乗り出た。

 ミワは、それを止めた。

『義兄さん、義兄さんのライダーはこっちの二台より、ゆうに三倍は馬力が出る。

 いうなれば、速さも三倍。だから、なにかあっても、ビルと私が二台でいくより、いろいろな対処がしやすいと思う。』

 ウィリアムは、ミワの意見にうなずいた。

『わかった。じゃ、俺がジャックを拾うから、ミワはバイオレットを拾ってくれ。』

『了解。』

 ミワは頷くと、豪華客船から感知されないギリギリの地点まで進む。

 ウィリアムも、同じように、豪華客船から感知されないギリギリの地点まで進んだ。

 ビルは、それよりも遠い地点で、ライダーを岩陰に停止すると、そこで、ライフルを構えた。

 それぞれが位置について、直ぐに、豪華客船から、何かが放出された。

 それも当時に、真逆に投げ出される。

『ミワは、近い方を拾ってくれ。』

 ウィリアムはそう言うと、自分達から、かなり離れた地点に、放り出された人物にむけ、ライダーを加速させた。

 ミワはウィリアムの言葉に、頷くと、近くに投げ出された人物に、ライダーを近づけ拾う。

 宇宙空間なので、重さがなくて助かった。

 あっという間に引き寄せると、ネネから事前、渡されていたベルトで、その人物と自分を繋ぐと、ビルがいる方に、戻ろうとした。

 その時、豪華客船から砲撃が始まった。

 白いエネルギーの塊が、遥か彼方を通り過ぎる。

 どうやら、ライダーが小さすぎて、ねらえないようだ。

 とはいえ、グダグダして、あたったら、たまらない。

 ミワは慌てて、ビルの方に向かう。

 ビルは、豪華客船のセンサーを狙って、何発かライフルを打っているようだが、効果はない。

 ここはさっさと退散するのが、一番だ。

『義兄さん。』

『かまわないから、先に行ってくれ。』

 ウィリアムの言葉に、ミワはライダーを、突出地点に逆に突っ込んだ。

 ビルはミワが、ライダーで戻って行くのを見ながら、ダメもとで、残っている銃弾を全て打ち尽くした。

 そのうちの何発かが運よく、船体のセンサーを掠めたようで、一端砲撃がやんだ。

 ビルはライフルをホルダーに戻すと、ミワが突入した地点に向かった。

 その時、直ぐ後ろから、ウィリアムがすごいスピードで追いついて来る。

 ビルはそれを、ヘルメット越しに確認すると、そのまま次元の穴に突入した。

 ウィリアムは、馬力を生かして、ビルと数分差で突入する。

 ミワは、一番最初に次元の穴を通って戻ってきた。

 とたん、後ろの人物から、うめき声が聞こえた。

 酸素がないようだ。

 ミワはベルトを外すと、後ろを振り向いて、ジャックのヘルメットをむしり取った。


 ゼーハァ ゼーハァ ゼーハァ ゼーハァ ゼーハァ


 ジャックが、土気色の顔で呼吸を紡ぐ。

 ミワは、ジャックを後ろに乗せたまま、地上に降下していく。

 数分後に、後ろにビルとウィリアムの後続ライダーが、戻ったのをセンサーで確認する。

 どうやらみんなケガもなく、無事なようだ。

 後ろで、ウィリアムがバイオレットのヘルメットをむしり取っている。


「はぁーー。天国は空気がきれいだなぁーー。でも、なんでライダーで出迎えなんだ。巨乳が俺の好みなんだが、なんで俺のお迎えは貧乳なんだ。」

 ジャックが、ミワの胸を両手で、揉みながら愚痴る。

 ミワの思考は、怒りで真っ赤に染まった。

 ライダーのアクセルをめーいっぱい握ると、そのままジャックを振り落して、白浜に戻った。

 真下で豪快な水しぶきが上がった。


 一方、白浜で待つ、俊介、伸、ネネの前に、三人の姿は、突入後、一時間くらいで戻ってきた。

「おい、戻って来たようだぞ。」

 俊介が突入地点を見て、声を上げた。

「本当か?人数はどうだ。」

 伸がセンサー望遠鏡を覗いていた、俊介に聞く。

「三人+二名だ。みんな無事なようだ。」

 俊介が答え、車の外に出た。

「成功ね。」

 ネネも俊介の後に続いて、外に出る。

 二人が目視出来る地点に、ミワが現れると同時に、ミワのライダーからジャックが落ちた。

 大きな水柱が上がり、慌てて、浮き上がってくるジャックが見えた。

「「なんで落ちたの?」」

 二人が声を揃えて、戻ってきたミワに聞くと、

「知らないわ。」

 ミワは真っ赤になって怒って、答えた。

『『何があったんだ。』』

 二人が疑問に思っていると、ビルを追い抜いて、ウィリアムが降りてきた。

 見ると、バイオレットが土気色の顔で、ぐったりしている。

「救急キットを持って来て。」

 ネネの声に、伸が車内から救急キットを持って降りてきた。

 ネネは、電源を入れ、バイオレットにマスクをする。

 隣では首元と胸をはだけて、伸がセンサーをとりつけている。

 すぐに、コンソール画面から流れてくる文字を拾い、ネネが俊介と伸に命令する。

「2番と6番の薬を出して、首元に打って!同時じゃなく、2番がさきよ。」

 伸が2番の注射器をキットから出して、俊介に渡す。

 俊介はバイオレットの首元に2番と、その次に6番の注射をした。

 注射後、徐々にだが、バイオレットの顔色が戻ってきた。

「バイオレット。」

 心配そうに、覗き込むウィリアムを制止しながら、ネネがコンソール画面を注視する。

 20分後、心肺機能、心電図...etcの数値が全て、正常に戻ったのを確認して、ネネがマスクと取り付けたセンサーを外した。

 マスクを外して、自分で息をしているバイオレットにネネが聞く。

「気分は?」

「お陰様で、もう胸も苦しくないわ。」

 そう言うと、起き上がろうとした。

 ネネは、起き上がろうとするバイオレットを制すると、

「一応、後10分は、そのままでいて。その後、起き上がっても苦しくないなら、動いてもいいわ。」

「了解、ドクターネネ。」

 バイオレットは、いつもより弱弱しい笑みで応えた。

「大丈夫か、バイオレット。」

 我慢出来なくなったウィリアムが、バイオレット以上に、顔色の良くない顔で問いかける。

「ええ、ウィリアムのおかげで、命拾いしたわ。」

 バイオレットが、ウィリアムの頬を撫でた。

 ウィリアムが彼女の手を取って、安心したように、ぎゅっと握る。

「バイオレット、良かった。」

 ウィリアムが、バイオレットを自分の胸に抱き上げて、ギュッと抱きしめる。

「ウィリアム!!!」

 二人が周りを無視して、いいムードになった所に、ちょうど、ジャックがミワに突き落とされた地点から、泳いで海岸に辿り着いた。

「おい、ミワ。酷いじゃないか!!俺は本当の事をだな・・・。」

 ジャックが浜辺に泳ぎ着いたと同時に、文句を言う。

「何ですって、何がほ・ん・と・うのことですって!!」

 ミワがジロリとジャックを睨み付ける。

「いや、なに・・・えっと・・。」

 ジャックがミワの胸のあたりを見たことで、ビル、俊介、伸には、なぜジャックが突き落とされたのか理解した。

 バシィ ビチャ

 ミワが海水で汚れたジャックに、びしょびしょのタオルを投げた。

 ジャックは、それを受け取ると、黙って水気を絞って、体を拭いた。


 ウィリアムとバイオレットは、二人のこのやり取りに、ある意味いいムードをぶち壊された。

 とはいえ、今の二人の会話が逆に、みんなの緊張を和ませた。


「連絡、おわりっと。」

 ネネがいつの間にか、二人の救出の件を、ジャームズとノリンに、知らせてくれたようだ。


 すぐに、ウィリアムのカードに、将軍ジェームズから連絡が入る。

「父さん。」

「本当に、バイオレットとジャックを救出したのか?」

「ええ、今バイオレットに代わります。」

「待て、こっちも代わる。」

 ウィリアムがバイオレットに、自分のカードを渡した、途端、カードからノリンの声が聞こえた。

「バイオレット、本当に、そこにいるの?バイオレット!!!」

「うん、ここにいるよ、母さん。」

 バイオレットが、涙ぐんで答える。

「ああ、神よ。ありがとうございます。」

 ノリンが神に感謝の祈りを捧げた。

「けがはしてない、バイオレット?」

 ノリンが心配そうに、聞いてくる。

「大丈夫、怪我もしてない。」

 バイオレットが、ウィリアムに支えられながら、起き上がると、しっかり答えた。

「そう、よかった。本当に良かった。」

「母さん。」

「わかってるわ、バイオレット。あなたたちが無事なんですもの。

 天気は後、数時間で回復するから、残りの人たちも、すぐに解放させるわ。」

 ウィリアムがバイオレットからカードを取り上げると、

「バイオレットの事は、僕が面倒見ますから、任せて下さい。」

「わかったわ、ウィリアム。よろしくね。」

 ノリンは、そう言うと、通話を切った。

「行こう。」

 ウィリアムがバイオレットを抱き上げて、車に運ぶ。

 俊介、伸、ビルの三人は、その間に、競技用ライダーをトラックに運び込んだ。

 なぜか軍用ライダーだけ、外に放置されている。

 ウィリアムが慌てて、キーをネネに返した。

 ネネがそれを、ジャックに渡す。

 ジャックがキョトンとして、そのキーを受け取った。

「じゃ、それを運転して、トラックの後について来て。」

「はぁーーー。なんで??」

「申し訳ないんだけど、ジャック。」

 ネネがジャックの全身は見た。

「その格好で、車内に入られると、中の精密機器が、塩分で壊れるかもしれないから。だから、私の私設ラボまで、その軍用ライダーで、ついて来て頂戴。」

 ミワはネネの言葉をしたり顔で聞いていた。

『天罰よ』

「そんな殺生な。」

 熱い浜辺に、ジャックの情けない声が響いた。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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