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27辺境惑星からの脱出(3)

 ミワたちが複葉機で、青い山脈の頂上を目指している、ちょうどその時、大とジャックは、回遊魚のマグロと一緒に、辺境惑星に入っていた。


 くそっ、なんて水圧だ。

 ちょっとでも油断したら、一緒に泳いでいる、マグロたちに、潰されそうだ。

 チラッと前方の黒いライダーを見た。

 ミワの実父である大は、安定感のある動きで、ライダーを操っていた。


 この間のレースでは、結局、決着をつけることは、出来なかった。

 ジャックとしては、若さも体力もあるので、かなり圧倒出来ると思って、挑んだのだが、結果は、引き分けとなった。

 つまり、同じような体力と若さだったら、自分の方が負けていたということだ。

 かなりショックを受けた。

 それと同時に、この機会に是非とも、噂の伝説のライダーの技術を盗もうと、救出作戦が決行されるまで、ほぼ、毎日彼と試合をした。

 試合をするたびに、引き分けとなり、彼の相棒と言われる伝説の整備士、広明さんに、データを渡される。

 渡されるときは、いつもコーナーの攻めが甘いとか、力任せにライダーを押さえつけるなとか、必ず一言、釘を刺された。

 自分でも、自覚しているので、かなり耳に痛かった。

 なので、その後、こっそり夜中に、時空間の試運転場を使って、練習していた。


 それでも、思った成果の出ないまま、救出作戦、当日になってしまった。


 そして、現在、目の前に、黒いライダーがいた。


 ジャックは、前方を意識しながら、ふと意識を外に向ける。


 そろそろ、惑星内に入る頃だ。


 少しずつ、水流にかかる圧力が、前より下方向かって、だんだんと強くなってくる。

 見ると、ライダーの計器が、赤い点滅を始めた。


 前にいた大のライダが動いた。


 ジャックも同じように、水流から離れる為、下方向に、ライダーを向けた。

 ウヨウヨいるマグロを避けながら、水流から出る。


 途端、強い重力に引きずられて、失速しそうになるのを、エンジンを吹かして、その場に、留まると、青い山脈を捜した。


 運がいいことに眼下がその山だった。

 ゆっくりと、頂上に降りる。


 降りてふと見ると、ミワがジャックに、駆け寄ってくるところだった。


「ミワ!」


「ジャック!」

 ミワは迷わず、ジャックの腕の中に、飛び込んで来てくれた。


「うえーん、寒い。」


 見ると、ほぼ真夏の洋服で、震えている。


 ジャックは、慌てて、持ってきた、宇宙服を渡した。


 ミワは、震えながら、ジャックから服を受け取ると、大慌てでそれを着こんだ。

「助かったぁ。救出される前に、凍死するかと思った。」

 ミワは着込んで、人ごごち着いたので、ほっと息を吐いた。


「ミワ、メットだ。」

 ジャックが、宇宙服のヘルメットを出してくれた。


 受け取ろうと近づくと、彼にグイッと手を引かれ、抱きかかえられると、そのまま口づけられた。

 思わず目を、白黒させてしまった。


「よかった・・・、本当に。」

 ジャックは、強く抱きしめながら、そう呟いた。


「心配させて、ごめんなさい。」

 ミワも抱き返しながら、謝った。


「先輩、いい加減に、俺にも宇宙服をください。寒さで、死にそうです。」

 ヨウの声に、大はぼふっと宇宙服を投げた。


「なに不貞腐れて、いるんですか?恋人との再会なんて、あんなものですよ。」

 ヨウは素早く宇宙服を着込むと、大に手を差し出す。


「くそ、なんでジャックなんだ?」

 ヨウは、メットを装着すると、通信をオンにした。


「なにか知りませんが・・・。あれ、キスして、抱き合ってますね。」


「なんだと、あいつ。戻ったら、殺す。」

 何を怒っているのか、わからない大の後ろに、ヨウが乗った。


「おい、なんで、こっちに乗るんだ?」

 大は、ヨウを蹴り落そうとした。


「何でって、向こうはもう、飛び上がってるからです。」


「くそ、くそ、くそっ。俺はお前を、助けに来たわけじゃない。」

 大は、悪態をつきながら、乱暴に飛び上がった。


 思わず、後ろに乗っていたヨウは、振り落とされない様に、大にしがみ付いた。

「なんで俺にしがみ付くんだ、ヨウ?」


「何でって、落ちそうだったからですよ。」

 ヨウの言い訳が、聞こえたのかどうか。

 大は、その後は普通に上昇すると、そのまま宇宙海流に向かった。


「掴まって、ミワ!」

 ジャックは、そう言うと、白く濁る海流に、並ぶようにライダーを突っ込んだ。

 ミワの視界が真っ白になる。


「えっ、ちょっと、先輩まさか、あの海流に突っ込むんですか?うそでしょ。俺、先輩と心中はしたくありません。」


「俺だって、手前なんかとは、お断りだ。死にたくなけりゃ、黙ってろ。」

 大も、ジャックの後から、白く濁る海流に、並ぶように、ライダーを突っ込んだ。


 二台はあっと言う間に、流れに乗ると、グングン宇宙に向け上っていった。

 数分か、はたまた数時間か。


 時間の感覚が、あやふやになった頃、ジャックと大の操るライダーが、海流から抜け出した。


 フワッと圧力が消えて、ミワは目を見開く。

 それまでは、必死にジャックの体にしがみ付いていた。


 ふと目の前を見ると、そこには大きな宇宙船があった。

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