21作戦開始
ノリンは、早速ボサノバをレイラの舞台に招待した。
もちろん、直接ではなく、人を介して、そこに行くように仕向けた。
そして、その後、ばったり軍の私設で、偶然出会ったように見せかけて、レイラに私からの花束を届けるという用事を作ってやった。
逆に、夫である将軍のジェームズには、レイラに会いに行けない様に、仕事をギッチギッチに入れてあるので、万が一にも彼女の邪魔はさせないように仕組んだ。
ボサノバは、表面上は面倒くさそうに、内心では小躍りせんばかりの勢いで、ノリンの手から花束を受け取ると、去って行った。
ノリンは、ボサノバの姿が見えなくなった所で、レイラに連絡を入れる。
「わかったわ。ボサノバが舞台が終わった後に、私の所に花束を持って現れるのね。」
レイラからの電話は、それで終わった。
ノリンは、一応、執務に励んでいるであろうジェームズを見張りに、その場から背を向けると、将軍の部屋に急いで向かった。
予想した通り、将軍は、今まさに、部屋から逃げ出そうとしているところだった。
「どちらに、お出かけですか? 将軍。」
ノリンは、ジェームズに、死角から声をかけた。
「ノリン、いや、これはだな・・・。」
ノリンは、そのまま机まで、再度ジェームズを追い詰めると、さらに、そこに書類の束をのせた。
「なんで、また書類が増えるんだ?」
ジェームズの質問に、ノリンは、いい笑顔でニッコリ微笑むと、一言。
「義娘の為に、頑張るのは、父親の務めです。」
ジェームズは、何か言おうとして、口を開け、ニッコリ微笑んでいるノリンを見て、何も言わずに、また席に着くと、黙々と書類を片付け始めた。
一方、レイラは、ノリンから連絡を貰い、今は舞台を終え、花束を持って楽屋に現れるだろうボサノバを待ち構えていた。
しばらくすると、楽屋のドアが叩かれた。
「どうぞ。」
レイラには、舞台の幕が上がるのが感じられた。
「レイラ!本当に素晴らしい舞台でしたよ。」
ボサノバが、ノリンから、貰った花束を抱えて、そこに立っていた。
「まあ、うれしい。私の大好きなお花をいただけるなんて!」
レイラは、花の香りを吸い込むと、顔を上げながら、妖艶な微笑みを浮かべて、ボサノバを見た。
ボサノバは、レイラの笑みに見惚れて、顔を真っ赤にしている。
「よ・・・よろしければ、しょ・・・食事でも、いかがですか?」
ボサノバは、噛みながらも、なんとかセリフを言いきった。
「まあ、うれしいわ。ありがとう!」
レイラの妖艶な微笑みで、ボサノバは、天にも登る気持ちになった。
俺はなんて、ラッキーなんだ。
あの大女優のレイラに、微笑まれているなんて。
レイラは、楽屋にいた助手に、花束を渡すと、ボサノバの腕に縋りついた。
「レイラ!」
ボサノバの腕にレイラの巨乳が、柔らかく押し付けられた。
「さあ、行きましょう。」
ボサノバは、真っ赤になりながら、自分が乗ってきた高級車に、彼女を連れていった。
車は、大劇場から、それほど離れていない高級レストランを目指した。
街灯の淡い光が、舞台の時以上に、レイラを神秘的に輝かせていた。
ボサノバは、そんなレイラを見ながら、幸運な自分に、内心、大喜びしていた。
程なくして、高級レストランに着くと、彼はサッと彼女に手を差し出した。
彼女の美しい手が、彼の手に添えられる。
「ありがとう、ボサノバ。」
彼女の赤い唇から、彼の名前が紬出された。
レイラは、うっとり自分に見とれているボサノバの手を取ると、席から立ち上がって、すかさず、彼の腕に縋りついた。
そして、自分の豊満な体を彼に近づける。
うっという呻き声と共に、レイラが縋った手に、ボサノバの手が重ねられた。
「ありがとう。じゃ、行きましょうか。」
二人は、黒服の執事によって、押さえられているレストランの扉をくぐった。




