19ノリンの暗躍
レイラの娘であるミワが辺境惑星にいる。
それもノリンが連れて来てしまった、新人君のせいでだ。
ノリンは深く後悔した。
大に書類を突き付けられた時は、本当に自分はもう駄目だと思った。
でも、また昔のように、弘明が助けに、駆けつけてくれた。
何年も前に別れたというのに。
ノリンの目に、涙が浮かんだ。
気を抜くと、そのまま床に頽れそうだった。
弘明は、ノリンの気が済むまで、ぎゅっと抱きしめてくれた。
今は落ち着きを取り戻して、弘明の要望通り、捕虜交換を十日後まで、引き延ばす為に、軍の中枢に位置するメインコンピュター室に来ていた。
ここで、ありとあらゆる手を使うためにも、相手の情報元を探るため、先程ネネから貰った人物の対象リストと、その弱みをそれぞれリストアップする。
まずは味方側の人物を確認すると、本当にそうそうたるメンバーだ。
彼らのしたいことは、一番に自分たち戦争反対派の弱体化だ。
なら、私たちが困るとなれば、人質交換を引き延ばすのは、簡単だろう。
次は、敵側のメンバーだが、彼らも、とにもかくにも、すぐに開戦したいはずだ。
それには、とっとと人質を解放して、戦争を始めれば、いいだけだ。
でも、こちら側としては、はっきり言って、それは困る。
そうならないようにするためには、逆に、一週間で人質を解放出来ると、こちらからパフォーマンスするのが、一番だ。
例えば、一週間で解放されるという前提を相手と話し合う前に、こちらが決めてしまえばどうなるか。
相手は面白くないだろうが、だまっているだろう。
だがこれでは、解放時間を伸ばしたい、こちらの思惑から外れる。
だからと言って、次に、相手と戦うなんて、それこそナンセンスだ。
なら、逆に話し合いをしようとこちら側が、いきなり言えば、相手はどう出るだろうか。
相手は開戦したいはずだから、必ず渋る。
とは言え、悪くすれば、返すはずの捕虜を殺しかねない。
だが、殺されるのは困る。
さて、ここをどうするかだ。
誰かこっちの開戦派の人間を操って、動かせればいいんだが・・・・・・。
そんな都合よくいくだろうか?
ノリンは、もう一度開戦派のメンバー表を、じっくり見た。
ノリンの目が、一人の人物の名に、釘付けになった。
そこには、禿くそ親父である情報局長のボサノバの名前があったのだ。
たしかあいつは、レイラ・オーランドの大ファンだったよな。
現役大女優のレイラなら、ボサノバなど、赤子の手を捻るより、簡単に、操ってくれるだろう。
よし、すぐにレイラと連絡を取って、この件を頼もう。
見てろよ、禿くそ親父。
ついでにお前にも、鉄拳を食らわせてやる。
ノリンは、ニヤリと笑むと、もっと詳細な情報をメインコンピュター室から引き出すと、まもなく部屋を後にした。