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18現役女優 レイラ・オーランドの回想4

 レイラは、大に乱暴に抱かれて、朝ベッドで目が覚めた。

 隣では、大が裸のまま寝ている。

 完全に昨日は、ノリンと弘明の件を忘れるための、行為でしかなかった。

 それでもレイラにとっては、天にも昇る気持ちだった。

 大はまだ目を覚まさない。

 レイラは、そのまま横で寝ている、大の胸に縋りついた。

 身体中がきしんでいたが、逆に、それは、大が昨日レイラを抱いた証拠なので、かえって嬉しくて仕方ない。

 自分も大概壊れているなと自嘲して、薄笑いが浮かんだ。

 しばらく大の寝顔を見ていると、彼が目を覚ました。

「レイラ?」

 大が自分のことを覗き込んでいる、レイラに気がついた。

「大。」

 レイラは、嬉しそうに、大に笑いかけた。

「すまん。」

 大はそう言うと、シャワーを浴びに、ベッドから起き上がり、浴室に行ってしまった。

「そんな。」

 レイラはベッドの中で、ただ呆然と大の逞しい筋肉質の背を見送った。

 しばらくして、大が浴室から洋服を着て、出てきた。

「レイラ。お前も服を着て来い。ここを出るぞ。」

「・・・。」

 レイラは自分を見ない大に、落胆しながら、浴室でシャワーを浴びると、部屋に戻った。

 大は出てきたレイラを急かすと、呼んでいたシティカーで、レイラを屋敷に送った。

「あのー、大。」

 レイラは不安な顔で、大を見た。

 大はレイラを見ると、すぐに顔をそらした。

「何かあれば、連絡をくれ。」

 それだけ言うと、レイラを屋敷前に残して、去って行った。

 それから二、三日して、無事ノリンと弘明の乗った戦艦は、他の宇宙軍により、保護された。

 その間大からは、一度もノリンに連絡はなかった。

 しばらくすると、大の兄から、彼が軍に志願したことを聞いた。

 どうやら大は、本格的にノリンと弘明の後を追うようだ。

 いくらレイラでも、大のように、軍には入れない。

 レイラは疎外感を感じながら、三か月以上、大とも連絡が取れないで過ごした。

 そのうち自分の体調の悪さに気がつく。

 慌てて医者に行くと、お腹に子供が出来ていた。

 あの時、大に抱かれた時の子だ。

 レイラにとっては、何よりも嬉しい誤算だった。

 慌てて、家族にも隠しながら、モデルを続ける傍ら、これからの事を考えた。

 モデルは体型がものをいう。

 このままでは、すぐに続けられなくなる。

 体がふっくらしてきて、もう、モデルを続けられなくなった頃、記者にレイラの妊娠がすっぱ抜かれた。

 家族が大慌てて、レイラに降ろすように迫るが、その時には月数が過ぎていて、それも出来ないくらい、お腹の子は、大きくなっていた。

 レイラにとって、この子は大からもらった大事な宝物だ。

 でも体調が悪く、結局レイラは、そのまま入院した。

 しばらくすると、あれほど連絡がとれなかった大が、レイラが入院している病院に現れた。

「なんで俺に、何も言わなかった。」

 いきなり、大に怒鳴られた。

「おい、大。妊婦に怒鳴るな。」

 見ると弘明とノリンも後ろにいた。

「弘明、ノリン。」

「体調はどう、レイラ?」

 ノリンが心配そうに、レイラを見た。

「ええ、大丈夫よ。」

 見ると弘明が大をどついている。

「今度は、妊婦を怒鳴るなよ。」

 弘明はそう言うと、ノリンを連れて、部屋を出て行った。

 レイラと大の二人だけで、話をさせようとしてくれたようだ。

 レイラは大を見た。

「さっきの大の質問だけど、あなたに相談したら、必ず堕胎しろって、言われるから、連絡しなかったの。」

 大は大きく目を見開いた後、何も言わなかった。

 レイラの推測を、彼の無言が肯定していた。

「別に気にしなくていいのよ。幸い、我が家は大金持ちだもの。家にいれば食べるのに困らないもの。」

「家族に反対されて、追い出されているのにか?」

 大はどうやら、真実を知っているようだ。

 レイラは名家の生まれの為、私生児を身ごもった彼女は、家の面汚しのような事を、周囲に言われたのだ。

「レイラ、俺にも兄弟がいるんだ。お前の状態は知っている。」

「大丈夫よ。モデルをやっていたこともあるくらいだから、当面は問題ないわ。」

 レイラが笑うと、大はカードを差し出した。

 そこには大のサインがあった。

「大、これはダメよ。この子は、私が育てる。」

「いいから、これにサインを書け。」

 大はペンとカードをレイラに押し付けた。

「軍は辞められないが、その他の費用は、全部俺が負担する。いいな!」

「大。」

 レイラは涙で、前が見えなくなるくらい嬉しかった。

 義務感からでも、大の伴侶になれる。

 レイラはサインをして、それを大に返した。

 大がそれを国の中枢機関に送信すると、すぐに受理された。

「レイラ。お前は、今から平川レイラだ。」

 レイラが棚に置いてあったカードにも、受諾メールが返信されていた。

「大、ありがとう。」

 大は少し赤くなって、横を向くと、ぼそりと言った。

「まだ、すぐに、ここに来れないが、赤ん坊が生まれる時にはいるから、心配するな。」

 大はそう言うと、間もなく、帰って行った。

 レイラにとっては、たとえ、もう大がここに来れなくても、この時はいいとさえ思った。

 それから、数年間、レイラは大と赤ちゃんであるミワと一緒に過ごした。

 レイラにとって、本当に忘れられない数年間だった。

 でもそのうち、大が弘明に抱く気持ちに気がついた。

 そして、結局最後は、レイラが弘明を想う大の気持ちに、耐えられなくなって、離婚した。

 その後は、女優業をやりながら、ミワを育てた。

 結局、最後は熱烈にアプローチしてきた、ジェームズの熱意に負け、結婚してティアを生んだ。

 それでも、前の夫に似ているミワは、レイラにとって、何よりもかえがたい宝なのだ。

 レイラがそう思っているうちに、シティカーは、屋敷に着いていた。

 ヨロヨロと車から降りると、義理の息子のウィリアムとノリンの娘であるバイオレットが飛び出して来てくれた。

「お義母さん。大丈夫ですか。」

 ウィリアムに抱きかかえられるように、屋敷に連れて行かれた。

「ミワ。何があっても、私が必ずあなたを、助けて見せるから。」

 レイラの小さな呟きは、他の人の耳には届かなかった。

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