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一撃必殺邪神道  作者: オーゼイユ街の怪人
新たなる敵!?
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始めての戦友?

 私が到着したときには既に辺りは紅蓮の炎が包み込んでいた。炎は大地を焼き尽くし、それでおもなお燃え盛っているところを見ると、どうやら普通の炎ではないようだ。これも師匠の受け売りだが、炎を操る魔術の中には魔術師が消さない限り燃え続ける炎もあるらしく、もしそんな技を使う相手と戦うことになったら、技を使われる前に相手を倒せとのこと。


 この光景を見せつけられては師匠の言った通りかなりの脅威となるが、今は仲間なので心強い。


「おー? なんだぁ、生き残りかー?」


 声がした。この声の感じがからしておじさんの声だ。


「どこ? どこ?」


 周りには燃え盛る炎しかない。全てが燃えている。ってか、私を邪神の眷属たちの生き残りって失礼だ!


「ここだよ、ここぉー」


 上?


 見上げると確かにいた。おじさんだ。掌から炎が噴き出ていてそれで空中に浮いている。


「うん? レジスタンスみたいな格好はしてないなぁ? あー、あれだろ、あれ。ほら、俺みたいにレジスタンスに強力している魔術師ってやつだろー?」


 私のことは無視して話を続けるおじさんだが、言っていることは全て合っている。


「あのー、ここ一帯が燃えているのっておじさんがやったんですかー」


「おー、そうよ、その通りよー。ここらの敵はだいたい殲滅したぞー。そろそろ他の所へと行こうと思ってたところだー。っと、上にいたら話難いな。ちょっと待っててくれ。すぐに降りるー」


 そう言うと、おじさんの掌から出ている炎が弱くなり始めた。最初はジェット噴射のよう勢いだったのが、すぐに弱くなり、それに合わせておじさんが空から降りてきた。


「よう、まさか俺以外にレジスタンスに協力している魔術師ってのが、こんな娘だとは思わなかったぜ? 他にも協力しているのがいるらしいが、皆、そうなのか? ――おっと、悪い意味で言ったんじゃねぇからな。素直に驚いてるんだよ。俺がお前さんと同じぐらいの歳の頃はまだ何も、それこそ魔術の道にすら入ってなかったからな」


「はぁ…… そうですか」


「おいおい、なんだか気の抜けたような感じじゃないか? なんだい? なんか気に障るようなことでも言っちまったか?」


「いえ…… なんて言うか……――一気に喋られたから、対応する暇が……」


 私はどちらかと言うとおとなしいタイプの人間と言うのは前にも話したが、相手がよく喋るようなタイプだと臆してしまうのだ。しかも、相手が歳が全く違うおじさんだとなおさらだ。


「おっと、そいつは失礼した。なにぶん、俺以外の魔術師と会うのは久しぶりだからなぁ。ちょっとお喋りになっちまった」


 照れくさそうに頬をポリポリと掻く姿はまさに歳相応のおじさんって感じだ。


 おじさんの格好はボロボロで所々が焦げている。この辺り一帯の敵を殲滅したと言っていたのでそのときに焦げたのだろうか。飲み屋に通っていると言ったほうがしっくりくるかもしれない。


「この辺の敵はおじさんが?」


「おうよ! 炎を操ってちょちょいとな。――しかし、おじさんってのはどうにも悲しくなるなぁ。俺、こう見えても三十八なんよ」


 こう見えてもって…… どう見えてもおじさんなんですが…… それに年齢もだいたい予想通りだし。


「さて、共に戦う戦友ができたところで自己紹介だ。っと、言っても偽名の方だがな」


 少し前なら驚いたことだが、今はもう驚かない。それにアリスに偽名をつけてもらったことだし。


「俺は…… そうだな、伊藤って名前にしよう。うん、伊藤がいいな。俺は伊藤だ」


「そんなに何度も伊藤、伊藤って一回言えばわかりますよ。それにたった今考えたみたいですね」


「偽名なんてそんなもんでいいもんよ。変に考えたら元の名前を忘れちまうかもしれんだろ?」


 このおじさん――じゃなくて伊藤さんはけっこう適当な人だなぁ。でも、アリスと会ったときみたいに変に凝った偽名を考えるよりはいいのかも。私はそれで思いつかなくてアリスにつけてもらったんだっけ。


「それじゃあ、お前さんの偽名を教えてもらおうか」


「はい、私の偽名は黒樹って言います。この前、友人につけてもらったんです」


「ほー、友人につけてもらったとなぁ」


 伊藤さんは珍しそうな顔をする。そんなに珍しいことなのかな?


「珍しいんですか?」


「珍しいって…… そりゃあ珍しいだろう。偽名なんて普通自分でつけるもんだ。なかなか人につけてもらうなんて機会はないな。それに俺は偽名自体、そんなに名乗らないからなぁ。――おっと、お喋りはこの辺にしておくか。まだ戦いは終わっちゃいねぇ。他所では戦いは継続中だ。援護しに行くか!」


「ですね!」


 私も初めて会う魔術師との会話に夢中になるところだった。伊藤さんの言った通り、まだ戦いは続いている。


「これからお前さんはどうする? 俺は手こずってるレジスタンスでも助けに行こうと思う」


「そうですね――」


 どうしますか。私も伊藤さんと同じく、苦戦しているレジスタンスを助けに行ってもいいけど、最前線で暴れることによって敵の士気を下げることもいいかもしれない。敵の士気を下げられればこの戦いを早く終わらせることもできるはず。それに最前線にはより強力な敵だっている。そんなのと戦えば、私にとっていい修業にもなる。


 よし、決めた!


「伊藤さん、私はこのまま戦いの最前線に行こうと思ってます」


「ほう…… 向こうも装備はいいのを貰っているとはいえ、敵も強力なのがいるはず。黒樹、お前さんが行ってやれば、大いに助かるだろうな。だが、危険も多いぞ?」


 ちょっと緩んだような伊藤さんの表情に真面目さが出ている。


「それはわかってます。でも、私が行って敵の戦線を押し返せば、この戦いは早く終わります」


「おいおい、一人でやろうってのはちょいと厳しいぞ。敵は深きものどもとバイアクヘーの大群だ。この二種が組んでるなら、戦線を下げることに意味出てくるが、奴らは別々の思惑で戦っているんだ。どっちが引っ込んだら、もう一方が出てくるぞ」


「ふっ、そんなことは百も承知ですよ、伊藤さん!」


 私は伊藤さんに対して不敵な笑みを見せる。これ、一度やってみたかったんだよね!


「それなら、何かいい方法でもあるのか?」


 興味深そうに私の次の言葉を待つ伊藤さん。


「いいでしょう! 教えてさしあげます。その方法とは――――」


「方法とは?」


 伊藤さんの表情が真剣そのものとなる。


 あ、私、今すっごく興奮してるかも!


「――どちらも徹底的に叩くってことです!」


 きっと、私の表情は伊藤さんとは真逆でドヤァって感じになっていることだろう。


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