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一撃必殺邪神道  作者: オーゼイユ街の怪人
新たなる敵!?
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決意

「普通ならここで手を止めることなく、あなたの首を刎ねて、心臓を貫いているんだけどね」


 アリスの剣は私の首からギリギリ数ミリぐらいのところで止まっている。もう一本も服に切っ先がついているかどうかぐらいだ。


「ど、どう……言うこと……? アリス、あなたは私を殺すんじゃないの……?」


 アリスが剣を引く。剣は空間に融けるようにすうっと消えた。


「ヴォルヴァドスはそのつもりなんだけど、私はちょっと反対なの」


「まさか、さっきの自己紹介でその気がなくなった…………なんて、ことはないんだよね?」


「ええ、もちろん。その程度のことで邪神に関わる者を逃すつもりはないわ。そんなことするぐらいなら、黒樹、あなたには自己紹介、こちらの手を晒すことはしないし、偽名を考えるなんてこともしないわ」


「なら、なんで?」


 邪神殲滅をするために戦っているなら、邪神が残した物で戦う私を生かしておく必要はないはずだ。


「打算的な考えなんだけど――――黒樹、あなたは私が来る前から、邪神の眷属たち――深きものどもと戦っていたわね?」


 深きものども?


「う、うん…… 確かに戦っていたよ」


「やはりね、ここまで来る途中で感じていた気配がだいぶ減ったから、レジスタンの可能性もあったけど、大型の深きものがいたから彼らでは手に負えないはずだから変だと思っていたの」


 アリスは何が言いたいんだろう?


 それと私を殺すことをやめると何の関係が?


「結果として、不可視の化物は私が倒す結果になってしまったけど――」


「ね、ねえ! つまり、どういうことなの? アリスが私を殺すのをやめた理由ってなに!?」


 勿体ぶった言い方をするアリスに思わず聞いてしまった。もし、ここで彼女の機嫌が変わってしまったら、私など瞬殺されてしまうと言うのに。


「そうね……――――黒樹、あなたはなぜ戦っているの?」


「えっ?」


 なぜ、戦っている?


 以外な質問に私の思考は一瞬だが、停止した。


「なぜ戦っているのかって質問しているの。理由があるはずでしょ? 参考程度に言うけど、私の場合は復讐ってやつなの」


「復讐?」


「そう、復讐」


 表情を変えることなく話すアリス。


「昔、って言っても三年前のことかな。私の両親は殺されたのよ」


「殺された……?」


「殺した相手は何かはわからなかった。でも、両親の死体は不浄な粘液に塗れて想像を絶する顔をしていたわ。きっと、恐ろしい何かを見たはず」


「そんな……」


「一人、残された私は絶望の奈落へと落ちていったわ。かけがえのない家族を失った私は家族の遺体から離れることがいつまでもできなかった。お腹が空いても何も食べたくない、そんなことが続いて、私もどんどん弱っていった。でも、このまま餓死すれば天国で両親と会えるんじゃないかって思ってたの。でも、神はそれを許してはくれなかったの」


 許さなかった?


「それって……」


「そう、あなたが思っている通りよ。いよいよ、この絶望の世界ともお別れってときに彼は現れたの。燃ゆる者と言われているヴォルヴァドスがね」


 ヴォルヴァドス――アリスの話ではかつての力を失っているとはいえ、彼女に力を貸し、不可視の怪物を圧倒する力を与えている神か。


「彼は私に語りかけてきたわ。邪神を倒すに力を貸してほしいと。この地球を守るためには戦えない自分に代わって戦う者――依り代が必要だと。もちろん、私は彼を受け入れたわ。本来なら覆せない絶望的な状況を打開する力を彼はくれたの」


 これが彼女の戦う理由……


 私も家族を失っているから、それはわかる……


「長々と話して悪かったわ。さて、本題に入りましょう。あなたの戦う理由ってなに?」


「私の戦う理由…… それは、それは……、この世界を救いたいから」


「どうやって? あなたには私のような力はないし、むしろ、その力は危険だわ。それでも、この世界を救おうって思うの? もしかすると、その力で世界は更なる危機を迎えるかもしれないのに?」


「そ、それは……」


 だが、確かにアリスの言う通りだ。この力は強力だが、暴走の危険はある。師匠は私が強くなれば、暴走は抑えられるとは言っていたが、はたしてそれは本当なのか、仮に本当だとしても私にそんなことができるのか……


「今のあなたはまだまだ不完全、それはさっきの相手程度に苦戦することからもわかるわ。予想でしかないけど、あなたが死に近づけば近づくほど、それに反してその力は暴走する可能性を高める。ならば、ここでその芽を摘み取ったほうがいいと思わない?」


 何も言い返せない…… それほどまでにアリスの言葉は正しい。世界を救いたい気持ちは誰よりも持っていると自分では思っている。けど、現状はそれ以上に邪神が残した物に頼ることは世界をより危機へと進ませる危険を孕んでいる。可能性の話でなら、ここでこの力がなくなったほうがいいことは明白だ。


 でも――


「アリス、あなたの言っていることは正しい。私がこの力を使う方が間違っている。――でも、それでも私はこの世界を救いたいの!」


「その危険すぎる力で?」


「うん! 私にはそれしかないから…… きっと、この先もこの力のせいで周りに、世界に危機をもたらすかもしれない。でも、私は戦っていきたいの! この世界を守るために戦っていきたいの! ――それでも、あなたが私を殺すと言うなら、私はあなたと戦う! 例え、力の差がどんなに届かなくても、絶対に勝てないとわかっていても――それでも私は戦う!」


 前に深きものどもに言い放ったときのように、言葉に出したら意外とスッキリした。そうだ、私はこの世界を守りたい、この気持ちはどんなことでも決して揺るがないんだ!


 私は自然とアリスと距離を取り、構えを取っていた。戦いのための構えを。


「そう――――それがあなたの答えなのね」


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