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一撃必殺邪神道  作者: オーゼイユ街の怪人
新たなる敵!?
25/32

偽名

「邪神殲滅……」


 先ほどの戦いでも言っていた言葉。


 その言葉は私よりも重い決意を持っているようだった。


「私の自己紹介は終わりよ。今度はあなたの番、いつまでもあなたって言うのもなんだから」


 アリスと名乗った少女は真っ直ぐ私を見つめている。


 今度は私の番…………って、ええッ!?


「あ、いやぁー、その……、さっきの話の流れ的にそこにいく!?」


 私の最もな疑問にアリスは反論した。


「だから、あなたって言うのも面倒なのよ」


 と、言われましても……


「いやいや、私はね、アリス……さん?」


「呼び捨てでいいわ」


 即座に答える。


「おほんっ……! 私はアリスと違ってヴォルヴァドスみたいな力は持って

いないからそう簡単に名前なんて教えられないよ!」


 名前は存在を存在たらしめる重要なもの。だから、おいそれと簡単に名前を教えることはできない。


 しかし、アリスもそれをわかっているらしく、


「さっき教えてもらったから、それは理解している。だから、偽名でもいいわ」


「偽名って……」


 そんな簡単に言われても…… 師匠なら偽名はたくさん持っているから一つぐらいは教えてもいいかもしれないが、私の場合はそもそも偽名なんて持っていないし……


「あら……? 名前を重要視するわりには偽名は持ってないの?」


「まあ……うん……」


 そもそも私は師匠以外の魔術師は見たことがないので、魔術師全てが偽名を持っているかどうかも知らないんだけどね。


「そう……、じゃあ、私が偽名をつけてあげるわ」


「……は?」


「そうね…………、それなら、偉大な作家から名前を採ってブラックウッドはどう?」


 私のことはおかまいなしに話を続けるアリス。


「いや、偽名を考えてくれるのは嬉しいんだけど……、ほら、私って日本人じゃない? ……だから、ブラックウッドって偽名はあまり合わないかなぁ……って」


 嬉しいことは本当なんだが、アリスはどこかずれている感じがする。でも、ブラックウッドって名前は純粋にかっこいいな。


「そうね、日本人にブラックウッドって名前は少々合わなかったわね」


 少々どころではないのだが……


「あ、でもブラックウッドなら日本語にすれば……、黒と樹、うん、黒樹なら苗字っぽくてもいいかも!」


「あなたがそれでいいなら私は構わないわ」


「やった!」


 生まれて初めて偽名を持ったから、ちょっと言葉が出てしまった。それほ

どまでに私としては嬉しいことだった。なんだか、魔術師としてちょっと進歩した感じがするからだ。


「では、黒樹、改めてよろしく」


 手を差し出してくるアリス。これって、


「握手よ」


「うん!」


 私は頷いて、手を差し出す。


 握ったアリスの手は少しひんやりしていて、ちょっと気持ちよかった。


「それじゃあ、黒樹、私の目的を話すわ」


 手を戻すとアリスは語りだした。


 そして――


「私の目的は――邪神殲滅。それ即ち、邪悪の全てを滅ぼすこと。邪神から、その眷属の末席に至るまで、その全てを滅ぼす。それは私の目的であり、ヴォルヴァドスの目的でもあるの」



 一対の剣を私へと向けるアリスの姿がそこにはあった。



「――えっ……」


「あなたの力となっているトラペゾヘドロンは邪神ナイアルラトホテップがいなくなる前に残した物、それはただ存在するだけでも危険な物なのに黒樹、あなたはその力の一部を行使できる。それは見過ごすことのできない大変危険なものなの」


 危険? この力が……?


「と、とにかく、その物騒な物は降ろしてよ!」


 しかし、アリスは剣を下ろそうとはしない。油断なく、その切っ先は私の一本は首に、もう一本は心臓に向けられている。


「あなたも少しは感じたことがあるはずよ。その力の強大さと危険さを」


「き、危険さ……?」


「そう、危険さ」


 忘れていたわけではない。


 初めての修業のとき、深きものどもに死ぬ寸前まで追い詰められて暴走し

たあのときの力。あれは確かに危険な力だった。あのときの私は私ではないと言ってもよかった。身体は全く言うことを利かず、気絶するまで暴れ続けた。あのときは気絶したからこそ、暴走は止まったものの、もし、気絶せずにそのまま暴れ続けたらどうなっていたか……


「やはり、心当たりはあるみたいね」


「う、……うん」


「何度も言うけど、私の目的は邪神殲滅。ナイアルラトホテップが残したトラペゾヘドロンを使うあなたを見過ごすことはできない。――だから、狩らせてもうわよ。黒樹、あなたの中のトラペゾヘドロンを」


 殺気!


 アリスは完全に私を殺す気だ。


 それは身体から溢れてくる尋常ではない殺気がオーラのようなものとなっ

て湧き出してくるのが、私の左眼を通して理解できる。この殺気はアリスだけのものではない。ヴォルヴァドスの殺気も入り混じっている!


「行くわよっ!」


 アリスが動いた!


 速い!


 剣速は私に捉えることができないほど速かった。


 ダメだ、躱せない!


 アリスの斬撃が私の首および胴へと奔る。


 本能的な恐怖から私は目を瞑ってしまった。


 その後に来るのは痛み――そして、死。 


 だが――


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