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一撃必殺邪神道  作者: オーゼイユ街の怪人
新たなる敵!?
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二者択一

 私が現場についたときには既にレジスタンスと怪物たちの戦いが始まっていた。


 人々が逃げ惑う中、先ほど私が見たレジスタンスの人と同じ格好をした人が七人ほどマシンガンを撃っている。


「オラッ! これでもくらいやがれ! 化物どもがっ!」


 逃げ遅れた人に襲い掛かる異形――深きものどもがマシンガンから放たれた弾丸の嵐を受けて身体が千切れ飛ぶ。その隙に手の空いている別の人が襲われた人を抱えて走る。


 その光景は私が初めてみる確かな戦場。


 これまで私は師匠の下で修業をしてきたが、私以外が戦っている姿を実際に見るのは初めてだった。


 この光景に私の心は昂る。


 ――ああ、やはり私以外にも邪神たちと戦う人がいたんだ……


  こんな嬉しいことはない! 


「レジスタンスの皆さん! 私も戦いますよ!」


 私もいざ、参戦――――しかし、


「おい! そこの君、何をやっているんだ! ここは私たちがなんとか食い止めるから早く逃げるんだ!」


 私もレジスタンスの人たちといっしょに戦おう構えるが、私に気がついたレジスタンスの人が逃げ遅れたものと勘違いをして早く逃げるようにと怒鳴る。


「えっ、いや、私も戦お――」


「いいから、こっちに来るんだ!」


 レジスタンスの人が私の手を取ると、力尽くで現場から私を引きずり離す。


「ちょっ、ちょっと待ってください!」


「何を言っているんだ、あんなところにいたら我々の戦いに巻き込まれるぞ!」


 レジスタンスの人が私の手を離したのは現場から数百メートル離れたところだった。


「さあ、早く逃げるんだ」


 レジスタンスの人は一言残してまた現場へと戻っていく。


「……どうしよう」


 このまま戻ってもまた連れ戻されるだけだろうし、わけを話してもきっと信じてはもらえない。そもそも、年頃の乙女が怪物との戦いの舞台にいる方がよっぽど異常だ。


 どうやって信じてもらうか。


 こんな案はどうだろうか?


 私が年頃の乙女だから戦いの邪魔になると思われているので、最初からアルクナイアーシュラの力を纏って出ていけば、少なくとも年頃の乙女だと言うことはわかるまい。連れ戻されるときに確認したが、レジスタンスの人たちが戦っている相手は深きものどもだ。どれもよく現れる大きさだったが、一体だけ他の深きものどもよりも巨躯な個体がいた。たぶん、長年生きて進化した個体だろう。


 深きものどもは邪神復活前からクトゥルフ復活を狙ってちゃくちゃくと数を増やしていた眷属だ。恐らくこの地球上でもっとも数が多いのではないかと言われている。その中でも長年生きた個体は大きさを増すことも知られている。もちろん、そのような個体は力も大幅に上昇し、並みの人間じゃ倒すことは困難になってくるだろう。


 私の見立てではあの大きさは三、四メートル。アルクナイアーシュラを使わなくても十分戦える。


 しかし、あの乱戦となると深きものどもよりもレジスタンスの人たちの方がやっかいだ。いきなり、戦場に第三勢力が現れたらより戦いは乱戦となってしまう。レジスタンスの人たちはその多くが民間の人らしいから連携もギリギリで成り立っている。そこに第三勢力が現れるとなると連携は崩壊する。最悪の場合は私自身も攻撃に晒され、その後もレジスタンスと敵対する形になってしまうことだってありえる。


 それだけは絶対に避けなければならない。


 戦いの度に人間まで相手にはしていられない。守るべき人たちと戦うことになるなんてまっぴらだ。


 だが、いつまでもここで手をこまねいているわけにはいかない。レジスタンスの人たちにはあの怪物はきつすぎる。


「まずは近くまでいかないと!」


 現場まで数百メートルだが、師匠に拾われてから修業を積んできた私には遠い距離ではない。


 私は足に力を込めて地面を蹴る。前へと進む力が生まれて私を押す。再び足に力を込めて地面を蹴る。この繰り返しだ。何度もやってきた行為だし、私が死ぬまで行われる行為。私は疾風となり、目に映る景色は彼方へと消えていく。


 最初に私の眼に映った異形はあの他の深きものどもよりも巨躯な個体だった。数人のレジスタンスたちの人たちの銃撃をものともせずに暴れ回っている。その姿はさながら獣だった。深きものどもは成長していくにつれて理性は無くなっていく。中には理性を残し個体もいるらしいが、私の眼に映っている個体は明らかに理性はない。ただその場を破壊するために存在する獣と言っていいだろう。


 私は見つからないようにすぐに物陰へと隠れる。


「さあ、どうしようか」


 ここで出て行ってもまた追い返される、トラペゾヘドロンの力を使うと最悪の場合敵対する可能性もある。それに師匠はあまりトラペゾヘドロンの力は使うなと言っていたし、これはなかなか難しい場面だ。


 こうしてグズグズしてる間も戦況はどんどんと悪くなっている。敵の総数は詳しくはわからないが大よそ二十体、レジスタンスは十人。火力量で言えばレジスタンスの方が有利だろうが、大型がいるぶんレジスタンスの火力では倒しきれないのは明白だ。


 それに現代において魔術およびそれに連なるものは禁忌とされている。禁忌を犯す者は邪神の仲間と言われて人々の憎悪の対象となる。だから、安易にトラペゾヘドロンの力は使えない。仮に私がレジスタンスの人たちの仲間と思われても、他の人にはそれが通じるのかもわからない。何か魔術を使ったなどと言われでもしたらそこまでだ。


「うう~、何か良い手はないのかな~」


 歯痒いがここで軽率に飛び出したら後々面倒になってしまう。今は我慢しかない。


 だが――


「ぎゃあああぁッ! う、腕があああぁぁ……」


 レジスタンスの一人が深きものどもの連携攻撃にあい腕を負傷した。かなり深く切られているようで、その傷口からは大量の血が流れて足下に赤い血だまりを作っている。


「おい! 誰かカバーに回れッ!」


 別の人が怒鳴る。


 その声に応えるかのように負傷した人の前にいる深きものどもにマシンガンが掃射される。マシンガンを受けた深きものどもの身体が千切れ飛び鮮血が舞う。しかし、見た目の派手さと違い、これでは奴らに与えるダメージは大きくない。


 何度も言うがレジスタンスの人々の多くは民間からの出である。しかも、元自衛隊の人たちでも対人などの制圧は得意でも対魔の経験はないに等しい。


 どうする?


 連携が乱れ始めた今、全員が殺されるのも時間の問題だ。ここでグズグズしている暇なんてない。それならいっそのこと飛び出してレジスタンスの人たちを助けた方がいいのでは?


 だが、その後はどうする? 


 劣勢に追い込まれているところにわけのわからない者が現れたすぐさま敵と思われるかもしれない。今後、戦闘がある度にレジスタンスと争うことになったら、守りたち人たちと戦うことになったら、それこそ本末転倒である。


 どうする? どうする?


 危機に瀕している人たちを守るために今後を危険に晒すか、今後のために今危険に瀕している人たちを見捨てるか。


 二者択一、二つに一つ、今か今後か……


 あー、ダメだ。これは…………、――でも、


「――……あれこれ悩むのなんて乙女らしく、私らしくないよね」


 やりたいことをやる。できることをできる人がやる。邪神に勝てる見込みがある私が戦うと決めていたんだ。世界を救うはずなのに、ここで戦っている人たちを救わないなんてありえない!


 救うんだったら全てを救え! 


 邪神を倒すんだったらそれぐらいやってみせろ私!



「やい、魚面ども!」


 一斉に私の方へと振り返る深きものども。どいつもこいつも戦闘に消耗から眼が血走っている。


「な、なんだあの少女は?」


 レジスタンの人たちも私の登場で困惑している。新たな脅威なのか、それとも……と、言った感じである。


「お前たちの相手は私だっ!」


 辺り一面がざわめく。


「そこの君はさっきの! 何をやっているんだ! 早くそこから逃げろぉ!」


 先ほど私を引き離したレジスタンスの人が怒鳴る。


 でも、私には逃げると言う言葉は今や存在しない。


「スーハ―っ…………よしっ」


 大量の空気を吸い込み心を落ち着かせる。


 左目のトラペゾヘドロンに意識を集中して自分の姿を創造する。


 姿を盗むのは風の邪神の眷属にして大空の脅威、その名はバイアクヘー。


 頭の中に言葉が浮かび上がる。


 それはバイアクヘーとの戦いで浮かんだ言葉。


 禁忌の言葉。


 第三の眼が開く。


 私はその言葉を紡ぐ。



「我は無貌の断片にして世界を見初める眼。

世界を観賞し、

嘲笑し、

新たな世界を創造する。

我が声は嘲りの混沌。

紡ぎにより世界を書き換える。

――我は邪神を屠る眼光

――アルクナイアーシュラッ!」


 黒白の閃光が奔る。


 そして――


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