パートナー1
完全オリジナルのカードゲーム、サモンデュエルの小説です。他のカードゲームと間違われ、何故か1度運営に削除されたりしましたが、読んで頂ければ分かる通り、これまでにない新感覚のルールです!
正導学園。召喚術により呼び出される召喚魔と共に発展した世界で、社会に貢献できる立派なサモナーを育成する事を建学理念としたこの高校は、高名なサモンデュエリストを多数輩出している事で有名だ。サモンデュエルに寛容な自由な校風であるが故に、特に教えずとも優秀なサモンデュエリストが育つのだろう。そして今、俺はこの高校の校内戦決勝の舞台へ上ろうとしていた。
「先攻…2年B組、花札遊!」
全校生徒の見守る中、大歓声を受けつつステージの真ん中に足を進める。俺は花札遊、正導高校の2年生だ。特に成績が良い訳でも、運動ができる訳でもないが、サモンデュエルだけは負けない自信がある。
「後攻…2年F組、火の本亮!」
正面から堂々とした足取りで歩いてくるのは火の本亮。学園の頂点にして俺のライバル兼親友。成績優秀でスポーツもそれなりにこなす。王者の風格とそれに見合う圧倒的な実力…だが、今日こそは負けねぇ!
「それではこれより、正導学園校内戦、決勝を行います。実況は私、放送部の天声響が務めさせて頂きます!」
司会の先生がステージを降りると、開始のホイッスルが鳴る。
サモンデュエル、サモナー同士の実力を競う為の疑似戦闘。必要とされるのは確かな知恵と判断力、粘り強さと勇気だ。詠唱を省略して召喚術を発動できるサモンカードを使い、自分の信じる召喚魔と魔法で戦う。戦争の無くなった現代において実際のサモナー同士の戦闘が必要とされる場合は少ないが、高名なサモナーは戦闘に限らずあらゆる場面で活躍している為、能力のアピールの仕方の一つなのだろう。そして高い実力を誇るサモナー達は、サモンデュエリストとして試合を行い、人々を熱くさせ、憧れの対象となっている…
さて、説明はこれくらいだ。試合に集中しなくては。
「俺はパートナーサモンをスキップする」
「あぁわかった。ではこちらはいくぞ。パートナーサモン!来い、『火煙の狼』!」
体が煙できているかのような、燃える狼が亮の傍らに現れる。
「やはり花札選手はパートナー無しです!予選から決勝までパートナーカード無し、果たしてどうなるのか!」
会場は「今回もか」といったざわつきを見せる。それもそのはず、俺はこの決勝まで、というかこれまで一度もパートナーカードを使った事が無い。パートナーカードとは、カードクリエイターの想像力により創造される通常の召喚魔とは異なり、生まれ持った守護霊とも言える存在だ。そして俺は何故か今日までその守護霊に恵まれていない。とはいえ、決勝に残っている事からも分かるように、必ずしもパートナーがいなければ勝てないという訳でも無い。もちろんパートナーがいてデメリットは無いし、戦略の幅も広がるが…いないもんはどうしようも無いし、俺は気にせず戦ってきた。そして今回こそ、パートナーはいなくても亮に勝って見せる!
「「デュエル!」」
お互いに初期手札の5枚をドローする。
「いくぞ亮。今日こそ勝たせてもらう!俺のターン、ドロー!」
左腕の手首に装着されたデッキからカードをドローする。これはデュエルウォッチ。普段はベルトから下げているデッキケースを腕時計に装着できるようになっていて、デュエルの際はデッキケースからデュエルフィールドを展開できる。本来は2枚ドローできるが、先攻の1ターン目は1枚のみというルールがある。
「マナチャージ・ブラック!マナレベル1!」
手札から黒のカードを1枚、マナゾーンに置く。サモンカードにはそれぞれ色があり、系統を表している。黒、白、赤、青、黄、緑、無色の7色が存在し、それぞれに特徴がある。そして無色以外はマナゾーンにある色のカードしか発動できないという縛りがある為、自然と使用する色は1色から2色に限られてくる。
「メインフェイズ、通常召喚だ。サモン!黒のレベル1、『タバコ売りの狼少年』を攻撃態勢で召喚する!」
『タバコ売りの狼少年』パワー500/ディフェンス400/タフネス2
狼の耳の生えた可愛らしい少年が召喚される。通常召喚とは自分のターンに1度だけ行えるもので、自分の手札からマナレベル以下のレベルを持つ召喚魔をサモンできる。特殊召喚というものもあるが、これはマナレベルにも縛られねーし回数制限も無い名前の通り特殊な召喚だ。
「先攻は攻撃できないから、これで俺は手札4枚でターンエンドだ。さぁ亮、どうする」
先攻はドロー枚数と攻撃が制限されているが、主導権を握りやすくチャレンジャーの俺としてはやりやすい。さぁ、暫定1位の亮はどうくるか…
「俺のターン、ドロー。マナチャージ、レッド。マナレベル1。手札6枚、俺はこのままターンエンドだ」
序盤はマナレベルが低い為、マナチャージだけしてターンを終了する事も珍しくない。が、これで亮の場はがら空き、チャンスだ!
「俺のターン、ドロー!マナチャージ、ブラック!マナレベル2!『タバコ売りの狼少年』のタフネスを1へ減少。そして黒のレベル1『マッチ売りの狼少女』をサモン!」
『マッチ売りの狼少女』400/500/2
「ステータスの低い召喚魔をワラワラとサモンしてきたな。まったく、いつだってお前はステータスの低い召喚魔ばかり使うな」
「だが、がら空きのお前相手なら小さな召喚魔でも、傷はつけられるぜ!2体でダイレクトアタック!」
『タバコ売りの狼少年』パワー500 亮ライフ9000→8500
『マッチ売りの狼少女』パワー400 亮ライフ8500→8100
「花札選手、早くも先制攻撃!ライフを1割削りましたねー」
攻撃が通り、ピピピという音と共に亮のライフが削られる。残り8100だ。サモンデュエルは9000のライフポイントを削り切れば勝利だ。そこで、いかに強力なパワーを持つ召喚魔を召喚し、相手を攻撃するか。という事が重要になってくる。
「リバースカードを1枚セットして、手札3枚、ターンエンド!」
そしてサポートするのは魔法と呼ばれるカードだ。相手ターンにも発動できる即発、誘発系魔法と自分のターンにのみ発動できる詠唱系魔法の2つがあるが、即発、誘発系はセットしておかなければ相手ターンに使えない。つまり、罠って事だ。
「俺のターン、ドロー。マナチャージ、レッド。マナレベル2。そろそろこちらもいかせてもらうぞ。サモン、赤のレベル2『狐火』!」
『狐火』1500/0/1
「さらに赤のレベル2詠唱魔法、『ファイアーブースト』を発動。自分フィールド上の赤色かつ炎の召喚魔を選択し、タフネスを0にする事でこのカードをマナゾーンにチャージする!」
「相手フィールド上に召喚魔がいるのに、サモンしたばかりの自分の召喚魔を犠牲にマナチャージを!?」
亮のコンボを知らない1年生達の間でざわめきが起こる。
「『狐火』のタフネスは0となった。しかし、この時『狐火』の能力を発動する。『狐火』はタフネスが0になった時、500のライフポイントを支払えばタフネスを1へ回復させる事が出来る!」
火ノ本亮ライフ8100→7600
「凄い、召喚魔の犠牲を無効化しつつマナチャージした!」
タフネスは召喚魔ごとに決められた体力で、戦闘を行ったり効果によるダメージによって減る以外にも、毎ターン維持するだけで減少していく。俺の『タバコ売りの狼少年』はタフネス2、召喚からのターン経過によりタフネス1に減ったから、次の俺のターンが来た時にはタフネス0になって、セメタリーへ送られてしまうって事だ。
「さらに赤のレベル3即発魔法『キャンドルマジック』を発動。自分フィールド上の赤色かつ炎の召喚魔を選択し、タフネスを0にする事でその召喚魔以下のレベルの召喚魔を手札から特殊召喚する!サモン、赤のレベル2『火羅守』!そしてまた500ポイントのライフを支払う事で『狐火』は再生する!」
『火羅守』1000/0/4
火ノ本亮ライフ7600→7100
「来たな…亮の怒涛の連撃が」
「遊!驚くのはまだ早いぞ!無色のレベル2詠唱魔法『逆立てた毛』を発動!自分の獣の召喚魔1体のレベルを2上昇させ、パワーを400上昇させる!これにより『狐火』のレベルは4、パワーは1900となった。」
「亮、パワーを上げても俺の狼少年と少女はバトルで発生する俺へのダメージを全て無効化するぜ?」
「分かっているさ。だからな、こいつらでバトルする気は無い!赤のレベル3詠唱魔法『連鎖炎上』を発動!これにより、このターン俺が発動したカードの枚数…5枚分がエンドフェイズ時まで召喚魔を召喚する場合のみマナレベルに加算される!」
「マナレベル8!ついに…来るのか!」
「速い、流石は昨年度の冬の選手権を制した王者火ノ本選手!烈火の如き怒涛の連撃!」
ざわめきが大きくなる。そりゃそうだ、自分だって手汗ダラダラだっつーの…
「いくぞ遊!レベル4『狐火』とレベル2『火羅守』をリンク!EX召喚…赤のレベル6、サモン!我が最強の炎『火之迦具土神』!」
『火之迦具土神』2900/2600/6
炎の中に2体の召喚魔が消え、その後巨大な爆炎と共にそれは現れた。炎を纏った大蛇、炎の神とも呼ばれるそれはレベル6、ステータスも誰のエースと比較しても遜色ない大型の召喚魔だ。
「出ました!烈火の如き怒涛の連撃から現れたのは、火ノ本選手のエース、『火之迦具土神』です!まさか…この決勝で2ターン目にして召喚してくるとは、まさに、まさに神業!」
「亮…流石やるな。こちらも2体の召喚魔に守られているとはいえ、格の差を感じさせられる威圧感だぜ」
「だろうな。そんな弱小召喚魔、すぐに消し炭にしてやるさ。受け切れるか?『火之迦具土神』で攻撃!紅蓮神炎!」
「『タバコ売りの狼少年』は敵の攻撃を引きつける能力を持ち、『マッチ売りの狼少女』は敵の攻撃を避ける能力を持つ。受け切ってくれ!狼少年!」
『火之迦具土神』パワー2900VS『タバコ売りの狼少年』パワー500
『タバコ売りの狼少年』が攻撃を受け、炎に包まれ消える。
「『タバコ売りの狼少年』はバトルで発生する自分へのダメージを0にする!』
「知っているさ。だが『火之迦具土神』の効果は発動する。バトル終了後、『火之迦具土神』以外の全ての召喚魔のタフネスに2のダメージを与える!連鎖神炎!」
『マッチ売りの狼少女』もタフネスが尽きて消え去る。
「さらに『火之迦具土神』は相手の召喚魔のタフネスが尽きてセメタリーへ送られる度、1体につき500ポイントのダメージを与える!さぁ、狼少年と少女の2体分、1000ポイントのダメージを受けてもらおうか」
「くっ…」
花札遊ライフ9000→8000
『火之迦具土神』から火炎が吐かれ、ライフポイントが減る。ライフでは多少上回っているとはいえ、全く優勢と言えないぜこいつは!だが…まだ諦めはしない
「『タバコ売りの狼少年』が、また『マッチ売りの狼少女』がフィールドからセメタリーへ送られた事により…デッキから『新聞売りの狼青年』『花売りの狼乙女』を特殊召喚する!サモン、黒のレベル4、『新聞売りの狼青年』『花売りの狼乙女』!」
『新聞売りの狼青年』2000/1600/5
『花売りの狼乙女』1600/2000/5
「おっと花札選手も2体の狼少年と狼少女を狼青年と狼乙女へと成長させました!しかしパワーはそれぞれ2000と1600、とても敵いません!」
「エンドフェイズに俺のパートナー、『火煙の狼』の効果を発動。このターン効果ダメージを与えた為、追加で800ポイントのダメージを与える!」
花札遊ライフ8000→7200
亮の傍らに居た『火煙の狼』がこちらに火炎を吐く。
「火の本選手、確実にダメージを与えていきます!これでライフポイントはほぼ差が無くなりました!」
「俺はリバースカードを1枚セットし手札0でターンエンドだ。さぁ、二体の狼でどう挑む?」
亮は満足気にこちらへ問いかける。あぁ、実況に言われずとも分かっている、確かに、まだまだ序盤だってのに、既に絶体絶命のピンチかもな。けどよ、俺の召喚魔だって色々できるんだぜ…