42 「絵描き」 「異世界」 「異種族愛」 「再会」
久しぶりの投稿になります。
待っていてくれる人がいるといいなぁ・・・・
ストックなしで書いたのものを投稿したので、連投はできません。
読んでくださっている皆様、本当にありがとうございます。
それでは、本文をどうぞ。
シャッシャッ
今日も私の手は迷うことなく動いていく。
先のとがった鉛筆が私の手が動きに従って黒い線を残し、それは一枚の絵となっていく。そこに描かれるのは風景でも、人物でも、物でもない。
そこに描かれていくのは一体のドラゴン。
折りたたまれていながらも、体と同等の大きさがある一対の翼。
体中に鱗があり、側頭部のあたりからは背中へと伸びた二本の角。
太い尾の先端はひし形のようになっており、それをどこか得意げにこちらに見せていた。
口元から見える尖った牙は恐ろしく見える筈なのに、まるで笑っているようだった。
『笑えよ、星。
笑うとな、楽しくなるんだぜ?
笑顔を見ることと、笑うことは、俺が空を飛ぶこと以外で一番好きなことなんだ』
そう、彼はあの日。
そんな顔をして、私へと笑いかけてくれた。
何人かいる美術部員たちも私が書いているときだけは何を話しかけても無駄だと知っているからか、後ろから覗き見ているだけに留めている。
「・・・・ふぅ」
私は鉛筆を置きながら、キャンバスをもう一度確認する。
なおすところはないかを確認してから、今度は絵筆へと持ち替えた。
色は翡翠色。
水色なのか、緑なのかよくわからない色が彼の色だった。
瞳の色は体色と合わせる気もないような紅茶のような赤。それはまるでガーネットのような深い色合いだった。
「フフッ」
少しだけ気分がよくなって、本当に小さな声だけで笑った。
手が動く。湧き上がってくる衝動に任せて私はその気分に指をのせていく。
私は書いているときだけ、あの世界に・・・・・・帰れるんだ。
「・・・・完成」
満足げに呟くと、後ろから煩いくらいの感嘆の声が上がる。
正直に言うと、余韻に浸りたいところを台無しにされて言葉にできない怒りが湧いてきている。
それを気にしていないかのようにキャンバスの隅に鉛筆で『グラムナート』と書き、その下にA.S.と自分のイニシャル付け足す。
「グラムナートって、タイトルなんですか?」
(タイトル・・・・って、やっぱり思われるよね)
「うん。そうだよ」
怪しまれないように当たり障りのないことを言いながら、私はほぼ無意識に今も胸にかけたままのペンダントに触れた。
「先輩の絵はやっぱりすごいですよ、まるでそこに居るみたいな感情みたいなのがあって」
後輩たちがそう言って話し合っているのを聞いて、私は苦笑しながら道具を簡単に片づける。水は誰も居なくなったときに片付けよう。
「そう、かな? そう見えてたら、嬉しいなぁ」
まだ乾ききっていない絵を見ながら、私は隣に置いたままのスケッチブックをとって、また書いていく。
ページをめくるたびにそこにはたくさんの人ではない彼らが居た。
梟の顔と翼を持った燕尾服を纏った紳士、一本の角を額に生やしたユニコーン、まるで燃えているような翼をどこか上品さを持ったフェニックス、弓を構えているのに冗談だと笑い飛ばしてきそうなケンタウロス。
私が今書いているのはサキュバス、色っぽいのにその表情はどこか優しげに見える。
「先輩!」
「あっ・・・・バカ」
突然、肩に触れられて飛び上がる。そのせいで鉛筆が落ち、いらないところに線が奔る。あとから聞こえた周りの声も、すでに遅い。
おもわずその相手をキッときつい視線で睨みつけた。幸い空白の部分だったからよかったものの、これが彼女の顔に奔っていたら私はこの場で激昂していただろう。
私の怒りを初めて見るのだろう後輩らしき生徒は、すぐに逃げるように他の生徒の背中に隠れてしまう。
「す、すみませんでした」
人の背中に隠れながら、こちらを覗き見て謝罪をしてくる態度も癇に障った。
「・・・・!」
「「星(ちゃん)」」
立ちあがりかけた私を制止するようにかけられた声に振り返ると、二人の親友が扉を開けて入ってきた。
「少しクラス関係で遅れちゃったー」
間延びしたような優しげな声、少し明るい色の髪を肩過ぎあたりまで伸ばした少女 ―― 小林 琴海。
「星が作品を完成させると思ったから急いできたんだが、残念なことに間に合わなかったみたいだ」
どこか凛々しさを持つ立ち姿、髪は紺にすら見える黒で綺麗に切り揃えられたショートの少女 ―― 乾 麟。
二人とも私の唯一無二の親友だ。
「で? いつまで皆、固まっているつもりだ? 時間は有限だぞ。各々作品を書くなり、書くつもりのないなら下校することを勧めよう」
「そうだねー、みんなこうしてぼんやりしているよりも楽しいことをした方が、いいと思うなー」
麟がそう言って手を叩いて全員の意識を他に向けさせて、琴海の笑顔が周りの空気をフッと軽くさせていくのが目に見えてわかる。
後輩や同級生たちはその言葉に散っていき、ほとんどの者が帰り支度を始めた。
「・・・・二人にはかなわないなぁ」
おもわず零れた苦笑とその言葉に二人が私へと笑ってから、先程書き上げたばかりの絵に視線を映した。
「・・・・まるで本人がそこに居るみたいだな」
「そうだねー、会いたいねぇ。らしくもなく泣いてくれるかもー」
「・・・・うん。会いたい。見せたいなぁ、私の絵を」
絵の空白部分を指で撫でる。
「まだ、泣くな。星」
「もうすぐみんな、いなくなるからねー。それまで我慢できる?」
「私はそんなに泣き虫に見えるの? 二人とも」
二人に溜息をつくように言いながら、私はすることもなく腕を伸ばした。伸ばした手を二人に掴まれて、濡れたハンカチでぬぐわれた。
「・・・・・汚れてた?」
冷たくて気持ちいいハンカチと、優しい二人の手つきにちょっと気恥ずかしくなって聞いてみる。
「うん。もー絵の具でばっちりと」
「夢中になりすぎるのはいいが、ちゃんと手元以外を見ろ」
綺麗になった右手に麟がチョコを乗せて、左手に琴海が紅茶を乗せてくれた。
「水分もとってないでしょー。いくら星が授業ボイコットしていいからって、食事と水分だけはちゃんと取りなさい」
親友というより過保護な姉を持っている気分になってしまうのは、何故だろう?
「まさか昼を食べていないとか、言わないよな? あ・か・り?」
麟が私の肩に手を置き、静かな声で問いかけてくる。その言葉に私の心臓は飛び出るんじゃないかと思うような、大きな音をたてた気がした。
「食べたよ・・・・・カロリーメイトを一本」
目を逸らしながら、それだけを言葉にする。
「そ・れ・はー、食べたとは言いません!」
その答えが気に入らなかった琴海は、容赦なく私の頬を真横へと伸ばしていく。
「琴海、購買!」
「らじゃー!」
麟の言葉に財布だけを持って駆けていく琴海を呼び止める暇もなく、私は呆然とするしかなかった。
「チョコは取り上げ、水分をとれ。食事を抜くな!」
「集中してるとつい、ね。目の前に広がってること以外、どうでもよくなっちゃって」
視線をやった先にはいくつかの私の作品。そのどれもが人が『幻獣』と呼ぶ、こちらでは存在しないと言われている存在。
でも、私たち三人だけは知っている。
彼らは確かに実在していて、それがこの世界ではない場所に何も変わらず生きていることを。
そして、彼らは言い伝えにあるような悪神ではないということを、知った。
気が付いたらそこに居た私たちに、優しく手を伸ばしてくれた彼らを忘れない。
姿かたちが違ってもそれが個性だと、それでいいのだと教えてくれた。
「あーあ、会いたいなぁ」
深く息を吸って、それは溜息となって排出されていく。
どうしようもなく、会いたい。
あの世界に戻りたい。
「気持ちは同じだがな、それで食事をとらないのはどういうことだ?
まさか、死ねば行けるとでも思っているのか? 星」
麟の声に怒りが混じるのを感じて、私は首を横に振った。そんなことをしたら、出会ってくれない。みんなして、さっきの二人のように私を怒るに決まってるから。
「ううん、思ってない。もしそれができたとしてもきっとそんな死に方をした私じゃ、追い出されちゃうよ。
本当に、集中しすぎて時間を忘れてただけだよ」
首元から出すのはあの世界でみんながくれたアクセサリー。
グラムナートさんが、アモンさんが、フィニアさんが、みんなが一つずつ鉱石を集めて、磨いてつなげてくれた私の宝物。
麟はブレスレット、琴海は髪飾り、それぞれが形こそ違うけどあの世界の欠片で、私たちが確かにそこに居た証拠だった。
「会いたい、会いたいよ」
二人しか彼らを認めてくれない、この世界で。
こちらでは一時間にも満たなかった、儚いものだったけど。あの世界では五年もの間を過ごしていた。
初対面だった私たちを、親友と呼ぶほどの関係にしてくれた五年間。
何もかも好きじゃなかった私に、たくさんの好きなものをくれた。
心の底から笑うことのなかった琴海に、本当の笑顔をくれた。
他者に関心を抱くことのなかった麟に、優しさを与えてくれた。
笑って、怒って、泣いて、また笑う。
「私にそんな当たり前をくれた・・・・あの世界に」
「それは私も、琴海もそうさ」
何も言わなくても、わかってくれているかのように私の頭を麟が撫でる。
「・・・・だが、気持ちはわかるが、書いているときにちょっかいを出した者へのあの眼はやめた方がいいぞ?」
「・・・・見てた?」
「見たからこそあのタイミングで入ってきたんだろう。まったく、お前といい琴海といい、稀に怒るときの沸点が低すぎる」
肩をすくめながら、麟は近くにあった椅子に腰かける。
「聞き捨てならなーい。私は沸点低くないよ~?」
パンパンに詰め込まれた袋を抱えて小走りで入ってきた琴海に、麟はわかりきっていたかのように隣の椅子を叩いて、座るように促す。
「いや、低いからな? 今日、教室でお前が怒った理由は何だったか思い出せ」
私は琴海に手渡された蒸しパンを食べつつ、その話を聞く。
「え~っと、私の髪飾りを変だとか言ったおバカに他の人には何をしたかわからない速さで合気道の技を決めて、飛んでいって貰ったかな☆」
私は『髪飾り』のあたりで持っていた蒸しパンをおもわず握りつぶしてしまった。柔らかいものだし、ふんわりとしたときを食べる物なのに・・・・もったいないことした。そして、琴海へと親指を立てることを忘れない。
「いえー!」
「称えるな。アホゥ」
二人して麟にはたかれ、琴海は悪びれもせずに口笛を吹き、私は少し痛む頭を押さえた。
「でも、麟もブレスレット触られたり、変なんて言われたら怒るでしょ?」
「そうだが、加減をしろ・・・・お前たちは加減を知らないだろう」
私がそう問うと苦笑交じりにかえって来る。
「・・・何のことやら?」
「加減? 必要かな~?」
「まったく、お前らは」
小林 琴海が、こんな腹黒いことを知っているのはきっと私と麟だけ。
乾 麟がこんな風に頭を抱えて、困り果てる姿を知っているのは私と琴海だけ。
そして、私が人並みに笑ってしゃべることを知っているのは、琴海と麟だけだろう。
『俺だって知ってんぞ、お前の笑顔がとびきり最高だってことをよ』
私は突然聞こえた懐かしいその声を、聴き間違える筈がなかった。
「グラムナート、さん?」
閉じこもっていた私に、今よりもずっと何も見ようとしなかった私に世界をくれた翡翠色のドラゴン。
私が生まれて初めて恋をした、紅茶色の瞳をもった雄々しきドラゴンの声だった。
『おうよ! 俺だぜ、星・・・・・いってぇな! 何しやがるアモン!!』
『方法を探し当てたのは我ぞ!! 一番に話す権利は本来、我にある!』
『あなたたち? そもそも一人専用じゃないのだから、自分だけ独り占めするようにしなければ聞こえるのよ・・・・』
「・・・・アモン?」
それは同じだったからこそ、本気になってぶつかり合い、互いに成長した者の名。
「フィニア!」
それは彼女の姉のような、母のような、親友のような優しきフェニックスの名。
『麟! 聞こえているな、我の伴侶となるべき存在よ!!』
「うな?! ま、まだそんな戯言を言っているのか!? アモン!!」
アモンさんの熱烈な告白に狼狽し、怒りだしていながらもその顔には羞恥以外のものが確かに会った。
「フィニア! フィニア―♪」
『はいはい、何? 琴海』
「呼んでみただけ―」
『相変わらず元気そうで、嬉しいわ』
琴海は満面の笑みでフィニアさんの名を呼び、声を聞いてさらに笑みを深めていく。
『話が進まんじゃろうが、三人とも』
「「「ヨル爺!!!」」」
老成した声が響き、私たちはいっせいにその名を呼んだ。
『ほっほっほ、元気じゃったか? 儂の可愛い孫娘たち』
彼の名はヨルムンガンド、私たち三人を実の孫のように可愛がってくれていた祖父のような存在。その姿は巨大な蛇で、普段は十数メートルくらいで行動している。
「帰れるの? そっちに」
『・・・・ウム、そうなのじゃがな』
「ヨル爺?」
言いよどむヨル爺の声に私は首をかしげ、琴海はその態度にあからさまにイラついていて、麟は真剣な顔でヨル爺の言葉を待っているようだった。
『もしできたとしても、お主たちはその世界に二度と戻ることは
「「「怒る(よ、ぞ、わよ)? ヨル爺」」」
私たちの声は重なりあい、思いは一つだった。
「私たちがどれだけ祈り願ったか、わかるか?」
それは誰とも知らぬ悪戯な神への怒りであり、
「私たちがどれだけ好きだったか、わかる?」
それは想い続けた者たちへの再会の喜びであり、
「私たちがどれだけ救われたか、わかる?」
それはどれほど願っても、出会うことすら許されなかった私たちの深い悲しみだった。
「この世界にもう一度戻りたいと思う?
ありえないな、そもそも私たちは戻りたいなどと思ったことはなかった」
始まりは偶然でしかなかった。突然投げ出された先に、今まで一度も会ったことのない二人の少女と一緒にそこに居た。
「そもそもー、私たちがそっちから出ていきたいなんて望んだことなんて、一度もないし」
協調性皆無、共通点なんてそれこそ性別ぐらいしかなかった私たちはすぐに別れて、一月もしないうちにある場所で再会を果たした。
「そこが私たちの場所、ベルフェクスこそが私たちが居たい場所なんだよ!」
あの世界でたった一つだけ町として機能している場所、それが首都の名であり世界の名だった。
首都で再会した私たちは互いにパートナーに連れられて、その表情はまるで別人で。
三人で示し合せることもなく笑って、事情を知らないパートナーたちを困らせたのは良い思い出だった。
変わった私たちはその時にようやく手を取り合って、ひと月の間に起こった多くのことを教え合って、パートナーから貰った多くのものを自慢し合った。
そうしてやっと、私たちは友達になった。
『そうか、そうか・・・・・すまんの、いらぬ心配と質問をしてしまったのぅ』
『ほら見ろ、俺が言った通りだったじゃねぇか。ジジィとアモンはいつも考えすぎなんだよ』
『フンッ、貴様にはわかるまい。繊細な女性の心などな。まったく、こんな者のどこが良いのだ? 星殿は』
『アモン? そう言うことを言うのは感心しないわね』
「・・・・・全部」
四人がそうして話している中で、私は堪えきれずに呟いていた。
「「『『『『えっ? 星(殿、ちゃん)』』』』」」
六人が同時に聞き返してくるけれど、私はもう我慢できなかった。
「全部に決まってるよ、グラムナートさん」
『星・・・・・!!』
「私に世界を、広くて、大きくて、綺麗な物を教えてくれたんだもん。笑うあなたも、怒るあなたも、不安げなあなたも、あまり見たくはないけれど悲しんでいるあなたも、全部好き。
だからね?
そんなあなたの元へ、私は帰りたいよ。グラムナートさん」
私の口元は自然と緩んでいき、そこには居ないけれどいつもその高さにあった彼の顔が私には見えていた。
『ジジィ・・・・次元の壁をぶち壊していいか?』
『駄目に決まっておろうが!!
えぇい、翼を動かすでない! 鬱陶しい!!』
グラムナートさんの珍しい冷静を装った声と、ヨル爺の怒鳴り声が聞こえてくる。
『・・・・・・麟よ、本当によいのか?』
「それはどういう意味だ? アモン」
悲しみを帯びた真剣なアモンさんの声に対して、怒りをはらんだ麟の声が返される。
『以前、言っていたではないか。〈今の私ならば、あの世界を美しく思えるのだろうか〉と・・・』
「そんな前に言った言葉を・・・・・。~~~! あぁ、確かに言ったな」
私は聞いたことのない言葉、それはおそらく変わっていく中での一月の中で言ったのだろう。麟は苛立ちを隠すことなく、頭を掻きむしった。
「アモン、貴様はバカだ!!」
『なっ?! なにを
「黙れ! 私が話している!!
大体なんだ? そんな最初の頃の言葉を出してきて、私に帰ってほしくないのか?!」
『そんなことある筈がないだろう!!』
「ならば、どうしてそんなことを言う?
それともアレか、アモンは私が嫌いな存在をパートナーと呼び、傍に居るようなものだと思っているのか!?」
『そんなことはある筈が・・・・
しばらく終わりそうもない、犬も食わなそうな喧嘩は放置することにした。
二人とも気難しそうに見えて、根はとても素直。嫌いな人間は全てを否定し、一緒に居ることすら拒む。だが、好きな人間に対しては全てを肯定し、可能な限りで協力を惜しまない。
『はぁ・・・・結局私が説明役なのね』
最後にはフィニアさんの呆れるような溜息が聞こえた。
「アハハ、そんなフィニアが私は大好き―。
結局、誰も彼もがしないようなことをしてくれる。好き勝手してたこんな私だって、その大きな翼で包んでくれたんだもんね」
『私もあなたが好きよ、琴海。だから、早く帰ってらっしゃいな』
さらっと互いに言い合うのがこの二人の関係、正直すぎるのが凄く羨ましく思う時もある。けど、私とグラムナートさんの関係は誰にも負けない。
でも、そんなことは私たち全員が思っているだろうことも、わかってしまう。
それほど深い絆で、私たちは結ばれていると確信しているから。
『三人ともその場でいいわ、あの日渡したプレゼントを掲げて。
こっちに戻ることを強く祈って頂戴』
『本来ならばもっと細かいことがあるのだが、それはこちらでカバーしよう。
願ってくれ、我らに会いたいと』
『なぁに、難しく考えることはねぇよ。俺たちはお前たちが来れば何もいらねぇ。
俺たちの隣に、目の前に現れる。それだけなんだからよ』
三人の言葉を聞きながら、私たちはそれぞれアクセサリーとブレスレット、髪飾りを掲げて、ただ祈り、願い、想像した。
三人が、それぞれのパートナーの前に現れる。ただ、それだけを何よりも真摯に祈るだけ。
「ねぇ?」
「どうした? 星」
「珍しーね、星ちゃんがこういう時に話しかけてくるなんて」
二人の意外そうな声を聞きながら、自分でもその通りだと思って苦笑する。
「二人は最初に会ったら、何をする?」
誰にかは、必要ない。
「そう、だな・・・・私はとりあえず、殴るな」
麟はそう言って好戦的に笑う。
「私は抱きつく~♪ 星ちゃんは?」
「私は・・・・・
答えようとした瞬間に、私たちは光に包まれていく。
私たちは一切の悲しみも抱くことなく、生まれた世界を放棄した。
×
突然の浮遊感、私は空から落ちていた。
「・・・このスタートはないんじゃないかなぁ」
感情が一周回って、冷静になってしまう。
もちろん、この声は風によって掻き消されていた。周りを見ても、二人はいなそうなのでおそらく全員バラバラなのだろう。
もしかしたら命も危ないかもしれない状況下で、私は笑っていた。
だって、朝日が昇るこの世界の空は、あの世界なんかよりも私にはずっと綺麗に見えたから。
そして、その朝日と同じ方角から、私の好きな翡翠色のドラゴンが見えていたから。
空中で停止して、私の小さな体を彼は抱きとめてくれた。
「星!」
「グラムナートさん!」
思いっきり抱きついて、離れることを拒むように。
「私、泣かなかったよ? あの世界に帰ってから、一度だって泣かなかった。
笑おうとはしたけどね、三人で笑ってもいたけど・・・・・私は本当に心から笑ってはいなかった」
感情は溢れる泉のように。
「あぁ・・・・それで?」
「だからね、グラムナートさんの前でたくさん泣いた後・・・・・・それ以上の時間をあなたと過ごして、笑いたいの」
「あぁ! もちろん、いいぜ!!
俺の大切な星、俺の道標、俺の・・・・・・大事な番」
そう言って私たちは広い空の中央で二人きり、互いを抱きしめて離さなかった。
きっと他の二人もどこかでそれぞれの再会をしているんだろうと、そんな確信を持ちながら。
いかがだったでしょうか?
少しでも楽しんでいただけていたら、幸いです。
やはり、私は異種族の恋愛が好きなようですね(笑)




