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36 「狐狸妖怪」 「骨董市」 「お祖父ちゃん子」 「瑠璃」

久しぶりの、後付けでもなく、四題がないわけでもない。

最初から四題をもとに書いた作品です。

少しでも共感を抱き、楽しんでいただけたら幸いです。


読んでくださっている皆様、本当にありがとうございます。

では、本編をどうぞ。

 一目見てどうしても欲しくなるものにあなたは出会ったことはないだろうか?


 (わたし)はどうしても目が離せなくて、そこで思わず足を止めてしまった。

「うーん? どしたぁ? 燁子(ようこ)

 私の手を引いていた祖父も私が止まったのに気付いて、こちらを振り向いてくれた。

「・・・・・・」

 何も返さずじっと一点を見つめる私に、祖父もそれに視線を向けた。

「珍しいなぁ、燁子を夢中にさせる物があるのかい?」

「・・・・・」

 私はその言葉を返さずに祖父の手を離れて、そこにポツリと置かれていた空の色よりもずっと濃い青をした杯を手に取った。その側面には金の狐と金の狸が描かれ、互いを追いかけるようにかける姿があった。

「そいつかい?」

「うん、なんだかとっても仲良しみたいで羨ましいなぁ」

「! 嬢ちゃんにはそいつらが仲良しそうに見えるか」

 帽子を目深にかぶって寝そべっていた店主らしきおじさんが、突然私の元に近寄ってきた。サングラスを被ったスポーツ刈りで、割と強面のおじさんに対して私はまっすぐ見つめ返した。

「どうしてそう思った?」

「怖くないから。表情が」

「ハハッ、そうか、そうか!」

 私がそうきっぱりというと、おじさんは嬉しそうに笑った。

「嬢ちゃん、お前さんにやるよ」

 おじさんは私にそう言ってその杯を手渡してくれた。

「えっ?」

 戸惑って前を見ると、おじさんはさっきと全く変わらない笑顔でそこにいて、視線を合わせるためかしゃがんでいた。

「お代もいらねぇよ。

 ただ、嬢ちゃん。一つだけ、約束してくれや」

 サングラス越しで見えない目は私のことを見ていることがわかり、私も杯を落とさないように、割れないようにしっかりと持った。

「絶対、そいつらを嫌わねぇでやってくれ。大事に、大切にしてやってくれ」

 その言葉はどこか重たく感じた。でも、私は迷うことなく頷いた。

「うん、大切にする。絶対に嫌わない」

 私はそう言うとおじさんはさらに笑みを深め、頭をガシガシと撫でてくれた。

「ありがとよ」


 その人とはそれ以降、一度も会うことはなかった。

 気まぐれに開かれる骨董市だし、同じ人ともう二度と会うなんて奇跡はそうそうないことをわかっていても、その人にもう一度会ってみたいと思って私は何度も足を運んだ。

 でも、結局もう二度と、会うことはなかった。


                      ×


 あれから十年、時間が経つのは実に早いものだと思う。

 私は今、祖父の葬式が終わったところだった。

 その中で私は顔を合わすのが今日初めての親戚たちと行っている宴会には参加せずに、一人祖父の部屋だった場所であの杯に触れていた。

 祖父の趣味だった骨董、それが置かれた棚をいじくられることは私が拒否し、家族がどう扱っていいかもわからないこの部屋は私のものになるようだった。

「おじいちゃん・・・・」

(一緒にお酒を飲む年齢になるまで生きてくれると、言ったじゃない)

 その誕生日である今日、葬式が終わった日とは、何て皮肉だろう。

 この杯で一緒に飲むことを約束してくれた人は、もういないというのに。

「寂しいなぁ」

 葬式の最中、泣けぬ私を『冷酷だ』、『何も感じないのか』と囁く親戚の言葉は耳に入っていた。

 だが正直、ここ数年顔すら見せなかった親戚どもに何を言われても、痛くもかゆくもない。

 家族内でも、おそらく一番祖父と一緒に居たのは私だろう。


 祖父を尊敬して、大好きだった。


 近所の人に『お祖父ちゃん子だね』と言われることが嬉しかった。


 祖父がいろんな綺麗な骨董を私に見せてくれて、農作業を教えてくれることが好きだった。


 病気での入院生活が始まってから、両親が陰で『早く死んでくれればいい』などと言っているのを聞いたときはその場で激昂した。


 その話を知っていたのか、祖父は怒りを隠せていない私の顔に触れて言っていた。

『燁子がそうやって怒ってくれる。それだけで十分、じいちゃんは嬉しいぞぉ。でも、じいちゃんは燁子が笑った顔が一番好きだ』

 その言葉に私は泣かされた。

 そんな私の頭を、祖父は昔から変わらない深いしわが刻まれた大きな手で、優しく撫でてくれた。


 高校でも両親と同じことを言う人はたまにいた。

 両親へとしたように、私はその場で友人が止めるのも聞かずに怒り狂った。


 許せなかった。

 実の家族が、年老いて世話が大変だからと言ってそんなことを吐き捨てることが。一切恥じることもなく、その言葉を笑って頷く周囲に対しても同様だった。


「おじいちゃん」

 ぽたぽたと、涙がようやく零れてきた。

 葬式の数日間はまったく流れなかったというのに、どうしてこうも私は不器用なんだろう。

 そして、もう一度骨董品が並ぶ棚を見る。

「あれ? これって・・・」

 見慣れているはずの骨董棚の奥に数本の酒瓶が置いてあった。

 形が面白い、電球みたいな酒瓶だった。一番前に置かれた酒瓶に触れて底を見てみると、懐かしい祖父の字でこうあった。

『燁子と飲む用 20××年 4月8日』

 そこには私が二十歳になる年の誕生日が、つまり今日の日付が書いてあった。

「・・・・いつから用意してたんだか、まったくおじいちゃんは仕方ないなぁ」

 溜息が零れ、酒瓶の隣にはおそらく持ち運ぶために用意しておいたのだろういつかの骨董市で買った古めかしい持ち手のある竹籠まで並んでいた。

「用意がいいんだから・・・・どうせ、あそこで飲むつもりだったんでしょ?」

 そこには居ない祖父へと語りかけるように、私は上を向いて呟いた。

 

 もう涙は、止まっていた。


                   ×


 私は愛用のバイクに杯とお酒が割れないように新聞紙で包んで入れ、ある場所へと走っていた。

 バイクに乗るのも祖父の影響だった。

 どこに行くにもバイクを使っていた祖父、その後ろに乗るのは少し大きいヘルメットをつけた私だった。風が気持ちよくて、足元で早く道が過ぎ去っていくのが怖かったけど子どもの頃から免許を取るんだと決めていた。

(確かこれ、ネイキッドだったかな。『乗りやすくて、風を感じるの』って言ったら、店の人が薦めてくれたんだよね)

 色は朱に近い赤、祖父が私に似あうと言ってくれた色。

「着いた・・・本当にあっという間の距離だよね。

 子どもの頃は、とっても遠くに感じてたのになぁ」

 バイクを降りてヘルメットをとりつつ、邪魔な髪を振り払う。お酒と杯を竹籠に入れて、私はいつも祖父と座っていたベンチへと腰かけた。

 今宵は上弦の月。多くの人が半月と呼ぶ二つの内、右半身だけが見える月の名。

 杯へと酒を注ぎ、夜空へと少しだけ掲げる。

「乾杯」

 一人でそうつぶやき、酒を呷った。

 慣れないアルコールの香り、下が痺れるような味、喉が焼けるような感覚、何が美味しいのか、まだよくわからなかった。

「あーあ、美味しいかわかんないや」

 そう言って二杯目を注ぎ、また一息で呷る。

「ホント、綺麗だよね。お酒も、この杯も、月も、この世に映るもの、ぜーんぶ」

 溜息が零れ、三杯目を注いでいく。

「やっと、出会えましたね。燁子さん」

「ホント、長かったわね」

 タヌキ耳を生やした茶の強い色合いのショートカットの女性と、キツネ耳を生やした金というには眩しくない日本の山吹色のような髪を私と同じように長く伸ばした女性が立っていた。

 何故か私は彼女たちを『知っている』と感じた。

「貰ってもいい?」

「えぇ、どうぞ」

 数本あるうちの酒瓶を、そのまま直接飲もうとするキツネ耳の女性へと杯を渡す。

「使っていいよ」

「・・・誰だか聞かないのね? 燁子」

 杯を受け取りながら、キツネ耳の女性は笑う。月に照らされるその姿はとても色っぽくて、綺麗だと思った。

「ヒゴロモと、ナズナでしょ?」

 私はキツネ耳の女性とタヌキ耳の女性を、順に指差して笑う。

 私と祖父だけが知っている彼女たちの名前、他の誰に言ってもわからないだろう彼女たちの名前。

 この杯に描かれた、狐と狸の名前。私と祖父だけの秘密の話。

「やっぱり、わかってしまいますか。燁子さんには」

「からかおうと思っていたアタシには、つまらないけれどね」

 ヒゴロモは空にした杯をナズナへと回す。

「おじいちゃんが話せなくなる前にね、教えてくれたんだよ。私が名前を付けた二人は実際にいるんだよ、ってね。

 あのおじさんが言っていたのはあなたたちのこと、おじいちゃんの部屋でたまに置かれてた三つの杯はあなたたちと晩酌したときのものだったんでしょ?

 まったくさ、本当はここでその二人とも飲みたかった。あのおじさんは・・・・・もうこの世にも居ないって、なんとなくわかる」

 勘みたいなものだけど、あの人は自分の死を悟って彼女たちの友になってくれる存在を探していたんだと思う。

 そして、祖父も自分の死を悟り、その前に私に伝えたかったんだろう。

「燁子さん・・・・どうしてそれを」

 驚きを隠せないナズナへと私は空になった杯をもらいつつ、日本酒を呷った。

 まだ美味しいとは感じないけど、気分転換にはいいかもしれない。

 悲しい気持ちが少しだけ、誤魔化せる。

「アハハ、勘。いつわかったかなんて、明確にはわからないけど・・・・・骨董市を歩いてると、あのいろんな時代を過ごした物たちに触れているとなんとなくそんな気がしてきた」

「そう、ですか」

「でも、私が今、あなたたちを怖がらない、嫌わないでいるのはあの時の約束だけじゃない、かな?」

 そのまま杯へと酒を入れ、もう一度呷る。

「ちょっと、あんた初めてのお酒の癖に飲みすぎじゃない?」

「私はあのおじいちゃんの孫だよ? これくらいじゃ、倒れないよ」

 ヒゴロモの制止の声を聞かずに私はまた注ぎ、それを二人へと向けた。

「私と同じくらいおじいちゃんの傍に居てくれて、私とずっと一緒に居た親友たちへの礼儀。それと・・・・」

 言おうかを迷い、月を見る。

 変わらぬ上弦の月、星が瞬き、人の気配などない。

 誰に飾る必要があるのだろう? 聞いてくれるのはもう十年も一緒に居る友達だというのに。

「私と今、こうして一緒に居て思い出を共有してくれることかな。

 ありがとう、ヒゴロモ、ナズナ」

 4月初めにしては温かな風。

 ここから見えるのは都会になりきれていない町の山の方が多い景色、祖父は私をことあるごとにここに連れてきて飲み物やお菓子を持って二人でいっぱい話をした。

 誕生日の日、家族で祝った後もバイクを走らせてここに来て、私にいろいろな話をしてくれた。

『燁子、誕生日おめでとう』

 毎年、この日に、この場所で私にそう言ってくれた人は、もういない。それだけが妙に寂しい。

 少し酔ったのかもしれない。月が、町の光りがぼやけていく。

 誤魔化すように杯の酒を空にする。

「それはこちらの言葉ですよ? 燁子さん」

「まったくね」

 ヒゴロモに杯を奪われ、ナズナの手が両肩に触れる。

「あなたが(わたくし)たちに新しい居場所をくださいました。それだけでなく名を、大切にしてくれたという思い出を、この身に刻んでくださいました」

「そして、あんたは今もアタシたちを受け入れた。何事もないようにね」

 二人へと振り向くと二人は笑っていて、私も少しだけ笑う。

「だから、今はいないあの方々の代わりではなく」

「アタシたちはアタシたちとして、あんたにプレゼント贈りたい」

 ヒゴロモはその場に杯を置いてから、私から少し離れる。二人はそう言うとその場で一回転して、狐と狸の姿となった。

「今宵、舞い踊るは風狸(ふうり)・ナズナと」

空狐(くうこ)・ヒゴロモでございます」

 互いに互いの紹介をして、頭を下げる。

「十年ぶりの舞となりますので、いささかお見苦しいところもございますでしょうが」

「どうかご容赦あれ」

 そう言った直後、ヒゴロモが九本の尾を振り青い炎が舞台のように周囲を飾る。そこへナズナが軽快に走り回り、赤い炎がそこへ花々の模様と足していく。

 人の姿へと変わって、穏やかな橙の着物を纏うナズナと真っ赤な着物を纏うヒゴロモは雰囲気が全く違うというのに、不思議と互いにその魅力を殺し合うことはなかった。互いに扇子を持って、その場で舞い踊る。


 ヒゴロモの舞は激しく、力強い。

 その姿は散ってなおも姿をとどめる牡丹のような、日本の女性の強かさを表しているようだった。


 対象にナズナの舞は儚く、優しげだった。

 その姿は散っていく姿こそが美しい桜のような、古き良き日本女性のあり方を体現するようだった。


 互いに互いを活かす。否、共にあることこそが当然だとでもいうように舞い踊る二人は綺麗だった、

『表裏一体』

 彼女たちのことを私はまだ何も知らないが、きっと昔からそうだったんだろうということが伝わってくる。

 そして、手元にあるこの杯がそんな彼女たち自身と同じ時間を生き、人と共に在り続けたのだろう。

「あぁ、いいなぁ」

 自分の知らない時間が今、手元にあり、その一端を彼女たちが見せてくれる。

 時が過ぎても褪せぬ美しさ、誰もが語り継ぐ美。それはなんと素晴らしいのだろうか。

 私は杯を傾けながら、しばしその舞に見入っていた。


 舞が終わる。私はその余韻をしみじみと感じながら、ゆっくりと笑った。

「ありがとう、綺麗な舞を見せてくれて」

 私のその感想に二人は目を丸くして、笑い出した。

「?」

 首をかしげる私に、ひとしきり笑った二人は私の方へと近づいてきた。

「申し訳ありません。おじいさまも私たちの舞を見た時全く同じことをおっしゃっていたので」

「・・・・まったく、本当にそっくりな祖父と孫ね」

「私にとって、それ以上の褒め言葉はないよ」

 祖父は先にこの光景を見ていたのか、ずるいなぁと少し思う。

「どうせなら一緒に・・・・見たかった」

 また一杯、呷る。顔が熱い。頭がグラグラと揺れている。

 でも、気持ちいい。

「酔ってるの? 燁子」

「フフッ、これが酔っているっていうことなら、ずいぶん気持ちいいもんなんだね。酔うってことは」

 杯をそっと置き、ヒゴロモとナズナから扇子を奪う。

「借りるよ、今なら少しだけ楽しい舞が舞える気がする」

「そりゃ、酔ってりゃぁね」

「大丈夫ですか? 燁子さん。足元がふらついていますよ?」

「いい、いい。大丈夫だから・・・・お礼にしては微妙かもしれないけど、ね」

 私と入れ違いで杯を持って酒を飲むヒゴロモと、私へと手を伸ばして支えようとするナズナ。それにたいして手をプラプラ振って、さっきまで二人が立っていた場所へと行く。

 舞なんて自信はまったくないが、気分がいい。常に手首に巻いている髪ゴムで下の方でくくり、私は二人に背を向けたまま手を交差する。

 広げると同時に扇子を開き、深く息を吸った。

 動きたいように体を動かす、手を風に任せて振り回し、自分が見たい方向へと視線を動かす。足もそうだ、行きたいところに行けばいい。

 炎が激しくて、月が綺麗で、森が逞しくて、風が優しい。

 華が美しくて、海が壮大で、空が見ていて、人が生きている。

 この世のすべてはそこに在るがまま、時間を過ごしている。

 だが、時を数えようと、物を残そうと、その時間の尊さを言葉にしたのはきっと人間だ。

 壁画に残して、物を作って、覚えていてほしくて文字を作って、さらにそこに『自分だ!』って叫びたくてオリジナリティを捻じ込んで、自分を表現したのはこの世界できっと人間だけだ。

「アハハ」

 楽しいなぁ、世界は。

 なんて凄いんだろう。

 なんて綺麗なんだろう。

 人の一回の生だけじゃ、全然足りない。

「ふふ、私も混ぜてくださいな」

 ナズナがそう言って酒瓶を持ちながら、舞い踊る私の傍へとさっきと同じように舞いながらやってくる。

「アタシも入るよ」

 杯を持って、ヒゴロモも入ってくる。私は笑って頷いて、三人で誰かが見ているわけでもない舞を舞う。

 力強く、儚く、自由な舞は私がその場で眠りに落ちるまで続いた。


                     ×


「そろそろ起きなよ、燁子」

 額をぺちぺちと叩かれながら起こされるのは、初めてだった。

「ヒゴロモ、もっとまともな起こし方があるでしょう?」

 私が薄く目を開けると二人がまだいることに少し驚く。

「うっ、眩しい」

 朝日の光りに目を閉じ、私はヒゴロモの膝を占領していたことに驚いた。

「・・・・ごめん? 膝枕、ありがとう? どっちにすべき?」

「燁子さん、その前に言うことがあるでしょう」

 言うこと? ・・・・今は朝だ、朝日が眩しく木々を照らしている。綺麗、空気がうまい。ただ、ベンチで寝たから少し体が痛い?

「完全に寝ぼけてるわね・・・・・」

「そのようですね・・・おはようございます。燁子さん」

「おぉ! おはよう・・・・うん?」

 私は首をかしげて、二人をもう一度見る。

「消えないの?」

「うわぁ・・・・それ、ひどくない? 燁子」

 私の頬を引っ張るヒゴロモに対して、さらに首をかしげる。

「いや、だっておじいちゃんと一緒に居た時は朝になったら消えてたじゃん?」

 完璧に目覚めきってない私は体を起こしつつ、額に手を当てる。頭が痛くなるらしいのに、痛くなってないんだけど。喉も全然平気だし、目覚めが悪いのはいつものこと。

「消えていてほしかったですか?」

「まさかっ! そんなことあるわけないよ」

 ナズナのその言葉に私は即座に切り返した。それだけは絶対にない。むしろ、起きた時誰かが傍に居ることなんて年齢的なものでほとんど無縁だったから、嬉しいくらいだ。

「ならよろしいですね」

 ナズナはそう言ってにっこりと笑った。

「今日から私たち、燁子のところに住むから」

「うん、わかった・・・・・って、はい?」

 適当に頷くと、聞き捨てならないことを言われたことに気づいて聞き返す。

「了解貰ったし、行きましょうか。バイクもいじってあるし」

「そうですね、勝手にさわってしまって申し訳ないと思ったんですが、サイドカーをつけさせていただきました」

「・・・・・まぁ、いっか」

 なんだか知らないところで話が進んでる気がする。私は考えることを放棄し、後ろにナズナを、サイドカーにヒゴロモを乗せた。

「車、買おうかなぁ」

 三人で乗るなら、バイクよりもそっちの方がよさそうだと思って思わず口からこぼれた。高校でも、大学でも結構貯金できたし。

「なら、三人でバイク乗ろう」

「でも、荷物とか車の方が楽じゃありませんか?」

「両方、買えばよくない? 三人で過ごすんだったら、それでいいじゃん」

 説明とかどうするとかも話し合わないで、私たちは暢気にそんな話をしていると私の言葉に二人が何度目かの驚いたかのように目を丸くしていた。

「アタシたちとそんなに長く過ごす気なのかい? 燁子」

「そうじゃないの? 二人が嫌なら

「それはありえませんが、よろしいのですか?」

 最終確認のようにナズナとヒゴロモに詰め寄られる。

「もう、十年になる友達でしょ? 当たり前だよ、出発するよ」

 私はそう言って二人が乗ったことを確認して、バイクを動かした。

 走っている中で二人が何かを言っているが、視界の隅に見える二人は笑っていたからそれで十分だった。


 世界は綺麗で、人の命とは尊くて、言葉が偉大で、時間という重みは何にも代えられない。

 それは当たり前だけど、だからこそ見落とされてしまうこと。

 『だから、みんなに知ってほしい』なんて、私はけして思わないけど。

 知らないことよりは知っていた方がきっと、人生は楽しくなる。

 今こうして、二人の(人じゃないけど)十年来の友達を得た私にはそう思える。


いかがだったでしょうか?


ストックがまるで進みませんねー。

案はいくつかあるんですが、キャラが動かないんですよね・・・。

何とかしないとなぁ。


感想、誤字脱字報告、お考えになった四題お待ちしています。

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