26 「空」 「螺旋階段」 「デート」 「バカップル」
今回の作品は恋愛でありながら、若干コメディが混じっていると作者は思っています。
やはりコメディは苦手なのですが、少しでも笑ってもらえることができたら幸いです。
読んでくださっている皆様、本当にありがとうございます。
では、本編をどうぞ。
老婆は孫を連れて、螺旋階段を歩いていた。
上品な着物をまとった、姿勢の美しい老婆は真っ白になった髪を後ろで一つにまとめ、しっかりとした足元で上へと向かう。
孫である少女はそんな祖母を見ながら、いつもとは異なるどこか厳しい空気を纏う老婆に戸惑いを感じていた。
「おばあさま?」
「なんだい? 葵」
「どうかしたの?」
不安げに問う孫に老婆は少しだけ困ったような顔をして、両手で孫を抱き上げた。
「どうもしてないさ・・・・ただ、あの変わり者にお前さんを会わせたくないのさ」
「かわりもの?」
孫娘が繰り返す言葉に老婆頷きながら、ため息をついた。
「そう、変わり者さ・・・・・・この学園に住み着いて、誰かを幸せにすることが生きがいにしてる」
老婆はそう言うと少し悲しげに、螺旋階段の先を見つめた。
「この学園にはね、葵。願いを叶えてくれる神さまがいるのさ」
孫娘を抱えながら、老婆はまた階段を上りはじめる。
「おばあさまー」
「なんだい? 葵」
「神さまのお願いは誰が叶えてくれるの?」
老婆は孫娘のその言葉に驚いたように目を開き、微笑みながら孫娘の頭を撫でた。
「それは・・・・きっとそれに気づくことができた誰か、さ」
孫娘は不思議そうな顔をして、首をかしげる。
「葵、お前ならあの孤独で、ここに自分から縛られることを選んだあの神さまを本当の意味で救えるのかもしれないねぇ」
×
幼い少女は大きくなり、祖母や両親に薦められるがまま多くのことを吸い込んでいった。
剣道、合気道、華道、弓道、柔道、あらゆる道には通じた。
苦にすることなく、ただ楽しげに過ごした。だが、そんな順調な彼女の道は一つの事故で予想から外れることになる。
「「葵?!」」
病院に駆け付けた両親の声に体を寝かせたままの少女は、横に控えてくれていた白い狼をそっと撫でていた。
その少女の眠る上では大鷲が優しく風を送り、体の上には守るようにして白い大蛇が寝転がっていた。
「父さん、母さん?」
体を起こす少女の目と体には白い包帯が巻かれ、綺麗だった黒い髪は事故のせいか白くなっていた。
「葵、どうしてあなたが」
抱きつき涙ながらにそういう母に、少女は申し訳なさそうにその頭を撫でる。
「葵、その・・・・・目は」
気まずそうに何か言いかける父に、少女は口元に苦笑を浮かべて首を振った。
何も言わなくともわかっているかのように、その姿に父は声を出すことなく涙を零した。
「大丈夫・・・・・・私は大丈夫だから、泣かないで」
取り乱すことなく、そう母に囁く少女は強かった。
「後悔はないから」
彼女はうっすらとほほ笑みすら描いて、病院服のまま凛として座っていた。
どこか浮世離れしてさえいるその美しさ、日本女性特有の強さを持っていた。
「「あおいぃ」」
そんな娘を持つ親は情けなく、泣き崩れる。
「ええぃ! 鬱陶しい!!
泣くのなら二人は出てお行き!」
「お祖母様、いらしたのですか」
声のする方を見つめる少女は自分から離れる手と体を感じて、扉を閉じる音を聞いていた。
「葵、もうお前の両目は見えない。わかっているね?」
「はい、覚悟はしていました。
それにあんな事故の中で、この程度で済んだのならいい方でしょうしね」
「・・・・・お前さんのおかげでほとんどの人は生き残れたのだけれどね。
しかもその中で大怪我をしていたのはお前だけ、あの二人が泣くのはしょうがないさ」
少女を襲ったのは不幸な事故、幾重にも偶然の重なってしまった事件と呼んでもいいほどのものだった。
ただの高速道路で起こったトンネルでの玉突き事故に過ぎなかったそれは、少女が所属している才ある者たちの学園を狙ったテロだった。トンネルはバスといくつかの車を巻き込んで入口を爆破された。
少女は友人たちと共にその中からの脱出を試み、それを成功させた。
結果論からすればそれだけのこと。
が、『誰も怪我をしない』ということを目標に置かれた計画の中で、計画者である彼女だけが怪我を、しかも治ることのない傷を負ってしまった。
「それにお前が怪我したことをハイクラスの連中も自分を責めているし、ここに来るときもまだ身内以外は面会謝絶だというに無理やり来そうなのが数名いて困ったよ」
「そう、ですか」
少女は何も見えていないはずだというのに、窓の方向を見ていた。
「・・・・・・辛いかい? 見えないことは」
「そんなことはないですよ。お祖母様」
「もう二人はいない。私とお前たち以外、ここには誰もいない。強がらなくていいんだ、葵」
「・・・・・そう、ですか。だから、二人をサッサッと追い出してくださったんですね」
祖母にそう促され、少女は見えない目から静かに涙を零す。
「お祖母様」
探すように手を彷徨わせ、すぐに祖母の服の端をまるで子どもがするように掴んだ。
包帯は涙で濡れて、ほどけていく。
先程の両親に見せることのなかった少女の弱さがここにはあった。
「私はもう、蒼い空を見れないんですね。
大好きな空を、螺旋階段の先にある景色を、私はもう二度と・・・・」
見えないはずなのに、彼女は祖母の顔を見ているように顔をあげた。
露出した目元に傷はない。
外傷はないが、彼女の目は光を感じることはできない。
どんなに高度な医学を駆使しても、彼女の視力は戻ることはなかった。
「ハイネ、ユリア、コーラスト、美鈴、冬飛砂、みんなの顔ももう見えないんですね」
その手は次に何かを求めるように彷徨い、愛狼・九曜はその手に頭を摺り寄せた。首元には サッと愛蛇・久遠が巻きつき、その右肩には愛鷲・空翠が頬に頭を押し付ける。
「あなたたちの姿も見れない。この世界は、真っ暗になってしまった」
辛そうに、少女は俯くこともなく空のある方向を眺めている。
「葵・・・・・・」
祖母は何もできずに、大切な孫娘を見た。
「アタシももう行くよ、お前をこんなにした奴らに少し話が残ってるからねぇ」
「その方面よりも、事故に巻き込まれた人たちのケアをお願いします。お祖母様」
「わかってるさ、葵は安心して体を休めな。それじゃ、また来るよ」
そう言って立ちあがり、去っていく祖母はとてつもなく恐ろしい気を放っていた。
×
「・・・・それで? いつまでそこでそうしているの? みんな」
少女は不意に天井を向いて、そんなことを言った。
「空翠、九曜、お願い」
何も返さぬそこを見て、大鷲と狼は呼ばれると同時にそっと主から離れ、天井へと狙いを定めた。
「悪かった・・・・・出てくるから、二頭をひかせてくれ。葵」
和服を纏った青年 ――― 冬飛砂 ――― がそう言ってどこからか現れる。それに異国の軽装の青年 ――― コーラスト ―――、騎士鎧とメイド服の女性 ――― ユリア、ハイネ ――― が続く。
「そうやって最初から出てくればいいのに・・・しょうがないんだから、みんなは」
苦笑をしながらも、幸せそうに少女は笑う。
「他のみんなは?」
「各自、自分のできる方面で君のために何かできないかを探っている。
我らの得意な方面は力に偏っているし、何人かは傍に居るって決めたんだ」
「過保護なんだから、みんなは」
「当たり前です。私たちにとって、誰よりも大事なあなたのことですから」
そう言ってハイネは、病室に用意されていた簡易キッチンで人数分の紅茶を作りだした。
「・・・・・・・アオイ」
ユリアはただ大事そうにきゅっと葵の小さな白い手を握り、悲しそうに目元の包帯を見る。
「無茶をするよねぇ、僕らのお姫様は」
コーラストは葵の白くなってしまった髪を手で梳くようにして撫でる。
彼女がいかに彼ら、彼女らに大切に思われているかがその様子からうかがえる。
「園芸部門の連中が香りの強くない、葵の好みに合うものを選んだんだ。感じるか?」
葵の傍で冬飛砂が花束を花瓶に挿してから、そっと近づける。
葵は空いていた左手でそれを捜すようにしているのを見て、ユリアがその手を花のもとへと導いた。
「ありがとう、ユリア・・・・・・とても、いい香り。
森次君たちにもあとでお礼をしなきゃね」
「・・・・・手を触っただけで誰かわかるのか? 葵は」
冬飛砂は呆れるように、驚くように笑う。
「わかるわ、みんなの手は全然違うもの。
優しくて、温かくて、心地いい。みんなの気持ちが伝わってくるみたい」
葵のその言葉にそこにいる全員が頬を染め、それ故にそんな彼女を守りきれなかった自分たちが不甲斐ないかのように顔を歪めた。
「・・・アオイが無事でいるなら、ひとときでも気分転換になるのなら私たちはそれでいいんだ。お礼よりも、今はただ自分のことだけを考えてくれ。
もっと、自分を大切にしてくれ。お願いだ、アオイ」
右手を両手で大切そうに握るユリアは、己に泣く権利などないように涙を零すことはない。
「そそ、ユリアの言うとおり!
姫様はのんびり休んで、僕らに何でも頼んでおくれよ」
軽い口調で言い放つコーラストの目はただ彼女だけを見つめ、陽気に笑って見せた。
「何もしないのは苦手なんだけどね・・・・」
「知っていますよ。ですが、苦手でも何でもしてください。せめて、怪我が治るまでの間は。
怪我が治ったら、私たちがあなたをどこへでも連れだして差し上げますよ。私たちのお姫様」
そう言って苦笑する葵の空いた左手の甲へと、臣下が主君へと忠義を証明するようにキスをした。
「そんなこと言って、何さらっと葵に口づけなどしているんだ? ハイネ」
刺々しい声とともにサッとハイネと葵の間に割って入る。
「あら、いいじゃないですか。冬飛砂。それとも自分ができないからって嫉妬ですか?」
「そんなことは言っていない!」
「二人とも?」
「グルゥゥ!」
ハイネと冬飛砂が喧嘩しそうになったのを葵の一言で、九曜がうなりあげ、空翠と久遠が狙いを定める。
「喧嘩は?」
「「しない。させない。両成敗」」
喧嘩をしていないユリアがハイネの頭をはたき、コーラストが冬飛砂の腹に肘鉄を入れて制裁を加えた。
「「ごめんなさい(すまない)、葵」」
「よろしい」
葵はそう言って満足気にする。
「仲がいいくせに、ハイクラスのみんなはすぐに喧嘩するんだから・・・・まったくもう」
あきれ果てながら、ハイネの手から紅茶をもらう葵の口元は笑っていた。
「私たちは仲が良くなんてないさ、アオイ。だが、そう見えるのは・・・・・いや、そうなったのはアオイとあの学園にいた神のおかげだ」
少し前を思い出すように、異界の女騎士だったユリアは外を見た。
「ユリアの言うとおりです。
あなたと、あの神がいなければ私たちがこうして手を取り合って、誰かを・・・・あなたを守り思うことなどありえなかった」
葵からカップを受け取りながら、かつて異界の魔女だった存在は微笑む。
「そうだな・・・・・過ぎた才はただ己の揺るがぬ自信と、孤独を意味する。何かに秀でない方がいっそ幸せだというのに」
まだ痛む腹を撫でながら、ただ力だけを求めていた求道者だった侍は吐き捨てた。
「それすらも下から見れば、贅沢な言葉なのかもしれないけどね・・・・・今頃、かつて学園に縛られた神さまはどこに居るんだろうねぇ?」
王になる筈だったかつての異界の王子は微笑んで、アオイの掌にクッキーを置いた。
「どこでしょうね?
二百年近くあの学園にいたんだもの、もう帰ってこないかもしれないわね」
その彼女に見えたほんの少しの悲しみの表情に四人は敏感に反応した。
―― コーラスト? 死にたいんだな? 貴様 ――
―― お前というやつは、それは禁句だろう ――
―― あなたの口を音もなく、縫い付けてあげましょうか? ――
―― ごめん。ワザとでじゃないんだ ――
三人の怒りのアイコンタクトに対して、必死にアイコンタクトで謝り続けるコーラストの表情は青ざめる。ポケットの中に覚えのない電子機器、おそらくは盗聴用だと思われるその機器にはハイクラスのクラス印がついていた。
―― フッ、コーラスト。貴様の運命は決まったな ――
―― あぁ、見事に散れ ――
―― 葵への失言を十分に後悔なさい ――
「四人とも? どうかしたの?」
「いや、なんでもない。アオイは心配することはない。それに・・・・あれだけアオイに惚れていた男が帰ってこないはずがないさ」
<最高の褒め言葉だね、ユリア>
突然、閉められていた筈の窓が開け放たれ、風と共に何かが入ってきた。
多くの葉に包まれるようにして現れたその存在は
「遅れてきた分際で、かっこよく登場できると思うな」
ゴンッ
ユリアが葉に覆われたままの存在の頭あたりを殴り、
「邪魔だ、葵が見えなくなるだろう」
ゲシッ
体勢の崩れたところを冬飛砂が蹴り上げ
「埃が舞いますね。その根源を掃き捨てましょうか」
パタッパタッ
倒れかけるところでハイネがどこからか出した箒で足をすくい
「おっと、手が滑った」
バシャッ
完全に倒れたところにコーラストが紅茶をぶちまけた。
この間、およそ五秒。
何の合図も無しに四人が一人の神をその場に無様にこけさせ、熱湯ではないがそこそこ熱い紅茶を体へと注いだ。
「やれやれ・・・・・手荒い歓迎だなぁ」
「フフ、お久しぶり。ミコト・・・・・・それとおかえりなさい」
「ただいま、葵」
ベッドから伸ばされた手を取りながら、その青年は立ちあがる。白い髪に金の瞳、真っ白いファーコートを纏った青年は笑った。
「君が怪我をしたと聞いて、世界の果てから飛んできたよ」
「・・・・そんなことしなくてもよかったのに、心配かけちゃった?」
「僕が君を気にかけていない時なんて、存在すると思うのかい?」
ミコトと呼ばれた青年の言葉に葵の頬は真っ赤に染まる。
―― こいつ、殺ってもいいか? ハイネ ――
―― 我慢してください。私も正直、抹殺したいのですから ――
―― こいつが死ぬと葵が泣く。それに葵が望んだ伴侶だ、不本意だが ――
―― 同意だね。でも、僕らは彼にも借りがある。祝福するしかないよ ――
―― チッ ―― ×4
アイコンタクトは忙しなく行き来し、結局『殺す=葵が悲しむ=ダメ、絶対』に行き着き、心底残念そうな表情をして全員がそれを見るだけにとどめた。
「でも、もう前の私じゃないみたいでしょ?
本当に、私は駄目よね。最後の最期でいつも、詰めが甘くて・・・・・あなたが好きだと言ってくれた色じゃなくなっちゃったわ」
自分の白髪に触れ、悲しみなど見せないように笑う。
「それに・・・・・目も見えなくなっちゃった。
あなたとまた、屋上で空を見ようって言ったのに・・・・・ごめんね」
「そんなことないさ、君は僕の願いを・・・・僕の知らなかった僕の願いを教えてくれた。僕がいなくても、誰が願うことがなくてもあの場所に誰もがいれるようにしてくれた。
神だってできないことを君はしてくれたじゃないか」
ミコトはそっと髪に触れながら、その髪を自分に絡めるようにして彼女を抱きしめる。
「僕や九曜たちとお揃いだね」
―― ハイネ、離せ! 今すぐに奴の息の根を止める!! ――
―― 気持ちはわかりますが、彼女を巻き込んでしまいます ――
―― それに奴が死ねば、葵が余計に悲しむ。まぁ、その気持ちは痛いほどわかるが ――
―― ここでなくても彼がハイクラスに行ったら、もっと手厳しい歓迎を受けることは間違いないからね。僕らは今の状況を記録しておけばいいのさ ――
お互いしか見えていない彼らは知らない。
部屋の片隅でクレイモアを片手に暴れ出そうとしているユリアを羽交い絞めにして抑え込むハイネと、冷静ぶってはいるがその利き手は腰につけられた刀にかけられている冬飛砂。そして、黒い笑みを浮かべながら、どこからか取り出したデジカメで映像を記憶しているコーラストたちの姿を。
それでも声を出さないのは彼らが葵を愛するが故に、だろう。
彼らはちゃんとわかってはいるのだ。
彼女が望んだ幸せが、彼が傍にいることだと。
自分たちが彼女に抱いているのは恋愛感情ではなく、敬愛と友愛、そして、崇拝のものだということが。
彼女の幸せを崩す気などない。むしろ、願ってすらいる。
だが、ミコトという存在は収入ゼロ、数百年間あの学園に引き籠り、しかも一年前に学園から解放されてからは異世界中を走り回るという自由人。
小姑や舅としては納得がいくわけがない。
しかも一人一人が『葵を嫁に欲しいのなら、私を倒してから』と豪語している。
しかし、ここにいる者たちはまだ誰も知らない。
そのために神に一般常識および一定以上の学力、武術を学ぶコースが某鬼理事長によって用意されている事実を。。
「いろんなところに行って、多くの綺麗な景色を見てきたよ。
でも、やっぱり君がいるこの世界がいい」
葵をひょいと持ち上げて自分の膝に乗せながら、小さな肩に顔を乗せる。
「君の隣の景色は、どんな景色よりも綺麗だ」
「・・・・・私もそう、あなたと見たあの屋上でのデートは楽しかった」
「空を見て、僕と話していただけなのに?」
おかしそうに、悪戯をするようにミコトは微笑んだ。
「えぇ、一緒に居るだけで幸せなんて、ありがちな言葉だけど・・・・初めてその言葉を言った人はきっと、一緒に居れなかったから言ったんだろうなぁって。あなたが旅立った時に思ったもの」
一緒に居ては誰もが気づけない、他者の尊さ。
自分を理解してくれる存在の尊さ、その存在がいるだけでくれる安らぎ。
他者と比較することでしか存在することのできない人間が、比較以外でも他者と居ることを望む理由。
それは比較の中で生きていく中で、そんなもの関係なく全てを曝け出せるところを無意識に求めるからだ。
「だから、私と一緒に居て。ミコト」
うつらうつらと眠りながら、葵はそれだけ言って眠りについた。
「わかったよ、葵。ずっと居る、君とこの世界に」
そう言って彼もまた愛しき少女を抱きながら、そのまま眠りについた。
そんな二人を見ながら、四人は溜息をついた。
「まったく、見せつけてくれるな。冬飛砂、手伝ってくれ」
「わかっている」
ユリアと冬飛砂は二人がかりで座ったまま眠る二人をベッドにいれ、ハイネがそっと布団をかけてやる。その間にコーラストは紅茶のカップを片づけた。
「結局、僕たちも甘いよね。この二人に・・・・・まぁ、認めるしかないんだけどね」
「認めていても・・・・私たちのお姫様をもらうんです。少しくらいはいいでしょう?」
そう言って眠る二人を守るように、四人はお茶をしながら彼らが起きるのを待つのだった。
神は孤独だった―――だから、一つの場所に縛られることで自分を慰めた。
天才たちは孤独だった―――だから、己の世界を捨てて物好きな神によって導かれたこの学園に入った。
それを救ったのは一人の少女だった。
彼女はどこにでもいる、ありふれた秀才でしかなかった。
多くのことに興味を持ち、多くのことを成し、人並みにそれを得る。
当たり前であって、当たり前でない存在。
ただ一つ、彼女に天性の才があるというのならば、それは『人に愛される』才。
そして、ほんの少しの挑戦心と人へと注ぐ情。
誰かに手を伸ばす、ただそれだけは何も特別なことはない。
だが、その少女の伸ばした手が多くの者を救った。
神も、天才も、もしかしたら世界も。
世界を救うのはいつだって、そんな些細なことなのかもしれない。
彩る世界はただ美しく、人が何を思うかによってその色は変わって見え、そこに映る存在によって光は違ってくる。
ならば、彼らにとって少女は全てを美しく映してくれた愛しき光だったのだろう。
これは一人の少女が一人の神に愛され、多くの者に好かれる物語。
これからもずっと幸せとなっていくことが約束された物語。
いかがだったでしょうか?
【7777文字】・・・・偶然ってあるんですね。
ワードで打ち込んだのをコピーして貼り付けて、投稿前に一度推敲しているんですが本文でちょうどこの文字数になってかなり驚いています。
感想、誤字脱字報告、お考えになった四題お待ちしています。




