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25 「百合」 「ティータイム」 「独占欲」 「ヤンデレ?」

百合警報を発令させていただきます。


・・・『突然何言ってんだ、こいつ』と思われるかもしれませんが、今回はガチで百合でございます。

正直、読み直すと書いているときの自分の正気を疑いたくなるような作品です(それでも後悔はしておりませんが)

弟に見せたところ、しばし絶句し、『お前、百合専門で書けば?』と悟った顔で言われた作品でございます。

昨日のを投稿した時点でずっとこれを投稿していいのかと迷いましたが、投稿することにいたしました。

そんな作品ではありますが、楽しんでいただけたら幸いです。


読んでくださっている皆様、本当にありがとうございます。

では、本編をどうぞ。

「~♪ ~♪」

 あぁ、研究が進むわ。

 私が鼻歌を歌うなんて、ずいぶん人間らしくなってしまったわね。

 でも、そんなことすら彼女がもたらしてくれた変化なら、心地よくすらある。

コンッ コンッ

 扉を叩く音、私の部屋の扉をこんな風に優しげに叩いてくれるのは彼女しかいない。

 その前から聞こえた足音で彼女のものだとわかっていても、心が浮き立つ。

「どうぞ」

 感情を押さえていても、彼女だとわかっているから他には向けない優しげなものになってしまう。

 あぁ、どうして私はこんなに彼女のことが好きなのだろう。

「紅茶とクッキー持ってきました。休憩にしませんか? ヴィナさん」

 二人分の薫り高い紅茶と彼女の手作りだろうクッキーをもって、満面の笑みと共に私にそう言ってくれる。私も振り返りながらも、口元にうっすらと笑みを浮かべていることだろう。

「えぇ、そうね。そうしましょうか、リヒナ」

 私は立ちあがり、テラスの窓を開け放つ。

 かつては研究室もこだわらずに薄暗い部屋で研究づけだったというのに、彼女に出会ってから日当たりも景色もいい場所に研究室を置くようになった。

 こうして彼女が一緒に居てくれるようになってからは必ず憩いの場にと、テラスを用意するのは当たり前になった。

 一室だけだった部屋の間取りも、一つの街に一つの家とでもいうように買うようになった。幸い研究の成果によって私のお金あり余っているし、ある成果によって私を生んだ組織は出るついでに潰してきた。

 兄弟、姉妹たちの行く末は知らないが死んではいないだろう。

 最近にいたっては彼女のおかげなのか、彼らも私に便りを寄越したり、実際に訪問するということもある。

「ヴィナさん? どうかしましたか?」

 私が長く黙っていることを心配してくれたのか、彼女が私を見つめていた。

「少しだけ過去のことを、思い出していただけよ」

 彼女の長く伸ばされた陽だまり色の髪に触れ、そこに口づけをする。私の闇の色とは違う、愛しい光の色。

 私には無縁だと思っていた、眩しい昼間の色。

 不意に彼女が私の頬に手を当ててきて、私は少しだけ驚いた。

「・・・・少しだけ辛そうな顔してますよ? ヴィナさん」

「そう、だったのね・・・・・私自身、よくわからないのだけど」

 私より頭一つ違う小さな体、私よりも五つも幼い筈の彼女。

 それなのに彼女はいつも私の感情に敏感で・・・・・私の感情を、私に気づかせてくれる。

「ヴィナさんは私よりも頭がいいのに、『よくわからない』が口癖ですよね」

「自分ではよくわからな・・・・あっ」

 クスクスと笑う彼女に私は、彼女が教えてくれた口癖を無意識に口に出そうとしていた。

 こうして私をからかえるのも、彼女だけ。

 彼女だけが、私を知っていることが嬉しい。

「おいしいわね、このクッキー」

 私は意図的に話を逸らそうとした。

「それはよかったです。昨日の夜のうちに作っておいたんですよ、クッキーは出来立てよりも冷めてからの方が私は好きなんです。

 あっ、今度は出来立てのクッキーも一緒に食べましょうか。冷めてからの方が好きではあるんですけど、出来立ての特別な感じも、とってもおいしいんですよ」

 話を逸らしたことを気づいているのか、いないのか。彼女はそう言って笑っていてくれる。

「それはとても楽しみだわ」

 リヒナとこうして一緒に食べているだけで、こんなに特別なのにそれ以上なんてどんなに美味しいのだろう。少し想像できないけれど、彼女のことだ。一週間もしないうちにきっとそれを実行してくれる。今からとても楽しみ。

 二人でそうしてテラスにいると、有象無象がやってきた。

「あっ、リヒナのクッキー。いただき」

「させません」

 テラスに勝手にあがり、クッキーに手を出そうとした彼女の幼馴染という存在の手を私は払いのけた。

「もう、ゴルド。お行儀悪いよ! それに勝手に人の家のテラスに入らないの!」

「はっ、だったらテラスで見せびらかすように食ってんじゃねぇよ。

 大体、テメェも容赦なく俺の手を払ってんじゃねぇよ!! 無感情女」

「はぁ・・・・・あなたは

「ヴィナさんは無感情なんかじゃないよ!!

 優しく笑って、怒って、何かを想って悲しむこともしてる! それに気づくこともできない人がヴィナさんを悪く言わないで!」

 私が言い返す前に彼女が怒鳴っていた。

 私も有象無象も驚き、彼女はクッキーと紅茶のセットを右手に持って、左手は私をひいて部屋へとずんずんと入って行った。乱暴に戸が閉められ、カーテンをかけられる。

 カーテンの両端を持ちながら、彼女の背中は震えていて、泣いていることが分かった。

「どうして、あなたが泣くの? リヒナ」

 私はその背をそっと抱きしめた。

 かつて、我を失った私を彼女がそうしてくれたように。私がただの作られたモノでしかなくなるのを、彼女が止めてくれたこと日のように。

「だって、だって・・・・ヴィナさんが酷いこと言われて、私突然目の前が真っ赤になって、怒鳴って、悲しくて、感情がいっぱい溢れてきて、気が付いたら、ヴィナさんの手を引っ張ってて」

 こんな混乱状態の彼女を見るのは初めてかもしれない。

 始めて出会った時の私の冷たい行動や言動にも、手なんて震えていなかったというのに。

 自分の感情がわからなくなってようやくこうして戸惑い、泣いている。

「・・・・・・私が人じゃなくなっても、あなたは私を恐れないでいてくれた」

 手にほんの少しだけ力がこもる。

 あなただけが世界で一人、私を、私たちを『何も変わらない、同じ人間』だと言ってくれた。

「あなたの感情の全てを私に教えて、リヒナ。私もあなたに私の全てをあげるから」

 耳元でそっと囁くように言葉を続ける。

「私はあなたを、愛している」

「ヴィナ・・・・・さん?」

 私へと振り向いてくれる涙にぬれる愛しい人。その涙をそっと舐めるように口づけをする。

 笑顔も、泣き顔も、嬉しそうな顔も、怒った顔も、苦笑する顔も、困った顔も、決意した顔も、悩んでいる顔も。

 春の陽だまりのような雰囲気も。

 私を呼んでくれるソプラノの声も。

 光のような髪も。

 私に触れてくれる手も。

 海の青を映したような瞳も。

 私の胸の中にすっぽりと収まる小さな体も。

 強い芯を持っていながら、どこか脆さを持った心も。

 私とは違うコロコロと変わる表情も。

 全てが愛おしい。

「拒まれてもいい。あなたが拒めば、私は何もしない。

 どんなにあなたが私を嫌いになっても、私があなたを嫌いなることは絶対にありえない」

 彼女が少しでも落ち着いてくれるように、綺麗な髪を撫でる。

 どういわれても、どう嫌われてしまっても、私の世界の中心はあなた。

 拒まれても、それは変わらない。

 きっと私は、私を拒んでいるあなたも好きになる。

「だって私は、あなたの傍に居るだけでこんなに幸せになれたんですもの」

 『惚れた弱み』、それがこれなのだろう。

 抱きしめている。それだけで心臓が破裂してしまいそうで。

 口づけを髪に、頬にするだけで、頭がどうにかなってしまいそうなほど熱くなっている。


 あぁ、もう駄目だ。

 私の世界には彼女しかいない。


「ヴィナさん」

 泣いたせいか目元を赤くしている彼女、そんな表情も好きで抱く手に力が無意識にこもってしまう。

「少しだけ、痛いです」

 彼女の困ったような声に私はその手を離す。

 拒まれても好きだという自信はある。

 だが、『辛くない』とそれはイコールではない。

「いえ、あの、その! 嫌じゃないです! ヴィナさんに抱きしめられるも・・・・・その、キス・・・・されることも・・・というか、むしろもっとして欲しいって言うか、それ以上も・・・・・」

 あぁ、一体神は何を思って、こんな可愛らしい人を私に出会わせてくれたんだろう。

「もう、本当に可愛い。リヒナは」

 抱きしめる。強く、強く、でも彼女が痛くないように加減しながら。

 彼女の香りがする。さっき一緒に食べたクッキーの香りもする。

 駄目だ、本当にもう。私は彼女が好きすぎて、駄目。

 彼女が私の生活の中に居ないことが想像できない。

 彼女の隣に、他の誰かが立っていることが許せない。

「リヒナ、あなたは知っている? キスをする場所にはそれぞれ意味があるのよ」

 優しく耳元で囁き、まずは彼女の髪へ。

「髪は思慕」

 彼女の手を私の唇に持っていき、彼女へと右目でウィンクをする。

「手の甲は敬愛」

 手を返し、手首をそっとまくる。

「手首は欲望」

 手を誘導して私の顔へと触れさせてから、掌にも唇を落とした。

「掌は懇願」

 少しだけこれ以上の行動することに迷う私は、彼女に瞳で問うた。

「他の場所はどんな意味があるんですか?」

 彼女は私の視線を受けて、頬を赤らめながら微笑んでくれた。私はそっと彼女を抱き直して、その肩へといく。

「肩は恋慕」

 肩から首筋、そして咽喉へ。一つずつ確認するようにキスをしていく。

「首筋は執着、喉は欲求・・・・・あなたが欲しい、私そのものだわ」

 あなたと出会って、私は人間らしい欲深い生き物になった。

 あれほど嫌った人間、それがこんなにも愛おしい。

 彼女と目が合う。私はそっと彼女の髪をあげて、額と頬にもキスをする。

「額は友情、祝福、頬は親愛、厚意、満足感・・・・私の気持ちからは少し遠ざかったわ」

 苦笑しているのかもしれない、今の私は。

 本当にしたい場所など一つしかないというのに。

「まだあるのだけど、この姿勢じゃできない場所ばかり。あとできるのは一つだけ・・・だけど」

 本当にしていいの?

 私は勿論嬉しい。

 愛しいこの子とキスできることはどこだって嬉しいに決まっている。戸惑う私の唇に彼女の唇が触れた。

 触れるだけの一瞬のキスだった。

 けれど、私は生まれて初めてこの幸せに包まれて死にたいと願った。

「唇の、意味は何ですか?」

 そう言う彼女の顔はこれまで見たこともないくらい真っ赤で、おそらく私も顔を真っ赤にしているだろう。

 私たちは今、互いに恥ずかしさよりも強い喜びに包まれていると断言出来る。

 だから、もう一度私の方から触れるだけの優しいキスをした。

「愛情・・・・愛情よ、リヒナ。フフ、顔が真っ赤よ?」

 そう言ってリヒナの横顔を撫で、彼女は私に甘えるようにその手に顔を乗せてくる。

「ヴィナさんだって、顔が真っ赤です」

「とてもだらしない顔をしているでしょう?」

「はい・・・・でも、初めて見るヴィナさんのその表情も大好きです」

「私もよ・・・・あなたを愛している。よいしょっと」

「キャッ」

 彼女を腰から足のところと肩を持って、抱き上げる。

 これを人は『お姫様だっこ』というだったわね。

「ありがとう、私を拒まないでいてくれて。

 ずっと、ずっと言いたかった。ずっと、こうして抱きしめていたかった」

 ギュッとそのまま抱きしめる。あぁ、彼女がいる。私の手の中に居てくれる。

「私はずっとあなたのものだけど、あなたは私のものになってくれる?」

 私は彼女を見つめて、問いかける。

「はい! ヴィナさん、私はあなたのものですよ。そして、あなたはわたしのものです」

 出会ってから初めて見るその知らない熱のこもった瞳も、笑顔も、ほんの少しのいたずらっ子みたいなその表情も愛おしくて、私は再び彼女の唇を奪う。

 私たちの暮らしの続きを語るなんて野暮なことは、神さまだって許さない。

 知ることだけは許しましょう。ただし、これ以上語ることがあれば、わかっているわね?



 私は彼女のためなら、世界だって壊せる。

 私たちを認めない世界なんて、私たちから拒めばいい。

 愛しい人、優しき人、可愛い人、彼女がいれば、私には何もいらない。

 彼女がいるから、私は人として生きれる。

 彼女が望むなら、世界の理だって作りかえてみせましょう。

 彼女となら、永久にも、永劫にも、悠久にも生きていたいと私は望むのだから。


いかがだったでしょうか?


・・・・・あの時の私は何を考えて、書いてたのかがとても気になりますね(汗)

いや、怖いくらいスラスラ書けたということだけが残ってて、もう気が付いてたらこうなってたんですよねー。

まぁ、一作品目に『百合物』なんて題のやつ出しといて、何を今更というのもありますが。


感想、誤字脱字報告、お考えになった四題お待ちしています。

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