21 「砂時計」 「白い世界」 「美少女」 「階段」
我ながらよく続きますねぇ。そして、自分自身案外ストックが切れないことに驚いています。
投稿と同時進行で増やしてはいるのですが、詰まることのほうが多いというのに続いてるのはひとえに読んでくださることがいることでモチベーションが保たれているのでしょう。
ありがとうございます。
本当にいくら感謝しても足りません。
その感謝を投稿を継続し、少しでも文章をよりよくしていくことで返していきたいと思っています。
では、本編をどうぞ。
白い、白いその世界でその少女はそこを見ていた。
肌も、髪も、纏うワンピースも、金の瞳以外は全てが真っ白な少女は首元に下げた小さな砂時計を少し揺らしながら、白い階段に座り込んでその光景を見ていた。
青い海、緑の陸地、それに絡みつくように回って消えては現れることを繰り返す白い白い雲。
だが、少女が見ているのはそれではない。
その中の小さな島国の中にあるさらに小さな島、その中の米粒ほど小さな白い病院のベッド。
そこには穏やかに眠る少女と、眠っている少女を気にしつつも読書をする少女がいた。
眠っていた少女が目を開けると、読書をしていた少女は本を置いて穏やかに微笑んで『おはよう、コヨリ』と呟いた。少女もまた笑顔を返して『おはよう、シオリちゃん』という。
『また、倒れたんだね。ごめんね、いつも迷惑かけて』
『迷惑だと思うなら、私はここに居ない。いつも言ってる』
『それでもごめ『ごめんじゃなくて?』・・・・ありがとう、シオリちゃん。あれ? カオリちゃんは?』
『・・・・・そこにいる』
シオリと呼ばれた少女はコヨリの体を指差した。
『えっ?』
コヨリは驚いたような表情をして、その顔はすぐさま深い悲しみと戸惑いへと変わっていく。
『そんな・・・・・まさか・・・? カオリちゃん、が・・・・・私に』
シオリはその表情から決して目を逸らさない。
その瞳は真剣すぎて冷酷にすら映ってしまうほど、だがそれは涙によって少し湿っていた。
『いつも身勝手なあいつが望んだこと、私たちの感情的な部分の全てを持っていたようなあのバカが・・・・・・勝手に望んで、私がそれを手伝っただけのこと』
『シオリちゃん!』
『事実さ、あいつは最後まで身勝手だった。私に全てを押し付けて、コヨリに悲しみを背負わせて、自分だけが自己満足に包まれて・・・・死んだ!』
それを眺めていた白い少女は砂時計をほんの少しだけいじってから、その階段から飛び降りた。口元にほんの少し悪戯そうな笑みを浮かべて、その瞳から一筋の涙を零して。
「ずいぶん言いたい放題じゃない? シオリ」
「「!?」」
二人の少女は突然現れた少女に驚き、その少女を凝視する。
「カオリ、ちゃん?」
「やっ、コヨリ。うん、顔色もよくなってるね。よかった」
白い少女―――カオリ―――はそう言って、コヨリへと笑いかける。
「カオリ」
「うん?」
パンッ
反応するまもなくシオリによってカオリの頬は張られた。受けたカオリは怒ることなく苦笑いをして、シオリを見ていた。
「これ、何に対するお叱り?」
「全部だ、バカ」
「シオリにしては珍しく曖昧な表現ね」
「もう一発欲しいらしいな、カオリ」
「それは勘弁。もう死んでても、この姿だと痛いのよ」
「「・・・・・・!?」」
その言葉に息をのむ二人をカオリは優しく見つめ、笑う。
「今、私は少しズルをしてここに来てる。神さまと交渉して、これから百年ほど仕事をする代わりにこの時間をもらったの。手のかかる友人たちに最後ちょっとだけ会うためにね」
カオリのそんな言葉にシオリは鋭く睨みつけた。
「・・・・それで? 今更、何を言いに来た? それとも私に叱られに来たのか?」
「シオリちゃん!!」
シオリの言葉を咎めるようにコヨリは名を呼ぶが、言われたカオリは笑ったままシオリを通り抜けた。本人の体を、まるで自分が存在しない人間だと証明するかのように。
「アハハ、損だよねぇ。シオリは・・・・そうやって憎まれ役して、でももう手のかかる私はいないんだからもっと素直になった方がいいよ」
「これは性分だ」
仏頂面の友人に笑い、もう一人の友人へとカオリは笑いかける。
「知ってる。だから、コヨリ・・・・今度はコヨリがシオリを支えてやってよ」
「えっ? 私?」
「そう、コヨリは自分が知ってるよりもずっと・・・・・私たちの中でずっと芯が強い。体の弱さも、もうなくなる。私がおちゃらけて和らげるのはもうできないから」
「カオリ、ちゃん・・・・・うわああぁぁぁぁーーーん」
声をあげてコヨリは泣きだす。そんなコヨリを抱きしめることなく、カオリは顔をあげさせた。
「泣かないの、コヨリはもうそんなに弱くないでしょ? もともと弱くなんてなかったんだから、体ごと誰よりも強くなっちゃえ!」
「カオリ・・・・・死んでも変わらずにバカだな」
「諺にあるでしょ? 『バカは死んでも治らない』それを体現した初めてのバカが私」
シオリの言葉にむしろ胸を張るように笑う。それがこの三人でいるときの自分の役割であるかのように、笑い続ける。
「アハハハ、それにしてもシオリのその真剣すぎる表情、硬すぎるんだよ。コヨリ、笑いなよ。病気は治ったし、これからしてみたいって言ってた水泳だってできる。いくらでもどこにでもいける。二人はすごい、私の自慢の親友」
「バカ!!」
カオリは目の前に居たコヨリから出た予想外の言葉に少しだけ驚き、また笑う。
「カオリちゃんのバカ!」
「そうだよ、コヨリ。私はバカさ、とってもバカさ。自分でもどうしてこんなにバカなのか、わからないくらいね。でも、仕方ない」
「そうじゃないだろう!」
コヨリに続くように、シオリがカオリの襟元を掴んだ。
「シオリ、あの事件だよ? 小さな子どもとアンタを見捨てるなんて選択肢あると思う?
心臓以外全部無事だったあの体を、もう手術しないと目覚めない親友にあげて何が悪いの? どうせあのまま止まって、腐って、焼かれて、灰になる私の体の有効活用方法。私はバカだけど、人の命を見捨てるなんてできるほど薄情じゃない。それが親友たちの命なら尚更」
「えっ? 何、ソレ? どういうこと?」
「コヨリ、今何月?」
「四月、だよね?」
「いや違う、今は八月だ。コヨリ、お前は入学式で倒れて、この四か月間ずっと眠っていた。そして、つい一週間前この町で起きたある事件に私たちは巻き込まれ、そこでカオリはある子どもを庇って死んだ」
シオリは唇を噛み締めて、その事実をありのままに親友へと話した。コヨリはもう驚くことはせず、まっすぐにカオリを見つめた。
「ねぇ、カオリちゃん。カオリちゃんはわかっていたんじゃない? 自分が死ぬことが」
「コヨリ? 何を言って・・・・
「面白い推測をするね、コヨリ。続けてみ」
シオリの言葉を掻き消して、カオリはその先を促す。
「方法はわからないけど、カオリちゃんは自分が死ぬことをいつからかわかっていて・・・・・・神さまもグル?
ドナーカードをとれる年齢になってからすぐにとったのは、自分が死んだとき私に使えるようにわざと体をそうしたの?」
「クククク、アハハハハ、ねぇ、神さま。やっぱりすごいよ。私の親友は、なんとなく降り立ってよかった。ここに来てよかった。
あぁ、人として生きてみてよかった!」
「待て、今コヨリが言ったことが正解ならお前は天使だとでもいうのか?」
「そう! その通りだよ!! シオリ」
二人を痛いほど抱きしめて、少女は語りだす。
「ねぇ、シオリ、コヨリ。天界のちょっとした秘密を知ったあなたたちはこれから死んだあと、人としてはもう二度と転生できなくなる。
もしくはこれから話すことを聞いた後で全ての記憶を消すことで普通に人として生きれる。まぁ、とりあえず私の話を聞いてみてよ」
カオリはこれまで以上に楽しそうに笑いながら、親友たちへと語り始めた。この世界であって、この世界ではなかった世界のことを。
私がここに来ようと思ったきっかけはね、ある時この世界を映した葉の一枚を覗いたときだった。『世界樹』って呼ばれる葉の一枚一枚に世界を映すものなんだけど、その時偶然にもある少女が死ぬ瞬間を見たんだよ。
そう、コヨリ。それはあなただった。そして、そこに居て必死にその手を握って生きることを望むシオリの姿があったんだ。
天使にもいろいろいてね、命を尊ぶ人もいるし、自分が高等だと思ってるおバカもいる。私はそれらに全く興味なしでダラダラしてる怠け者だったんだけどさ。
はい、そこ『お前らしい』とか言わない。でも、あんまりにもシオリが真剣な表情だったから、気になっちゃったんだ二人がどう過ごしていたかがさ。
私がいないだけ、あとは二人が友達になって、親友になって入退院を繰り返すコヨリとそれを傍に居続けるシオリ。体が弱いのに心が強いコヨリ、一見して強そうなのに実は人一倍誰かを想うことができる弱いシオリ。そして、それは最初に私が見惚れてしまった最後の場面に戻ってしまう。
綺麗だった。強くて弱い、儚くて美しい。生の一瞬の輝きを私は初めて感じた。
救われて欲しいって思っちゃったんだよねぇ、二人に。
でも、それって天使じゃできないから。ちょっと仕事怠慢な神さま脅して、転生成功。しかも私の好きなように条件付けのもとで。
最初は死ぬつもりだったんだけど、こうして二人と過ごして、死ぬの嫌になっちゃったから生きるつもりだったんだけどさ。
イレギュラーはね、二つあっちゃいけないんだよ。『私が存在する』と『コヨリが死なない』っていう二つのイレギュラーは共存できない。神さまをいくら脅しても、そればっかりは変えられなかった。
で、今は神さま脅したのがばれて女神さまの方でタダ働き中。でも、人を救ったことを評価されて今は少しだけご褒美にね。
「というわけ、私は人間じゃない。でも、天使って言ってもまぁ命の管理者だからむしろ死神に近い役職についてるわけ」
笑ったまま現状をありのままに教える、というより秘密事項であることを何とでもないかのように人に言いふらす天上の命管理者の一人は笑う。
「・・・・お前は天使だろうとなかろうと不真面目だな」
「感想として間違ってると思うよ? シオリ」
「フフ、でもシオリちゃんの言うとおり。カオリちゃんはどこで何してたって、カオリちゃんなんだもん」
クスクスと笑うコヨリと、苦笑しているシオリ。それを見て少しだけ怒ったように、おどけて見せる。
「さてっと、ぼちぼち帰ろうかなぁ。
これがまた仕事ほっぽらかしてきてんだなぁ、私ってほら不真面目だからさ」
「待て! ・・・・・もう、会えないのか? 私たちが死ぬまで」
「カオリちゃん、私たちの記憶はどうする気なの?」
二人の視線を受けながら、カオリは笑いながら白い翼を出す。
「記憶は二人が望むなら残せる。けど、平凡に生きていくのにはやっぱり邪魔だよ。だから、死が近くなる時まで封じておくのが私の友達孝行かな」
「いや! 私は忘れたくなんていない!! 三人で過ごした日々を、なかったことになんて・・・・忘れたままにしておくなんて絶対にいや!!」
「ふざけるなよ? カオリ。私たちがそんなことをして喜ぶとでも思っているのか?」
そこでようやくカオリは笑みをやめて、真剣な表情をして二人を見た。
「私はもともとここには居なかった、それが元に戻るだけだよ。喜ぶかどうかなんて私は求めてない。
ただ、あのとき見えたあなたたちが、絶望と悲しみ、生への執着を見せたあなたたちに幸せになってほしい。それが、私が生まれて初めて望んだことだもん。
それとも二人はいつもみたいに私と罰則を受けてくれるのかな?」
やはり最後はクスクスと笑って、天使はその翼を広げる。
生と死、それを司る管理機関の執行者の一人。それが独断によって死を受け入れる筈だった命を変えた、本来ならば許される筈もない行いだった。
「受けるさ」「受けるよ」
二人は迷うことなく即決した。
「どうせ、いつものことだろう。お前のしりぬぐいは私たちの役だ」
「カオリちゃんと居ると楽しかった。それが怒られることでもね」
「! 二人もバカだよねぇ・・・・・私に負けず劣らず。
あーあ、やっぱり人として生きてみてよかった。二人と出会えてよかった!」
そう言って二人を抱きしめて、抱え上げる。窓へと足をかけ、その翼を大きく広げた。
「さてっと、じゃぁ・・・・・天界に二名の新たなる天使をごあんなーい」
許される筈の行いを許されたのは、行えるはずもない天使転生の儀を彼女が行えるのは、彼女が神の愛娘だったから。
「お父さんにも、お母様にも怒られそうだけど・・・・・まぁ、いっか」
二人をつれながら、天使の長たる権利を持つ少女は笑う。親友たちと過ごせるこれからをどうしようかと考えながら。
いかがだったでしょうか?
こうゆう友人関係の作品は書いてて迷うことが多いのですが、自然にかけていますかね?
あまり交友関係が多くないのでよくわからず、願望八割で書いているのですが大丈夫でしょうか?
感想、誤字脱字報告、お考えになった四題お待ちしています。




