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19 「偽物」 「家族」 「恩人」 「堕天使」

先日の予告通り、続編です。

ですが、四題内の家族がメインであり、正直ほか三つは沿っていないかもです。

これは前回の話を書いた後にもらった四題のため、彼らが動くところしか想像できなかった私の文章力不足のためです。

申し訳ございません。

ですが、これも私の一つの答えであり、作品だと思っています。

この作品が少しでも皆様に楽しんでいただけたら幸いです。


読んでくださっている皆様、お気に入り登録してくださった方々、本当にありがとうございます。

では、本編をどうぞ。

『堕天使』

 本来堕ちた天使などこの世界に存在しない。

 何故なら、神たるあの方は人が『天使』と呼ぶ本来自分の部下のような者たちも『家族』と呼んでくださる方だから。

 それと同様に『悪魔』も存在しない。

 ただ闇の聖母に近い姿をしたのが彼らであり、神は全てが愛しいものだと言ってくださる。

「闇を受けて白く輝く翼も綺麗だが、光を受けて映える漆黒の翼も美しいじゃないか。我が子らよ。夜闇を音もなくはばたくお前たちの姿はとても凛々しいだろう?」

 その腕には全ての母たる闇の聖母様と、全ての者の希望である光の御子様を抱いて、微笑む神は私の翼に触れてくださった。

「相反する者こそが本当に互いを理解し、互いを必要とするものだ。

 互いを映えさせ、向上させる愛しき関係。私にとっての闇と光がそれであり、私ではないお前たちもそうだ。

 だから、人間と関わることも止めはしない。それを背信などとは私は思うことはないし、規律とすることもない。なぜならば、人もまた我らとは相反する者なのだから」

 神は優しかった。

 その目はいつも世界の全てを見ている。

 小さな命の誕生から、老成した者の死の間際を。

 儚くも志半ばで朽ち果てる者を、想いを果たして逝く者を。

 この広い世界に溢れる者を等しく、愛しておられる。

「人になりたくなる者がいたのならば言うといい。私は喜んで、それに応えよう。

 愛しい者と共に在りたいと望むのはよくわかる。逆もしかりだ、その者を天使としてここに連れてきても私はそれを迎えよう。

 ただし、一つだけ私たち自らが人を殺してはいけない」

 いや、訂正だ。この方は我々に特に優しく、愛していらっしゃる。

「私たちが作った愛しい命だ。

 見守ることも、その手に抱くことも許そう。天の使いになることを相手が拒むのならば、死後でよければここで居住も検討する。

 だが、我らが彼らの生死にかかわることだけは許さん。我らが壊して良いものではないのだ、彼らは」

「・・・・・神よ、早速ですがよろしいでしょうか?」

「聞こう、ルシフェル・・・・・私の息子よ」

 黒き翼をもつ我らの長兄たるルシフェル様が神のもとに跪き、頭を垂れた。

「私には愛した女性がおります・・・・・その者と共に生きるためにこの翼を奪っていただきたいのです」

「・・・・・・そうか、短命だぞ? 人の体は」

「承知の上でございます。彼女と共に生きて死に、子を成し、ただ愛しい家族が・・・・あなた様が見守ってくださるこの世界にあることを誇りに思い、そして嬉しく思います」

「・・・・・・・・わかった。

 ルシフェルよ、健やかにあれ。そして、私たちはいつまでもお前の血がこの世界にあることを願おう。死しても天界の地位など、もういらぬのだろう?」

 その言葉にルシフェル様は頷き、神に手を引かれるがままに立ちあがる。

「だからこれは、私の息子として生まれてくれたことに対する感謝だ」

 神がそういうと、闇の聖母様と光の巫女様がルシフェル様に触れて何らかの歌を紡がれる。

「我、神と共に在りし、創造の虚無なり」

「我、神と虚無より生まれし、永久の希望なり」

 己の存在を歌う永久を超え、永劫たる祝福。

 生まれし時より、我らは皆この方々に祝福され、望まれて存在する。ルシフェル様の背の翼が散り、その羽を神は愛おしそうに拾った。

「お前の家族に、永劫の祝福を。そして、どうか幸せになれ」

「は、ありがたきお言葉でございます。父上も、母上と姉上もどうかお元気で」

「あぁ」

「えぇ、寂しくなるわね。でも止めないわ、あなたは幸せになりに行くのだからね」

「バイバイ、いつも見てるよ。ルシフェル」

 ルシフェル様は立ちあがって我らへと振り返る。

 私たちが憧れた黒き翼はもうそこにはない。私たちが誰よりも頼ってきた長兄たる御方が私たちへと笑った。

「さらばだ、私の多くの弟妹たちよ」

 そして、ルシフェル様はそこから音もなく消え去った。

 それに続くように数名の者たちが神のもとへと同じように跪いて、ここから降りていく。

 愛しい者を持った者、ただ人という儚い命に憧れた者、欲望のまま生きる人間になりたいと望む者、その理由は様々だが神は降りていく者全員に祝福を渡して、それを見送られた。

「皆、解散してくれ。

 命にかかわる仕事以外は休んでいていい、家族との別れだ。辛いと言っていい、泣いていい、憤ってもいい、これを理由に降りてもいい・・・・それではゆっくり休んでくれ」


                     ×


「・・・・・お父様?」

 毅然としていた神はそこから自分たちを除いた者がいなくなると、表情を変えることなく、一筋の涙を零していた。その涙は落ちる前に人が『水晶』と呼ぶものとなり、足元へと転がった。その姿に光の御子が心配そうにのぞきこむ。

「あなた・・・・・立派でしたわ」

 闇の聖母は神の肩に手を置かれ、そっとその頭を抱え込むようにして抱きしめる。

「駄目だな・・・・祝福すべきことだというのに、涙が止まらん。

 私は本当に執着心が強い。あぁ、本当に・・・・・辛いな」

 神はそういうと立ちあがり、妻と娘の頬に軽くキスをしてから背を向けた。

「すまない・・・・・一人にさせておくれ」

 そう言うと神はそこから掻き消え、闇の聖母と光の御子のみが残された。

「お父様・・・・・意地っ張りだけど、優しいよね」

「えぇ、そうね」

 二人はそこにこぼれ落ちていた多くの水晶を拾い上げながら、闇の聖母が取り出した同じものが入った一つの透明な小瓶へと入れていく。

「私たちにとっても彼らは特別な存在であることは間違いないけど、あの人ほどではない。私にとっての絶対はあの人とあなただけだもの」

 酷く突き放したような言葉を闇の聖母は困ったように口にし、娘である光の御子を撫でる。そんな母の手を嬉しそうに受ける光の御子もまた同様の表情だった。

「うん・・・・・いくら兄弟、姉妹と言われても私にとっても家族はお母様とお父様だけ、それはきっとずっと変わらないと思う」

 何もない筈の『闇』を、神は『伴侶』と呼んだ。

 何も存在しないというだけの存在になる筈だった『光』を、神は『娘』と呼んだ。

「あの人がいるから、私たちは私たちでいられるのだもの」

 神が望んだから、在れる。そう言ってしまえば簡単だろうが、それはとても難しいことだ。

 何もない『そこ』に彼は名を与え、なんら疑問を抱くこともなく『妻』と、『娘』と呼んだ。

 『孤独』という言葉もなかったそこに、彼が紡いだ言葉こそが全てとなった。

 全てを無意識に作った神は知らない。

 それが悠久に在ることだけを義務付けられた『闇』にとって、どれほどの救いの手となったかを。

 それがただ与え続けるだけの存在たる『光』にとって、己自身よりも眩しく輝くものだったかを。

 きっとそれを行った神にはわからない。

 それが己の存在をそこに存在させるためのものだったとしても、彼は彼女たちに揺らぐことのない居場所を与えたのだ。

「あの人が見る全てが、私たちの全て・・・・・・だけど、私たちの気持ちの全てはあの人のもの」

「私たちは、絶対に自分から望んで誰かを愛したりなんかしない。けして寵児など作りはしない。

 父様が望まれたから、そういった存在は生まれ続ける。

 偽りの家族、天使も悪魔も、堕天使も・・・・・・私たちが寂しくないように、家族を感じられるように作られた存在も父様以上に私たちの家族たる人はいない」

 おそらく悠久に変わることのない事実、彼女らにとって世界がどれほど広かろうと意味はない。

 そこに()がいなければ、全ては有象無象。

 誰もが彼女らを認識することができても、誰も彼女たちに触れようなどとは思わない。

 恩人、そんな言葉では表現しきれない。存在の肯定。神がしたのはそんなこと。

「さぁ、行きましょうか。あの人のもとへ。

 誰よりも愛しい、この世界の全てを統べる私たちの大切な人を慰めてあげましょう」

「はーい、母様。父様は泣き虫だもんね」

 そう言って母と娘は微笑みあい、世界の全てを愛してやまない優しき神のもとへと行く。

 

 自分たちを誰よりも愛してくれる、愛しき夫であり、父である彼を慰めるそんな彼女たちの行動こそが誰よりも彼を救っていることも知らずに。


いかがだったでしょうか?


意図せずとも誰かは誰かを喜ばせることができる、投稿しているとそれを実感します。

天下を回っているのは案外お金だけじゃないかもしれません(笑)

人の行動一つでくるくる回るものもきっとあるのかもしれませんね。


感想、誤字脱字報告、お考えになった四題お待ちしています。

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