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MPゼロのテイマーが呪いスキル【魔石喰い】で無双気味で自重しない異世界生活【挿絵有り】  作者: とめおき


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たまにはいいじゃない

王都の外れにある古い倉庫街は、人通りが少ない。


壊れかけの建物、使われなくなった水路、崩れかけの足場。事故が起きても不思議ではない場所だ。だからこそ、誰も近づかない。


だが、その日は違った。


調査の目が、そこにも向いていた。


「ここも確認しておこう」

「何も出ないと思いますが……」


衛兵と調査官が、倉庫の周囲を歩き回る。結界魔具をかざし、床を叩き、水路を覗き込む。


その少し離れた屋根の上。


ふくふく鳥は、丸くなっていた。


赤い羽毛を逆立てることもなく、ただ静かに、下を見下ろしている。目は細い線のまま、「- -」。


その視線の先。


古い足場の上で、ひとりの青年が作業をしていた。足を踏み外せば、下は硬い石床だ。


風が吹く。


足場が、きしんだ。


ほんの少し、ズレる。


ふくふく鳥の体が、わずかに緊張する。


水は近くにある。距離も、条件も、整っている。ほんの少し力を使えば、青年は無傷で済むだろう。


「……」


鳴き声は、出なかった。


ふくふく鳥は、動かない。


助けない。


それは、初めての選択だった。


次の瞬間。


「うわっ!?」


青年はバランスを崩し、足場から落ちる。だが、すぐ下に積まれていた古い藁袋にぶつかり、勢いを殺した。


「……いってぇ」


大事には至らない。軽い打撲だけで済んだ。


「おい、大丈夫か!」

「無事だ!」


周囲が駆け寄る。


誰も、奇跡を期待しなかった。誰も、違和感を覚えなかった。起きるべき事故が、起きただけだ。


屋根の上。


ふくふく鳥は、静かに息を吐く。


「……くふぅ」


どこか、疲れた鳴き声。


助けなかった。


それは、冷酷だからではない。


ふくふく鳥は知っている。すべてを救えば、すべてが歪む。助けるべき時と、そうでない時があることを。


それを説明する言葉は、持たない。ただ、感覚だけがある。


遠くで、昇太が立ち止まった。


「……今の」


何かを感じたのか、屋根を見上げる。


ふくふく鳥と、視線が合う。


一瞬だけ。


昇太は、何も言わなかった。ただ、ゆっくりと目を逸らす。


「……そういう日もあるか」


それが、彼なりの理解だった。


夜。


宿の部屋で、ふくふく鳥はいつもより静かだった。丸い体を縮め、目を閉じている。


「……ぴ」


かすかな声。


後悔ではない。迷いでもない。


選んだ、という感触だけが残っていた。


世界は、完璧じゃなくていい。

守られすぎないから、歩き方を覚える。


ふくふく鳥は、今日も何も語らない。


――何もしないこともまた、守るという選択だった。

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