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MPゼロのテイマーが呪いスキル【魔石喰い】で無双気味で自重しない異世界生活【挿絵有り】  作者: とめおき


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鳥だヒコーキだスーパーマンだ【挿絵あり】


https://49219.mitemin.net/i1076713/


王都の昼は、騒がしい。


音が多い。

声が多い。

そして、においが多い。


ふくふく鳥は、石造りの建物の影で、じっとしていた。

羽毛を少しだけ膨らませ、地面に腹をつける。


「くふぅ……」


眠いわけではない。

ただ、動かなくてもいい時間だった。


通りの向こうで、人の声が弾んでいる。


「今日も出たらしいぞ」

「赤くて、丸いやつだろ?」

「捕まえたら金になるって話だ」


金、という言葉の意味は分からない。

だが、声の調子からして、あまりいいものではなさそうだった。


「まふ」


ふくふく鳥は、くちばしを鳴らした。


その瞬間。


「いたあああ!」


叫び声。


反射的に、脚が動いた。


影から飛び出し、通りを横切る。

羽ばたかない。

走る。


石畳が足裏を叩く。

速さが、体を包む。


「待てー!」

「網、網!」


まただ。


どうして追いかけるのか、分からない。

どうして捕まえたいのか、分からない。


分からないから、逃げる。


角を曲がり、露店の下をくぐる。

干し肉が揺れ、魚の匂いが鼻を刺す。


「わふ!」


一瞬、干し魚に気を取られた。


危ない。


頭上から、何かが落ちてくる。

罠だ。


ふくふく鳥は、跳んだ。

跳んで、転がって、狭い隙間に入り込む。


罠は、ふくふく鳥がいた場所を、空しく塞いだ。


「逃げられた!」

「くそ、速すぎる!」


声が遠ざかる。


ふくふく鳥は、壁に体を預けた。

息は上がっていない。

速さは、苦にならない。


「ぴ」


短く鳴く。


安全。


……だが。


足元に、白いものがあった。


パンだ。

昨日とは違う。

新しい。

しかも、丸ごと一個。


「わふ……」


罠かもしれない、と思った。

思ったが。


においが勝った。


くちばしでつつく。

動かない。


かじる。


やわらかい。


「わふ!」


幸せ。


そのとき、空気が変わった。


ひやり、とした感覚。

風でも、影でもない。


ふくふく鳥は、顔を上げた。


通りの向こう。

人が立っている。


数人。

子供ではない。

鎧を着ている。


視線が、集まる。


――まずい。


ふくふく鳥は、パンをくわえたまま走った。


だが、今日は違った。


網が来ない。

罠も来ない。


代わりに、光が走る。


地面に、線が浮かび上がった。


結界。


意味は分からない。

ただ、本能が告げる。


――ここ、いや。


ふくふく鳥は、線の上を踏まないように、跳んだ。


跳んで、跳んで、跳び越える。


だが、空間が狭まる。

追い詰められる。


「まふ……!」


焦りが、羽毛を逆立てた。


そのとき。


「こっちや!」


大きな声。


視界の端で、人影が動く。

結界の外。


ふくふく鳥は、考えなかった。

体が、そちらへ向いた。


跳ぶ。


肩。


ぽすっ。


「……だから言ったやろ、目立つって」


低い声。

揺れ。

でも、落ちない。


「くふぅ……」


肩は、安全だった。


背後で、ざわめきが起きる。


「今の見たか?」

「結界を……?」

「いや、結界が、避けた?」


意味の分からない言葉が飛び交う。


ふくふく鳥は、パンを食べ続けた。

半分。

もう半分。


「お前な……」


男の声。

呆れたようで、でも怒ってはいない。


ふくふく鳥は、羽をもふっと広げた。


あたたかい。


視線が集まるのは、好きじゃない。

追いかけられるのは、もっと嫌だ。


でも。


この肩は、嫌じゃない。


理由は、分からない。


ただ、落ちない。

捕まらない。

走らなくていい。


「くふぅ……」


目を閉じる。


遠くで、人の声がする。


「朱雀だ」

「いや、違う」

「神鳥だ」

「ただの鳥だろ」


どれも、よく分からない。


ふくふく鳥は、ただのふくふく鳥だ。


パンを食べて、

走って、

逃げて、

ときどき、休む。


それだけ。


男が歩き出す。

視界が揺れる。


王都の空は、今日も広い。

屋根が流れ、塔が遠ざかる。


ふくふく鳥は、一本線の目を細めた。


「ぴ」


今日も、捕まらなかった。


けれど。


今日は、少しだけ、

追いかける人が増えた気がした。


理由は、分からない。


分からないまま、

ふくふく鳥は、肩の上で丸くなる。

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