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MPゼロのテイマーが呪いスキル【魔石喰い】で無双気味で自重しない異世界生活【挿絵有り】  作者: とめおき


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最終話

地下施設の床が、蠢いた。


石畳の隙間から、黒い腕が這い出る。

骨。腐肉。魔力で縫い合わされた存在。


「……来る!」

ミカリが叫ぶ。


次の瞬間、床一面が割れ、アンデッドの群れが溢れ出した。

数十、いや百を超える。


「これが……実験の成果だ」

エリウスは静かに告げる。

「死を恐れず、命令だけを遂行する兵」


「ふざけるな……!」

ミカリが斬り込む。


剣閃が走り、数体が崩れる。

だが、即座に次が覆いかぶさる。


「数が多すぎる!」

ニアが後退しながら援護魔法を放つが、焼け石に水だった。


昇太は前に出る。

ヴァーダント・エッジで切り裂く。

一体、二体、三体。


だが――減らない。


「無限再生……?」

息が荒くなる。


「正確には、遠隔再構築だ」

エリウスは一切動かず、状況を見ている。

「核は、私の魔力制御下にある」


アンデッドの腕が、昇太を掴んだ。


「昇太!」

ミカリの声。


振り払うが、次の瞬間、別方向から噛みつかれる。

防御が追いつかない。


「これが、“正しい犠牲”だ」

エリウスの声が響く。

「君たち三人がここで終われば、世界は一歩前に進む」


その時。


肩の上で、小さな気配が動いた。


「……くる?」

朱雀――ふくふく鳥が、首を傾げる。


昇太は一瞬だけ視線を向け、叫んだ。


「朱雀、下がれ!」


だが。


朱雀は逃げなかった。


小さな身体が、ふわりと宙へ浮く。

次の瞬間――


「――――――」


音のない咆哮。


朱雀の口から放たれたのは、

想像を裏切る、圧倒的な炎だった。


赤でも、橙でもない。

白に近い、純度の高い火。


逃げ場を失ったアンデッドたちが、

一斉に呑み込まれる。


骨が、肉が、魔力ごと焼き切られる。


再生は、起きない。


「……なに?」

ニアが呆然と呟く。


「これが……朱雀……」

ミカリが息を呑む。


炎が収まった時、

そこには、何も残っていなかった。


「……なるほど」

エリウスが、初めて表情を変えた。

驚きと、納得が混じった顔。


「世界のノイズを持たぬ者に懐き、

 世界を焼き払う力を持つ存在か」


昇太は、剣を構える。


「もう、終わりにしましょう」


「……そうだな」

エリウスも、静かに魔力を解放する。

「では、最後だ」


二人が、踏み込む。


剣と魔力が激突し、

地下施設全体が震えた。


エリウスの攻撃は、正確で、容赦がない。

昇太の動きを読み、先を取る。


だが――


「……読めないな」

エリウスが小さく呟く。


「君は、合理性で動かない」


「はい」

昇太は答える。

「だから、負けません」


一歩、踏み込む。


ヴァーダント・エッジが、光を帯びる。

覚醒ではない。

感情の爆発でもない。


ただ――


「今、ここで倒す」


剣が、エリウスの防御を貫いた。


「……ああ」

エリウスは、ゆっくりと膝をつく。

「そうか……それが……」


血が、床に落ちる。


「英雄になれなかったのは……私だけだったな」


昇太は、剣を下ろした。


「あなたは、強かった」

「でも……間違ってました」


エリウスは、微笑んだ。

「……頼む」

「この世界を……頼む」


その身体から、力が抜ける。


地下施設に、静寂が戻った。


朱雀が、ふわりと昇太の肩に戻ってくる。

いつもの、ふくふくした姿で。


「……終わったね」

ニアが、震える声で言った。


「ええ」

ミカリは空を見上げる。

「長かった……」


王都の夜空に、炎の名残が揺れている。


英雄になれなかった男は、去った。


だが――

英雄になろうとしなかった冒険者は、ここに立っている。



そしてその隣には、

空想と現実の間を生きる、小さな朱雀がいた。


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