勇者パーティ御一行様
丘陵地帯を抜け、古い石畳の残る街道を四つの影が進んでいく。
世界を救うために選ばれた、もっとも強く、もっとも誇らしい──勇者パーティ。
先頭を歩くのは、常に穏やかな笑みを絶やさない男、エリウス。
端整な顔立ちと落ち着いた声色。年齢は四十代の半ばといったところだろうか。
しかしその背筋の伸び方と所作は、若者以上の気品を保っていた。
そのすぐ横を歩くのは、金属鎧を着込みたくましい腕を揺らす戦士、クレスト。
人生経験も戦歴も十分に積んだ青年で、二十代半ばの盛り。
明るいが粗削りな物言いは、隊の空気をかき混ぜる役割でもある。
後ろから軽やかに歩くのは、妖艶な黒髪を揺らす魔導士、フィオナ。
大人の魅力をそのまま体現したような女性で、見た目は二十歳そこそこ。
しかし彼女の魔法は容赦なく、一度放てば大地ごと抉るほど。
最後尾を歩くのは、小柄で華奢な僧侶、リュミエル。
年若く、幼さすら残る少女だが、その手から生まれる光は確かな癒しの力を宿していた。
細い手足で大きな杖を抱え、それでも必死に皆に歩調を合わせている。
──ミカリの姿は、もうない。
「いやぁ、やっぱ旅が軽快になったよな!」
クレストが肩を回し、大剣を背負い直す。
「足、引っぱるやつがいないって、こんなに快適か?」
「ほんとそれ。前より進むペースが段違いだわ」
フィオナがため息交じりに笑う。
「まぁ、あの子に荷物を任せてた時点で判断ミスだったのよね」
「……その分、私が頑張らないと、ですよね」
リュミエルが必死に笑顔を作る。
「えへへ……皆さんのお荷物、できるだけ私が持ちますから……!」
「無理しないでね、リュミエル」
エリウスが優しく声をかける。
「みんなで分担すればいい。焦る必要はないよ」
その微笑みは、いつも通り穏やかで、疑いようもない慈愛に満ちていた。
そんな会話をしながら歩いていると──
ガサリ と茂みが揺れた。
次の瞬間、黄色い輝きを瞳に宿した魔物が跳び出してくる。
金眼の獣──金眼魔ゴブリン。
「お、来たな。片付けるわ」
クレストは大剣を引き抜き、すれ違いざまに刃を振る。
一閃。
金眼のゴブリンは悲鳴を上げる間もなく、縦に両断されて地に崩れた。
「ふふ、相変わらず雑ね。もっと芸術性を求めなさいよ」
フィオナが肩をすくめる。
「倒せりゃいいんだよ倒せりゃ!」
クレストは豪快に笑い、剣についた血を払った。
「怪我人はいない。……よかったね」
リュミエルが胸を撫で下ろし、小さく微笑んだ。
エリウスは倒れた魔物を見つめていたが、すぐに視線を仲間へ戻し、いつものように柔らかな笑顔を浮かべた。
「さあ、行こう。まだ道は続いている。
僕たちの旅もまだ終わらない」
勇者パーティは戦場を背に、再び歩き出す。




