表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
MPゼロのテイマーが呪いスキル【魔石喰い】で無双気味で自重しない異世界生活【挿絵有り】  作者: とめおき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/48

取引の夜

夜の王都は、昼とは別の顔を持つ。

灯りは増えるが、人の気配は薄れ、静けさの中にひそやかな流れが生まれる。


その夜――

昇太たちは王都外れへと向かっていた。


肩に乗る朱雀――ふくふく鳥は、いつもより落ち着きがない。

首を伸ばし、周囲の気配を探るように何度も鳴く。


「……やっぱり、こっち」

ニアが小声で言う。


「朱雀が反応してる」

ミカリは視線を前に固定したまま頷いた。「偶然じゃないわね」


朱雀の能力は、未来を見ることではない。

危険な流れを嗅ぎ取り、生き残るために最適な方向へ逃げる――

極限まで研ぎ澄まされた生存本能。


「逃げるための力が、ここまで精密だと……」

昇太は呟く。「逆に、“近づくな”って言われてる気がする」


だが、朱雀は逃げなかった。

昇太の肩から離れず、前だけを見ている。


地下水路へ続く、崩れかけた旧施設。

王都の地図からは消えた場所だ。


「……来てる」

ニアが足を止める。


遠くから、低い声が聞こえた。


黒いローブに身を包んだ者たち。

数は多くない。だが、立ち位置と動きに無駄がない。


「箱を開けろ」


金属の音。

中から覗いたのは、禍々しい魔力を帯びた容器。


「金眼級の次段階……」

ミカリの声が震える。「やっぱり、実験してる」


「供給は安定している」

別の声が答える。「観測データも揃った」


昇太の胸に、嫌な感覚が広がる。

数字でも理屈でもない、ただの確信。


――これは、人為的だ。


そのとき。


「無駄話はそこまでにしよう」


穏やかな声が、場に落ちた。


黒ローブたちが一斉に道を空ける。


現れたのは、見覚えのある男だった。


柔らかな笑み。

静かな足取り。

場に立っただけで、空気が整う。


「……エリウス」

ミカリの喉から、名前が零れ落ちた。


心臓が、強く脈打つ。


声。

立ち姿。

言葉を選ぶ間の取り方。


幼い頃――

燃える村。

泣き叫ぶ声。

そして、差し伸べられた手。


「……無事だったかい」

エリウスは、部下に向けてそう言った。


その声音に、迷いはない。

彼はここにいることを、当然のものとして受け入れている。


昇太は、気づいた。


――この人が、中心だ。


エリウスが視線を巡らせる。

そして、昇太と目が合った。


一瞬だけ。

ほんの一瞬だけ、彼の表情が揺れた。


「……なるほど」

小さく、息を吐く。「やはり、君たちだったか」


朱雀が、低く鳴いた。

逃げ足のための鳴き声ではない。


警告だ。


「ここは、君たちが来る場所じゃない」

エリウスは静かに言う。「今なら、引き返せる」


「それは無理ですね」

昇太は一歩、前に出た。「見てしまった」


「……そうか」

エリウスは目を伏せる。「なら、仕方ない」


彼が手を上げる。


黒ローブたちが、同時に魔力を展開した。


「ミカリ!」

「了解!」


剣を抜く音が、夜に響く。


朱雀が昇太の肩で羽を震わせる。

進むか、逃げるか――

その問いに、もう迷いはなかった。


エリウスは、穏やかなまま告げる。


「ここから先は――英雄譚にはならない」


地下施設に、戦闘の気配が満ちる。


逃走不可。

交渉不可。


歯車は、完全に噛み合った。


――次の瞬間、世界が動き出す。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ