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MPゼロのテイマーが呪いスキル【魔石喰い】で無双気味で自重しない異世界生活【挿絵有り】  作者: とめおき


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王都にて

王都冒険者ギルド本部の回廊は、外の喧騒とは切り離されたように静かだった。

石造りの壁が音を吸い、足音だけがやけに大きく響く。


個室を出てから、三人はしばらく言葉を交わさなかった。


「……ねえ」

沈黙を破ったのは、ニアだった。

「さっきの人、やっぱり変だよね」


ミカリは歩きながら、小さく鼻で息を吐く。

「変、というより……不自然」

「敵意がないのが、逆に信用できない」


昇太は二人の少し前を歩きながら、思考を巡らせていた。

エリウスという男。

穏やかで、丁寧で、こちらを脅かす要素は一切なかった。


それなのに――。


(知りすぎている)


港町マレインで起きた出来事。

金眼のタコ。

黒ローブ。

そして、ヴァーダント・エッジ。


本来なら、王都に来たばかりの冒険者が知り得る情報ではない。


「昇太」

ミカリが低い声で呼びかける。

「……剣、何か反応してた?」


一瞬、昇太は足を止めかけたが、すぐに歩調を戻した。

「……ほんの少し」

「拒絶、みたいな感覚だ」


ニアが不安そうに目を伏せる。

「じゃあ……やっぱり、関わらない方が……」


「完全に避けるのは無理だ」

昇太はそう言って、前を向いたまま続ける。

「王都にいる限り、どこかで交差する」


回廊を抜け、再び広間に出る。

そこには、多くの冒険者たちが行き交っていた。


だが、港町のギルドとは明らかに空気が違う。

談笑は少なく、視線は鋭く、どこか張り詰めている。


掲示板の前に立つと、その違和感はさらに強まった。


「……多すぎる」

ミカリが呟く。


非公開依頼。

要推薦。

王都本部承認済み。


依頼の大半が、そんな文言を含んでいた。


「内容も、曖昧だね」

ニアが首を傾げる。

「“監視”“確認”“巡回”……何をするか、はっきり書いてない」


昇太は、一枚の依頼書に目を留めた。


【小規模巡回依頼】

【対象区域:第三外環・旧倉庫街】

【備考:過去事例との関連あり/外部報告禁止】


「……過去事例」

昇太は小さく息を吐く。


金眼。

黒ローブ。

港町。


すべてが、この言葉に繋がっている気がしてならなかった。


「派手なのは避けた方がいい」

ミカリが言う。

「エリウスの忠告、癪だけど正しい」


ニアも頷く。

「でも、何もしないのも……怖い」


昇太は依頼書から目を離し、二人を見た。

「だから、これだ」

「目立たない。けど、情報に繋がる」


短い沈黙の後、ミカリが笑った。

「相変わらずだね。面倒な道を選ぶ」


「慣れてるでしょ」

昇太は肩をすくめる。


受付で依頼を受理すると、職員は一瞬だけ言葉を詰まらせた。

「……こちらの依頼は、王都本部管理下になります」

「報告は、指定先のみでお願いします」


指定先の欄には、個人名も部署名も書かれていない。

ただ一行。


【中央管理室】


ギルドを出ると、王都の街並みが広がっていた。

整然とした通り。

高い建物。

行き交う人々の数と視線。


「……監視されてる感じ、するね」

ニアが小声で言う。


「王都じゃ、普通だ」

ミカリは淡々と答えた。

「だからこそ、厄介なんだけど」


昇太は空を見上げる。

雲がゆっくりと流れている。


ヴァーダント・エッジに手を添えると、剣は静かだった。

眠っている。

だが、完全に無関心ではない。


(俺たちは、もう“見られてる”)


その感覚だけは、確信に近かった。


――その頃。


王都のどこか。

陽の届かない部屋で、報告書に目を通す影があった。


「……王都入りを確認」

低い声が呟く。


別の声が、静かに応じる。

「剣は?」


「沈黙しています」

「ですが……拒絶反応が、一瞬だけ」


短い沈黙。


「問題ない」

穏やかな声が、そう結論づけた。

「まだ、こちらを向く段階ではない」


紙が閉じられる音。


「変数は増えたが、盤面は予定通りだ」

「観測は継続する」


部屋に、再び静寂が落ちる。


王都の喧騒の中で、昇太たちはまだ知らない。

自分たちがすでに、慎重に計測され、分類されつつあることを。


だが、彼らは歩みを止めない。


派手には動かない。

しかし、確実に――核心へ向かって。


王都編は、静かに深度を増し始めていた。

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