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MPゼロのテイマーが呪いスキル【魔石喰い】で無双気味で自重しない異世界生活【挿絵有り】  作者: とめおき


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王都へ

王都へと続く街道は、想像していたよりも整備されていた。

舗装された石畳、一定間隔で立つ街路標、巡回兵の姿。

地方の街道とは明確に異なる「中心へ向かう道」の空気が、昇太たちの足取りを自然と引き締める。


「人の流れが多いね」

ニアが周囲を見回しながら言った。

行商人、傭兵風の集団、馬車に乗った貴族らしき一行。

それぞれが違う目的を抱えながらも、同じ方向――王都へ向かっている。


「情報も集まりやすいってことだ」

ミカリはそう言って、無意識に周囲の視線を警戒する。

「その分、余計なものも集まるけどね」


昇太は黙って歩きながら、腰の剣に意識を向けていた。

ヴァーダント・エッジは、相変わらず沈黙している。


だが、完全な静止ではない。

ごく微細な、脈にも似た感覚が、時折――王都の方向へ引かれるように揺れる。


「……王都、か」

昇太は小さく呟いた。


転生してから、ここまで来るとは思っていなかった。

最初は生き延びるだけで精一杯だった。

Eランク、Dランク、護衛、海、金眼のタコ、黒ローブ。


すべてが、一本の線で繋がり始めている。


街道沿いの宿場町で一泊することになったのは、日が傾き始めた頃だった。

王都圏に入る手前のこの町は、冒険者の往来も多く、情報の中継点として機能している。


宿の食堂は賑やかだった。

酒の匂い、焼いた肉の香り、誰かの笑い声。


「……聞いたか?」

隣の卓から、低い声が漏れ聞こえる。

「最近、王都周辺で変な依頼が増えてるらしい」


昇太は、箸を止めずに耳を澄ませた。


「魔物討伐じゃない。調査でもない。

 “立ち入り禁止区域の巡回”とか、“記録回収”とか……意味わからん」


「ギルド主導じゃない依頼も混じってるって話だ」

「王城関係者が裏で動いてるって噂もある」


ミカリが、ほんの僅かに眉を動かした。

ニアは何も言わず、昇太の反応を伺っている。


「……やっぱり、王都だな」

食後、部屋に戻る途中でミカリが言った。

「港で感じた違和感、その延長線にある」


「うん」

昇太は頷く。

「黒ローブも、金眼も、地方で完結する話じゃない」


夜。

宿の部屋で、昇太は一人、剣を膝に置いて座っていた。


鞘に収めたままのヴァーダント・エッジ。

触れても、反応は薄い。


「……お前は、何を知ってる」

問いかけても、答えはない。


だが、昇太はもう分かっていた。

この剣は導かない。

選ばない。


ただ、使い手がどこへ進むかを、黙って見ている。


翌朝。

王都の外壁が見えた瞬間、三人は言葉を失った。


高く、分厚い城壁。

無数の旗。

門を行き交う人の流れは、これまで見てきたどの街とも比べ物にならない。


「……でか」

ニアが素直に呟いた。


「ここが、王都」

ミカリの声も、わずかに硬い。


門をくぐる際、冒険者カードの提示を求められる。

Dランク――その色が、門番の視線を一瞬だけ留めた。


「問題ない。通っていい」


王都の中は、さらに別世界だった。

区画ごとに分かれた街並み、整然とした通り、そして――至る所に感じる“管理された空気”。


「……息苦しいね」

ニアが小さく言う。


「権力の匂いだ」

ミカリが即答した。


冒険者ギルド王都本部は、マレイン港のものとは比べものにならない規模だった。

建物そのものが砦のようで、内部も複雑だ。


掲示板に並ぶ依頼は、量も質も異質だった。


「……Cランク以上が多すぎる」

ミカリが呟く。


「しかも、内容が抽象的」

ニアが首を傾げる。

「“監視”“確認”“排除の準備”……?」


昇太は、一枚の依頼書に目を留めていた。


【非公開依頼/要推薦】

【対象:特定勢力の動向調査】

【備考:過去事例との関連性あり】


「……過去事例、ね」

昇太は小さく息を吐いた。


港。

金眼。

黒ローブ。


すべてが、ここへ集束している。


その時だった。


背後から、穏やかな声がかかる。


「君たち、最近港町で噂になった冒険者だね」


振り返ると、そこに立っていたのは――

柔らかな笑みを浮かべた、上品な男だった。


年齢は三十代半ば。

物腰は丁寧で、敵意はない。


「少し、話を聞かせてもらってもいいかな?」


昇太は、その男を見つめ返す。

胸の奥で、言葉にならない違和感が、静かに揺れた。


ヴァーダント・エッジが、

ほんの一瞬だけ――沈黙を深めたことに、昇太だけが気づいていた。


――王都編、開幕。


物語は、確実に核心へと近づいていく。

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