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MPゼロのテイマーが呪いスキル【魔石喰い】で無双気味で自重しない異世界生活【挿絵有り】  作者: とめおき


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33/48

騒動の裏で2



港町マレイン港を離れた翌朝、三人は街道を北へ進んでいた。

背後に見える港の喧騒はすでに遠く、潮の香りも薄れている。


「……静かだね」

ニアが周囲を見回しながら呟いた。


「嵐の後、って感じだ」

ミカリが肩越しに港の方角を一瞥する。

「でも、ああいう時ほど油断できない」


昇太は二人の少し前を歩きながら、意識を張り巡らせていた。

周囲に敵意はない。だが、あの港で感じた“視線”の余韻が、完全には消えていなかった。


ヴァーダント・エッジは静かだ。

金眼のタコとの戦いで見せた反応は、今は影を潜めている。


それでも――

昇太には分かっていた。


剣は眠っているだけだ。

次の局面を、待っている。


街道の先に、小さな分岐路が現れる。

そこに立てられた古い標識には、風雨に削られた文字でこう記されていた。


【王都方面】

【内陸交易路】


「このまま行けば王都だね」

ミカリが言う。


「……王都」

ニアがその言葉を繰り返す。

「なんか、急に話が大きくなってきた感じ」


実際、その通りだった。

港町で起きた出来事は、単なる地方の異変では終わらない可能性が高い。


黒ローブ。

金眼のタコ。

計画は“次の段階へ”。


それらは、より広い舞台を前提に動いている。


「ギルドに戻る?」

ニアが尋ねる。


昇太は一瞬考え、首を横に振った。

「いや、一度王都へ向こう」


ミカリが眉を上げる。

「理由は?」


「情報だ」

昇太は簡潔に答えた。

「黒ローブの動き、金眼みたいな存在、全部が地方レベルを超えてる。王都なら、何か掴める」


二人は顔を見合わせ、すぐに頷いた。

迷いはなかった。


三人は進路を決め、王都方面の街道へ足を向ける。


その頃――

マレイン港から遠く離れた、内陸のとある地下施設。


薄暗い石造りの広間に、黒ローブの男が膝をついていた。

フードの奥、冷や汗が顎を伝う。


「……失敗しました」

声は低く、震えを必死に押し殺している。


彼の前に立つ影は、一つではなかった。

複数の気配が、静かに彼を囲んでいる。


「金眼は沈んだか」

淡々とした声が問う。


「はい……ですが、データは十分に……」

言い終える前に、空気が一瞬、重くなる。


「言い訳はいらない」

別の声が割って入る。

「重要なのは結果ではなく、次に何が残ったかだ」


男は息を呑む。

「……剣です。ヴァーダント・エッジ」

「想定以上に“噛み合って”いました」


一拍の沈黙。


やがて、最初の声が小さく笑った。

「なるほど……」

「ならば、金眼は無駄ではなかった」


黒ローブの男は顔を上げる。

「では、次の指示は――」


「予定通りだ」

遮るように告げられる。

「盤面は動いた。駒も、意志を持ち始めた」


その言葉に、男の背筋が凍る。

「……“彼”には?」


一瞬、間があった。


「まだだ」

穏やかで、どこか人懐こい声が、奥から響く。

「彼は……まだ表に出る役目じゃない」


その声を聞いた瞬間、男は深く頭を垂れた。

それ以上、何も問わなかった。


場の空気が緩む。

影たちは一人、また一人と離れていく。


最後に残った声が、ぽつりと呟いた。


「冒険者か……」

「いや……面白いのは、その剣よりも――」


言葉は、そこで途切れた。


再び場は静寂に包まれる。


一方、街道を進む昇太たちは、まだそれを知らない。

自分たちが、すでに“観測対象”から“変数”へと変わりつつあることを。


王都への道は、長い。

だがその先には、確実に新しい局面が待っている。


そしてその影で――

温厚な仮面を被った黒幕が、静かに微笑んでいることを。


まだ、誰も気づかぬまま。


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