表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
MPゼロのテイマーが呪いスキル【魔石喰い】で無双気味で自重しない異世界生活【挿絵有り】  作者: とめおき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/48

不穏な動き

港町マレイン港は、表面上の平穏を取り戻していた。

金眼のタコが討伐され、海上の異変が沈静化したという報せは、瞬く間に街へ広がった。港に戻ってくる船の数も増え、船員たちの顔にはようやく安堵が浮かび始めている。


だが、昇太の胸の奥に残る感覚は、決して軽いものではなかった。


冒険者ギルドの一室。

簡素な報告用の部屋で、三人は今回の依頼についての最終確認を受けていた。


「海上調査依頼、ならびに討伐対象の排除を確認しました」

ギルド職員は淡々と告げる。

「報酬は規定通り。追加報酬については、港湾管理側から別途支払われます」


ミカリが軽く息を吐いた。

「とりあえず、大事にはならなかったみたいだね」


「うん……船も戻ってきてるし」

ニアも頷くが、その声はどこか歯切れが悪い。


昇太は黙ったまま、腰のヴァーダント・エッジに手を添えていた。

剣は静かだ。脈動も、熱も、今は感じられない。


だが――

戦闘の最中、確かに“何か”が剣と金眼のタコを繋いでいた。


「あの黒ローブ……」

ミカリがふと口を開く。

「結局、何者だったんだろ」


港外れでの戦闘。

金眼のタコが倒れた直後、現れた黒いローブの一団。

その中でも、幹部と呼べる存在は、圧倒的な実力を持っていた。


殺し切れなかった。

そして、向こうも本気で決着をつけに来てはいなかった。


「……タコは、ただの“道具”だった可能性が高い」

昇太が静かに言う。


二人が視線を向ける。


「金眼は強かった。でも、動きに迷いがあった。操られてる感じがした」

「操る側が、戦況を見て引いた……そんな気がする」


ニアが小さく身を縮める。

「じゃあ、あの人たちは……まだ、いるってこと?」


「いるだろうね」

ミカリが即答した。

「しかも、かなり組織立ってる」


その言葉に、部屋の空気が重くなる。


ギルドを出ると、港の喧騒が耳に戻ってきた。

魚市場の呼び声、船具のぶつかる音、人々の笑い声。


平和だ。

だが、それは“何も知らない”からこその平和だった。


桟橋を歩きながら、昇太は海を見つめる。

波は穏やかで、あの夜の渦が嘘のようだ。


「昇太」

ミカリが声をかける。

「さっきから、ずっと考え込んでる」


「……黒ローブの幹部、最後に言ってた」

昇太はゆっくりと思い出すように続ける。

「“計画は次の段階へ移る”って」


ニアが眉をひそめる。

「次って……何?」


昇太は首を横に振った。

「分からない。でも――」


剣に視線を落とす。

ヴァーダント・エッジは、相変わらず静かなままだ。


「金眼のタコは、たぶん実験段階だった」

「海に出た理由も、港を狙った理由も、全部“試し”だった可能性がある」


ミカリの表情が険しくなる。

「じゃあ、本命は……」


「もっと別の場所か、もっと別の対象」


その時だった。


通りの向こう、人混みの中に――

一瞬だけ、見覚えのある気配が混じった。


温和で、柔らかく。

敵意のない、しかし底の見えない気配。


昇太は反射的に振り返る。


だが、そこには荷を運ぶ商人と、談笑する船員たちしかいなかった。


「……今の、何?」

ニアが不安げに聞く。


「気のせいかもしれない」

昇太はそう答えたが、胸の奥に引っかかるものは消えなかった。


誰かが、見ている。

直接姿を現さず、だが確実に盤面を動かしている存在。


黒ローブの幹部ですら、駒に過ぎない――

そんな感覚が、はっきりとした輪郭を持ち始めていた。


「港の件は終わった」

ミカリが前を向く。

「でも、これで全部終わりじゃないね」


「ああ」

昇太は頷く。

「むしろ、始まったばかりだ」


海は静かに揺れている。

その向こうで、まだ見ぬ意志が、次の一手を待っていることを――

三人はまだ、知る由もなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ