表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
MPゼロのテイマーが呪いスキル【魔石喰い】で無双気味で自重しない異世界生活【挿絵有り】  作者: とめおき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/48

初めての護衛(後半)

焚き火が小さく爆ぜ、夜の静けさが戻っていた。


昇太は少し離れた場所で腰を下ろし、剣――ヴァーダント・エッジに視線を落としていた。

昼間の戦闘で感じた“噛み合い”は、今も確かに残っている。だが、あの時のような脈動は、すでに沈静化していた。


「……やっぱり、一時的なものか」


誰に聞かせるでもなく、昇太は小さく呟く。

剣は静かだ。ただ、完全に以前と同じではない――そんな曖昧な感触だけが、掌に残っていた。


少し離れた焚き火の向こうでは、ラーソンとミカリが静かに言葉を交わしていた。

冒険者を信用していなかった男の態度は、明らかに変わっている。


「……正直に言おう」

ラーソンは焚き火を見つめたまま言った。

「君たちも、途中で逃げると思っていた。護衛など、そういうものだと」


ミカリは肩をすくめる。

「逃げる判断も、時には必要です。でも――今回は、そうじゃなかった」


ラーソンは一瞬だけ口を噤み、やがて小さく息を吐いた。

「……ああ。よく分かっている」


そのやり取りを、セリアは少し離れた場所で聞いていた。

焚き火の明かりに照らされた横顔は、いつもの冷静な秘書のそれに戻っている。だが、時折、昇太の方へ視線が向くのを、本人は気づいていなかった。


翌朝。

街道は霧に包まれていたが、進路は明瞭だった。


港町マレイン港が視界に入った瞬間、セリアが小さく息を呑む。

「……無事に着きましたね」


その言葉に、ラーソンは一度だけ頷いた。

そして、昇太たちに向き直る。


「今回の護衛、そして……昨夜のことも含めてだ」

ラーソンは真っ直ぐに昇太を見据えた。

「君たちには、借りができた。商人としてではなく、一人の人間として礼を言う」


深く頭を下げるその姿に、ミカリとニアは一瞬、戸惑ったように目を見開いた。


「今後、武器や防具が必要になったら、ラーソン商会を通せ」

「相場より、かなり融通しよう。……信用に値する相手だからな」


それだけ言うと、ラーソンは港へ向かって歩き出した。

セリアは一礼し、慌てて後を追う。その途中、足元の石に気づかず、また小さくよろめいた。


「あっ……!」

眼鏡を押さえながら体勢を立て直し、振り返って小さく咳払いをする。

「……で、では、改めまして。ありがとうございました」


ニアは思わず吹き出しそうになり、慌てて口を押さえた。


数時間後。

冒険者ギルド・マレイン港支部にて、昇太たちは試験官から呼び出しを受けていた。


「護衛任務、及び盗賊対応。総合評価は――合格だ」

淡々と告げられたその言葉に、ミカリが息を吐き、ニアが小さく拳を握る。


「本日付で、Dランク昇格が認められる」


昇太は短く頷いた。

胸の奥で、剣が――ほんの一瞬だけ、応えるように熱を帯びた気がした。


だが、それはすぐに静まる。

まだだ、とでも言うように。


剣は確実に成長している。

だが、その真価が明らかになるのは、もう少し先だ。


港の喧騒を背に、昇太はヴァーダント・エッジの柄に手を置いた。

新たな階段を上った実感と、まだ見えない次の戦いの気配を、確かに感じながら。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ