空の牢獄、光なき群星2
目が覚めたら、知らない天井だった。
まるで教会の天井画のような天井だ。
ここはもしかしたら、天国なのかもしれない。
柔らかい日差しに目を細め、ぼうっとしていると、声が聞こえた。
「もう起きたか」
声の方へ顔を向けると、そこには、戦場の風をその身に纏ったような男が立っていた。
灰銀の髪は光を散らしながら肩に落ち、肌は焼けた鋼のように鈍く光っている。
琥珀色の瞳は空の彼方を射抜くようで、その視線に晒された瞬間、レオの肺は息を忘れた。
ただ立っているだけなのに、空気が震えていた。
その存在は、かつて幾千の命を奪い、星を攫った戦神の化身のようだった。
腕に刻まれた古い紋章が、かすかに光を放つ。
彼の背後では、天井画に描かれた天使たちでさえ、今にも膝をつきそうに見えた。
レオは、自分が同じ人間、という種に属していることを疑いたくなった。
その男は、静かに口を開く。
「……目を覚ましたか、攫い手の子よ」
レオはぼんやりと男を見上げた。
その立ち姿だけで、空気が震えている。
「あんたは、誰だ」
「我が名はアステリオス」
「アステリオス…」
アステリオスは首肯して続けた。
「二百年前、我らは戦の果てに星を奪い合い、己の名を空に刻んだ。その代償として、星攫いの名を受け、この牢に封じられた」
レオは息を呑む。
「じゃあ、あんたも、俺と同じ攫い手ってことか」
「そうだ。ここは空の牢獄、攫い手を封じる為の、そして我らの最後の住処だ」
とりあえず、腹が減ったろう、食堂に案内する。そう言って、アステリオスはレオを案内に促した。レオはどこか夢見心地のまま、アステリオスに着いていった。
レオは、ただ導かれるようにその背中を追った。
冷たい石の床を踏むたび、どこか遠くで鈍い鐘の音が響く。
ここが牢獄であるという現実だけが、夢のような世界に確かな重みを与えていた。




