ダンジョン地下99階の宝箱とお弁当箱
私は女武家アイラ。16歳。
財宝が眠っていると噂のダンジョンに潜ってもう一週間。
並み居るモンスターたちを倒しながら、地下99階まで到達した。
きっとここがダンジョンの最深部のはず。
大きな扉まで進んで開けてみると――。
「きゃあっ!」
いきなり女性が跳ね飛ばされてきたので受け止めた。
魔法使いらしい。
「大丈夫ですか?」
「ありがとう。私は大丈夫。でもピンチよ」
そう。
この広大な部屋の中央には、巨大なドラゴンが陣取っている。
そして勇者、戦士、盗賊が部屋の方々に倒れている。
先に到着していたパーティーは、ほぼ壊滅状態だ。
私は魔法使いと部屋の中へと進んだ。
ドラゴンがこちらを睨んで、大きく息を吸い込んだ。
「危ない! 炎が来るわ! えっ!? きゃっ!」
私は魔法使いを抱きかかえてサイドに跳んだ。
跳び去った地面の煉瓦はドラゴンの吐き出した炎で黒焦げだ。
部屋の奥の高くなっている台座が見えた。
輝く宝箱が置かれている。
このダンジョンの秘宝だ。
「ドラゴンを倒さないと秘宝は手に入らないけど、勝てっこないわ。あなただけでも逃げて」
「心配ご無用」
私は女性を下ろすと、ドラゴンに向かって駆けだした。
ドラゴンが後ろ向きになって尻尾を叩きつけてくる。
それを飛び越えて、ドラゴンの背中に着地して、一気に頭まで駆けのぼった。
「はいっ! せいやっ!」
左右の手刀で二つの角を切り飛ばした。
「グオオオ!」
ドラゴンが頭を振りたくって暴れまわる。
だけど私はバランスを保って気を集中した。
そして――。
「奥義・雷鳴正拳下段突き!」
ドラゴンの頭に右の拳を叩き込き下ろした。
私が地面に降り立った数秒後、ドラゴンは地面に崩れた。
「凄い!」
魔法使いが感嘆の声を上げた。
「回復魔法が使えるなら、パーティーの皆さんに」
「そうだわ! 急いで回復させなきゃ」
魔法使いのおかげで、勇者、戦士、盗賊の三人とも無事回復した。
「まさかあのドラゴンを一人で倒してしまうとは」
「強いな。君は」
「ありがとよ。おかげで命拾いしたぜ」
勇者、戦士、盗賊が言った。
「あの財宝は、あなたのものよ」
魔法使いが指さした先には、輝いている宝箱。
「それよりお願いが」
私はお腹を押さえた。
「あっ。ダメージがあるの? 回復魔法を――」
「そうじゃなくて」
ぐぎゅるるるる。
私のお腹が大きく音を立てた。
パーティーにもらったお弁当箱を開けた。
食料が尽きてしまったので丸一日ぶりの食事だ。
一番の財宝は、やっぱり美味しいご飯よね。