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なろうラジオ大賞6 応募短編集

ダンジョン地下99階の宝箱とお弁当箱

作者: 青帯


 私は女武家アイラ。16歳。


 財宝が眠っていると噂のダンジョンに潜ってもう一週間。


 並み居るモンスターたちを倒しながら、地下99階まで到達した。

 きっとここがダンジョンの最深部のはず。


 大きな扉まで進んで開けてみると――。


「きゃあっ!」


 いきなり女性が跳ね飛ばされてきたので受け止めた。

 魔法使いらしい。


「大丈夫ですか?」


「ありがとう。私は大丈夫。でもピンチよ」


 そう。


 この広大な部屋の中央には、巨大なドラゴンが陣取っている。

 そして勇者、戦士、盗賊が部屋の方々に倒れている。

 先に到着していたパーティーは、ほぼ壊滅状態だ。


 私は魔法使いと部屋の中へと進んだ。


 ドラゴンがこちらを睨んで、大きく息を吸い込んだ。


「危ない! 炎が来るわ! えっ!? きゃっ!」


 私は魔法使いを抱きかかえてサイドに跳んだ。

 跳び去った地面の煉瓦はドラゴンの吐き出した炎で黒焦げだ。


 部屋の奥の高くなっている台座が見えた。

 輝く宝箱が置かれている。

 このダンジョンの秘宝だ。


「ドラゴンを倒さないと秘宝は手に入らないけど、勝てっこないわ。あなただけでも逃げて」


「心配ご無用」


 私は女性を下ろすと、ドラゴンに向かって駆けだした。


 ドラゴンが後ろ向きになって尻尾を叩きつけてくる。


 それを飛び越えて、ドラゴンの背中に着地して、一気に頭まで駆けのぼった。


「はいっ! せいやっ!」


 左右の手刀で二つの角を切り飛ばした。


「グオオオ!」


 ドラゴンが頭を振りたくって暴れまわる。


 だけど私はバランスを保って気を集中した。


 そして――。


奥義(おうぎ)雷鳴正拳下段突らいめいせいけんげだんづき!」


 ドラゴンの頭に右の拳を叩き込き下ろした。


 私が地面に降り立った数秒後、ドラゴンは地面に崩れた。


「凄い!」


 魔法使いが感嘆の声を上げた。


「回復魔法が使えるなら、パーティーの皆さんに」


「そうだわ! 急いで回復させなきゃ」


 魔法使いのおかげで、勇者、戦士、盗賊の三人とも無事回復した。


「まさかあのドラゴンを一人で倒してしまうとは」

「強いな。君は」

「ありがとよ。おかげで命拾いしたぜ」


 勇者、戦士、盗賊が言った。


「あの財宝は、あなたのものよ」


 魔法使いが指さした先には、輝いている宝箱。


「それよりお願いが」


 私はお腹を押さえた。


「あっ。ダメージがあるの? 回復魔法を――」


「そうじゃなくて」


 ぐぎゅるるるる。


 私のお腹が大きく音を立てた。


 パーティーにもらったお弁当箱を開けた。


 食料が尽きてしまったので丸一日ぶりの食事だ。


 一番の財宝は、やっぱり美味しいご飯よね。

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