❄6:氷の貴公子様の……?
マーメイドの方が、腰に手を当て仁王立ちで紹介を!と言われていますが、氷の貴公子様は右手で目元を覆い、大きなため息を吐かれています。
「…………テレシア嬢」
スッと手を差し伸べられたので、そこに自身の手を重ねていると、氷の貴公子様が小さな声で「騒がしくてすまない」と謝られました。
「この子が婚約者のテレシア嬢だ。テレシア、コレは私の従兄弟でゴドフリ――――」
「フリーナ!」
「…………フリーナというらしい」
――――らしい。
「よろしくお願いいたします」
諸々気になるところはありますが、兎にも角にもまずは挨拶すべきでしょう、ということでカーテシーをしました。
「あら、とっても肝の据わった子ね。気に入ったわ」
マーメイドなフリーナ様がクスクスと笑いながら、頷かれました。その反応でフリーナ様が高位の方なのだと理解できました。
挨拶され慣れているのでしょう。
従兄弟ということは、王族に連なる方の一員の可能性もあるのでしょうか?
「さて、採寸するわよ」
「採寸ですか?」
「あら? 聞いていないの?」
今日ここに来た目的は、氷の貴公子様が来たいと言ったからです。
フリーナ様と氷の貴公子様が何やらボソボソと話し、フリーナ様が氷の貴公子様の脇腹に何度か拳を叩き込んでいました。何が起こっているのかいまいち理解できません。
「今日はね、貴女のウエディングドレスを作るためにここに来たの。だから、さっさと採寸するわよ!」
「なるほど、承知しました」
「……話が早くて助かるけれど、貴女それで大丈夫なの?」
なぜかとても心配そうなお顔をされてしまいました。
採寸はフリーナ様が直接行われました。
助手さんは数人いるものの、フリーナ様が責任持ってやりたいから、とのことでした。
採寸ルームでドレスを脱いで測ってもらいつつ、フリーナ様とおしゃべり。
「あいつ、すっごい無言でしょ? 大丈夫? 意思疎通出来てる?」
「はい」
「それにしても。貴女、私の前でドレス脱がされて、下着姿になってるけど、私が男なのは気にしないの?」
「はい……といいますか、でも女性でもあるんですよね?」
不思議に思ってそう聞くと、フリーナ様の目が大きく見開かれました。
何か驚くことでもあったのかと思いましたら、見た目というかの問題もあり、気持ち悪がられたり、拒絶されることも多いのだとか。
「なるほど。でもご職業でもありますし、拒絶する必要性は感じませんが。お医者様でもそうですよね」
「貴女、本当にすごいわね。私と医者を同列と判断したの!?」
「はい。何か?」
そう答えると、フリーナ様になぜか背中をパァンと叩かれました。
「あはははははは! 気に入ったわ! 友達になりましょ?」
「はぁ……構いませんが?」
「うふふ。じゃあ、今から友達よ。あの子の婚約者じゃなく、友達のテレシアのためにドレスを作ってあげるわ!」
よくわかりませんが、新しいお友達ができました。