❄57:可愛い氷たち。
子育てに邁進していると、月日はどんどんと過ぎ去って行くもので。
気づけば結婚して五年が経ちました。
ハブリエルは三歳になってもほぼ話しませんが、全員が私たちの子供だからそんなものだろう、と口を揃えて言います。
「お乳やおむつのときは泣いていたのに。最近はほとんど声を出しませんね」
「ん……」
最近の伝達方法は、とてとてと歩いて近付いてきて、指差し主張です。
もしかしたら、誰もがそれで何をしてほしいのか察知してしまうのがいけないのでは? となり、指差しされても「どうしたの?」と問いかけ続けていました。
そのうち声を出すかと思っていたのですが、ハブリエルはサクッと諦めて別の人へ伝えに行くし、それでも駄目ならスッとすべてを諦めて他のことをしだしてしまいます。
流石にこれは駄目だとなり、主張してきたら一応聞くものの、応えが返ってこなくとも対応することとなりました。
お医者様にも相談したのですが、声帯にも耳にも、口や歯や舌にも異常はないと。脳の病気や障害も覚悟したのですが、それもないとのこと。
本人の意志なのか、はたまたまだ見つけられていないだけなのか…………。
様々な不安を抱えながら育児をしているうちに、二人目を身籠りました。
「ハブリエルはお兄様になるのよ」
「…………」
返事はないものの、表情は緩やかになり、コクリと頷いてくれます。
二人目の出産も無事に終えました。
ランヴェルト様の手がまたなにやら怪我していますが、気のせいということにしておきます。
「む、黒髪か! テレシアの色だ。羨ましいな?」
新たな息子の誕生に喜びつつ、ハブリエルにランヴェルト様がそう言うと、コクリと頷き返していました。
最近は無言なことも気にならなくなっていました。
「なまえ、ルーカスがいい」
「「…………へ?」」
どこからか子どもの声が聞こえてきて、ランヴェルト様と二人でキョロキョロとしてしまいました。
「ルーカス」
また声が聞こえたのですが、ハブリエルから聞こえたような気がします。
「ルーカスがいいの?」
ハブリエルにそう聞くと、コクリとうなずきました。
「え? いま、ハブリエルが言ったのか?」
またもやコクリとうなずきました。
「ハブリエルが話したぁァァァァァァ」
ランヴェルト様がそう叫ぶと同時に、ハブリエルを抱き上げてくるくると回転を始めました。
この喜び方は初めてのみるパターンですね。
可愛らしいです。
「ちちうえ、はきます」
「ごめぇん!」
ランヴェルト様、可愛すぎませんかね?





