❄56:性別的にも種族的にも一応。
フリーナ様とアレイダ。
不思議な組み合わせにポカンとしていると、フリーナ様的『恋バナ』がどんどんと進んでいっていました。
「騎士団に戻ることになってね」
「戻る? お店はどうされるのですか?」
「お店はね、ゆっくりと続けて行くわ」
フリーナ様こと第四王子のゴドフリー様は、元々騎士団に所属していたそうです。
そこから色々とあってドレスデザイナーになったと。
――――いろいろ?
「色々は色々よ。いーろいろっ!」
「はぁ」
「んでぇ、パパンと結婚について約束してたんだけどぉ、相手が見つからなくてねぇ」
「パパン?」
「んー? 国王陛下よぉ」
――――パパン!
「相手は男性で? 女性で!?」
「堂々とそれを聞くの、アンタくらいよ」
「だって……」
フリーナ様は元々は男性ですが、いまは女性をしてあるわけですし。恋愛対象がどちらなのか謎だったのです。
「んー。どっちかというと女の子のほうが好きなのよね。可愛いもの。男はムサいもの」
「ムサいですかね?」
頭の中に浮かんだのは、ハブリエルのオムツをあわあわと交換している美麗なランヴェルト様。
白銀の髪を耳にかけたり、項を見せながらポニーテールにしたり、妙に艶っぽい仕草が得意です。
「あれは違う生き物よっ!」
「一応人間ですが」
「一応じゃない!」
「……たしかに」
性別的にも種族的にも『一応』となってしまうランヴェルト様。
結局、ランヴェルト様は比較対象たりえない、ということになりました。
「あのムサ苦しいゴドフリーに言われたくない……」
お仕事から戻られたランヴェルト様にお話しましたら、非常に不満そうな反応でした。
これについてはどっちもどっちなのでスルーでいい気がします。
生後五ヵ月も終わりに差し掛かり、ハブリエルはすくすくと育ち続けています。
「ハブリエルはどうだった?」
「はい。今日は、いろんな離乳食を少しずつ試してみましたよ。かぼちゃが甘くて好きなようです」
「かぼちゃか! 他には?」
夕食の席で前のめりで聞いてくる、ワクワク顔のランヴェルト様は、本当に子煩悩だと思います。
いつも楽しそうにハブリエルの話を聞いてくれるのです。
「他にはほうれん草とじゃがいもを混ぜたものも好きそうですよ」
「ほう」
こういうときのランヴェルト様は、まるで有益な情報を得たかのような反応をしてくださいます。
それに、最近はハブリエルの話題もあって、とてもよく話すようになりました。
ランヴェルト様の新たな一面も見れて、毎日がとても楽しいです。





