❄47:溶け合う氷たち。
議事堂から帰宅し、夫婦の寝室にあるソファに二人でダイブ。
大きなため息を吐ききってから、ランヴェルト様をチラリと見ました。
ランヴェルト様は、背もたれに上半身を預け天を仰いでいます。足は投げ出すようにして大股開きで、全力脱力です。
普段はなかなか見ることのないだらしない格好なのに、なぜかドキドキします。
「疲れた……精神的にも体力的にも」
「はい。本当に」
クラヴァットを解き、ボタンを外して襟元を緩められているのを見て、少し羨ましく想いました。
男性は自分で脱げるのですが、女性のドレスは背面をリボンで縛られているものが多く、どうしても侍女などの人手を借りるしかありません。
「ん? ああ、背中を向けて」
ランヴェルト様が何気なくそう言われたので、特に何も気にせずに彼に背中を向けました。
ふわりと身体が浮くような、肺が解放されたような感覚。そして、とても息がしやすくなりました。
「へ?」
「こら、動くな」
「えっ……?」
シュルリシュルリ、背中のリボンの衣擦れ音が聞こえてきます。
ドレスが肩から滑り落ちて身体が顕になりかけたので、慌てて胸の部分を押さえましたが、どうやら背中は丸出しになっているようです。
つつつつつ、と指で背中の中心を縦に撫でられました。全身にゾワリとした震えが来ます。ただそれは、気持ち悪いというよりは、胸や腹部がギュッと締め付けられるような感覚でした。
「っ、あ……んっ」
背中の真ん中に、ちゆ、と柔らかな口付けとピリリとした痛み。何度もそれをされるうちに、甘ったるい声が漏れ出てしまいました。
「ふっ。反応が可愛いな」
「っ…………ランヴェルト様っ?」
「このところ、ずっと我慢していたからな。いいか?」
「ふぁいぃっ」
またもや背中に柔らかなキス。
このような妖艶なお誘いなど初めてで、ドギマギとして変な声が出てしまいました。
――――恥ずかしいっ。
ランヴェルト様がくすくすと笑いながら私を抱き上げると、ベッドに向かって歩きだされました。
「さぁ、もっと素のテレシアを見せてくれ」
そう言ったランヴェルト様のお顔は、とても勝ち気な少年のような表情でした。
またランヴェルト様の新たな一面を見ることが出来た喜びと、これから訪れるであろう閨の時間への期待と少しの不安に、感情が大忙しです。





