❄46:平穏を手に入れた氷たち。
陛下の一喝のあとからは、粛々と裁判が進んでいきました。
お昼の休憩をはさみ、午後からはアーデルヘイト嬢の取り巻きたちの行動についてです。
それぞれを呼び出し、弁明を聞く形となりました。
手紙の内容からも分かってはいたのですが、驚くほどに身勝手なことばかり話され、議事堂内のあちらこちらからため息が聞こえてきました。
「…………もうよい。本日はこれにて終了とする」
最後の令嬢の長い長い長い弁明の途中で、国王陛下が立ち上がられました。話が徐々にループし始めていましたので、もう聞く意味がないと判断されたのでしょう。
一日目、無事と言い切っていいのかはわかりませんが、無事終了です。
二日目は、処罰を決定する日です。
ランヴェルト様は、アーデルヘイト嬢を犯罪者と同等の扱いかつ終身刑での幽閉と希望しましたが、陛下はそれを却下としました。
「アーデルヘイトは国外追放とする。母親の祖国であるネイバリアに強制送還とし、そちらでの幽閉とする。また当国への干渉を一切禁ずる。ランヴェルトに対しても同様に干渉を禁ずる。この件についてはネイバリアと条約を結ぶ。接触を試みようとしただけでも、条約違反と判断し、当国は政治的制裁を加えるものとする」
結果は、ランヴェルト様の希望した処罰よりも、とても大きなものとなりました。
私はこの判決は完全に予想外だったのですが、ランヴェルト様が一瞬だけ微笑まれたので、知っていたのかもしれません。
「ネイバリアの王女の娘ということもあり、コニング家にはある程度の不干渉を許してはいたが、あまりにも放置が過ぎる。向こう五年の納税額の増加を処罰とする。その期間、領地の税率を上げることは禁ずる」
「っ…………承知しました」
コニング家の現当主が深々と頭を下げ、処罰を受け入れていました。
そして、処罰はアーデルヘイト嬢の取り巻きたちにも及びました。
一年間の王都内立入禁止。
夜会や茶会への参加禁止。
これは各々の家にも通達し、これ以降に付きまとい行為や手紙が発見された場合は、家ごとの追加処罰を検討するという内容でした。
結婚適齢期の終了間際と言われそうな年齢である令嬢たちを抱えていた家からすると、この処罰はかなり重いものでした。
ランヴェルト様は相変わらず氷の貴公子様のお顔です。ちょっと懐かしいような、淋しいような。
もしかしたら、彼女らに素顔を見せたくないために、氷の貴公子様になったのかもしれないですね。
家に戻ったら、そういったことも話してみたいなと思いました。
これから、平穏な日々になることを祈ります。





