❄44:異質なる証人たち。
アーデルヘイト嬢がくすくすと笑い続け、議事堂内が一層静けさに包まれるという異様な事態になっていました。
それを破ったのは、ランヴェルト様。
「議長、進行を願います」
「っ! ああ」
アーデルヘイト嬢に、議長が再度確認を行われました。
「告発されたことは、理解しておりますわ。今はこれ以上は申しません」
「では次に進める。被告人は座りなさい」
「承知いたしました」
アーデルヘイト嬢が微笑みながら優雅に着席しました。議事堂はアーデルヘイト嬢に支配されているのでは?といった空気が漂っています。
裁判が始まってまだ三十分なのに、既にどっと疲れてしまいました。
それでも裁判は進みます。
次に行うのは証拠と証人の提示。
先ずはつきまとい行為についての証拠と証人。
証拠はもちろんあの手紙です。
証言は王弟殿下であるお義父様。
今まで見てきたことを包み隠さずはなされました。その内容はあまりにも意味不明でいてきもちわるいものでした。
アーデルヘイト嬢はなぜか満足そうに頷かれています。
そして、二人目の証人としてフリーナ様が来てくださいました。
豪華というか、異質過ぎる証人です。
フリーナ様は、今日は戦闘態勢なのか、スリット入りの真っ赤なマーメイドドレスです。
そのままのフリーナ様で来られたんだなぁと眺めていましたら、アーデルヘイト嬢が勢いよく立ち上がりました。
――――え?
「誰よ! その女っ」
――――へ?
「横にいる契約結婚した地味な女は仕方ないと諦めていましたのに!」
――――なるほど。
私、ずっとランヴェルト様の横に座っていたんです。
アーデルヘイト嬢は、隣にいるランヴェルト様をジッと見つめていたので、一切視線が合わないのも変よね?とは思っていたのです。
なるほど、そういった理由だったのですね。
「そんなド派手な美女をどこで見つけたの! ヴェル様にはもっと淑やかな女でなくてはなりません!」
――――ヴェル様? それよりも……。
「「ド派手な美女……」」
つい、ボソリと呟いてしまいました。
まさかランヴェルト様と完全一致するとは思わず、二人で顔を見合わせた瞬間、ちょっと照れ笑いしてしまいました。
「静粛に! アーデルヘイト・コニング嬢、口を噤みなさい」
「いいえ、無理ですわ! ランヴェルト様の素晴らしい遺伝子が劣化するのは許せません! 地味女から生まれた子供はどうせ養子になるので構いませんが、その美女から産まれたらどうなるのですか!」
――――ええ?
「……産まれたら怖ぇわ」
たまたまなのか、タイミングを見図られて声を出されたのか。驚くほどに静まり返っていた議事堂に、フリーナ様の重低音な呟きがこだまするかのように響きました。





